そろそろ手を下ろして、目を開けるがよい。
どこからともなく聞こえてくる声。
両手を開いて、顔を隠すようにしていたアヤカだが、恐る恐る言われたとおりに行動する。
?
ここ、は?
目の前には、黒地に白い線で縁取りされた景観が広がっている。
縁取りの形から比較的容易に認識できると思うが、ここは我々がいた森だ。
…言われれば、確かに。
ねぇ…
あなたは、誰?
大きめの羽音とともに1羽のカラスが飛んできて、ちょうどアヤカの真正面に着地する。
私のことか?
声は、明らかにクチバシを動かしているカラスから発せられているようだった。
…
わかりやすい反応だな。
私は人間どもからカラスと呼ばれているが、実際は死を司る神の遣いなのだ。
…そう、なんだ…
まぁ、いいだろう。
そなたには現状さまざまな疑問が渦巻いていると思われるが、それを明確に言語化できないはずだ。
よって、少々一方的にはなるが、最初は私から話していくこととする。
うん、お願い、します…
無論、混沌としたものが整理され言語化できるようなら、遠慮なく聞いてくれたまえ。
はい、わかりました。
ではさっそくだが、この場所について話そう。
先ほどの世界を生とするなら、ここは生と死の狭間だ。
…生と死、の…
生と死の間にある世界、とでも言えばいいだろうか。
ってことは…
あたしは、生きてないけど、死んでもいない、ってことですか?
おおむねその通りだ。
付け加えるなら、数年前の大地震以来、ここが本来そなたがいるべき世界なのだ。