2019/02/05

Ω-03


ゆっくり目を開けていくアヤカ。
目の前には、生死の狭間へ送り込まれる前にいた森が広がっており、黒き遣いか定かではない、1羽のカラスがいた。

ここは、生の、世界、ですか?」

カラスは答えず、アヤカに背を向けて飛び去っていく。

……、!」

俯せに倒れているタカシ。

「よかった

そのままタカシに寄り添い、優しく仰向けにするアヤカ。

「わかってる、よもう、戻ってこない、のはでも、いいんだ……

すでに冷たくなっているその唇に、目を閉じてそっと口付けをするアヤカ。


晴天を背に飛翔している1羽のカラス。
その瞳には微妙が浮かんでいるように見えた。

固く目を閉じている2人。
微動だにしないタカシと動こうとしないアヤカ。

辺りを照らす日光は、強いが優しかった。


----------完----------


▼あとがき的なもの
この小説は、敢えて明記はしていないが、初期に書いた「それぞれの事情」や「±ゼロ…」などに出てくるミョウジンタカシのその後を描いたものだ。

そして、今回もお約束のように、色々な死が出てくることになったが、ラストは角度を変えれば、ハッピーエンドとも解釈できる気がしないでもない。
この辺りは読み手に委ねるしかないわけではあるが。

少子高齢化・大地震で人口が激減し、これまで人間がやっていた作業をAIがある程度こなすようになった世界、というのが今回の設定ではあるが、正直、今私が住んでいる日本という国で、そう遠くない未来に現実化してもおかしくない状況だと、個人的には思っている。

今回に限らず、虚無や絶望、死が渦巻く中で、もっと言うと、全てはいずれ無に帰す、という状況の中で、一瞬でも残るもの、輝くものは純粋な想いなのか?
欲望は所詮欲望でしかない。

実はこれまであまり意識していなかったが、これが私の小説の一貫したテーマでもあるようだ。

今後もよほどのことがない限り、同じようなテーマとこの賛否両論分かれる作風で書いていくことになるだろう。