疲弊しきった様子のオリエ。
しかし、昨日の同時刻と明らかに住まい周辺の様相が違うことに気づくことができないほどではなかった。
赤色灯が点いたパトカーが1台。
明らかに事件があったとわかるバリケードテープ。
エントランス前と現場の生け垣前に警官が1名ずつ。
自然さを装い、エントランスに近づくオリエ。
「住民の方ですね?」
「あ、はい…」
職業柄なのか、この警官はガラス玉のような無機質な目をしていた。
「ご存じかもしれませんが、この入ってすぐの部屋で、今朝殺人事件がありました」
「え!?」
「特に、この部屋の住民の方とは面識はないですね?」
「はい…、ないです…」
「では、どうぞ」
警官はエントランスから離れたものの、オリエの諸々の動作が、いつも以上に時間がかかったのは言うまでもない。