2019/11/26

そして絶望へ09


「そりゃそうだけどさ

「たぶん、あたしがこう考えるのは、厳しめの家庭で反発とかせずに生きてきたからだと思う」

「あ~、なるほど。てか、それだったらあたしも似たような感じだったけど、あたしは反発しまくってたな。だから、学校出たらサッサと一人暮らししちゃった」

「うん、そんな気がする」

「え、もしかして彼氏も親が紹介してきたとか?」

「いや、さすがにそれはあたしが好きになった人だったよ。同じ学校で、そのときから付き合ってた」

「あ~、じゃあ、もう結婚秒読みな感じだった?」

「うん。殺されちゃう前の日、ひょっとしたら聞かれちゃってたかもだけど、彼氏としてて、初めて付けずにしてたんだ」

「結構思い切った感じじゃん。あたしは無理だな。絶対結婚してからだな。それも、生まれてきた子供が不自由しない状態になってからじゃないと無理かな」

「確かにね。ただ、それだと何年かかるかわかんないし、子供が生まれてからも働かないとやってけないことに変わりはないし、それに彼氏のこと大好きだったし」

「それだったら全然いいと思う。でも、それだったらなんでアイツら、あなたもさらってきたんだろ?だってさ、できちゃってる可能性が高いわけじゃん?」

「あれかな。あたしの彼氏、草食系な感じだったからかな?」

「あ~、だったら辻褄合いそう」

「てことは、あたしの方が薬が強めだったのは、妊娠してるかを調べるためかなぁ」

「たぶん、そんな気がする」


「まぁ、考えてもしょうがないじゃん。どうせまた近いうちに連中が来て、聞いてもないことまで話してくれると思うし」

2019/11/23

そして絶望へ08


声を潜めて話している2人。

「絶対まだどっかに盗聴器あるって」

「うん、たぶんそんな気がする」

「探す?」

「いや、たぶん見つけらんないと思うし、無闇に動かない方がいいかも」

「あ~、確かに。でも、なんかビミョーじゃない?このまま待ってたら、あたしたち確実に産む機械みたいな感じになっちゃうじゃん?」

「まぁ、それはそうだけど、どうすることもできないよね」

「え?じゃあ、このまま待っちゃう感じ?あたしは絶対イヤ!」

なんか、考えがあるの?」

「そう言われるとアレだけど、なんとかしてここがどんな構造してるとか、場所がどこなのかとか調べて、とにかく脱出しよ!」

「でも、どうやって?この部屋からは出られないし、スマホは没収されちゃってるし、仮に脱出できたとしても、絶海の孤島とかだったら、結局どこにも行けないよ」

2019/11/08

そして絶望へ07


「さて、そろそろいいかな?」

「最後に、1つだけいい?」

「なんだ?」

「もしかして、あなたたちはマサヨシのブログの内容とか、あたしがコメントしてたこととか、メッセのやり取りとか、全部見れてたの?」

「いかにも。付け加えるなら、我々はおまえのやり取りのみならず、国内にいる連中全ての、ありとあらゆる通信網の情報を把握することができる」

やっぱり、なんか色々タイミングが良すぎだと思った」

「とはいえ、仮にそこまでできなくとも、我々にかかれば容易いことだ。所詮情報は情報に過ぎないが、より確実な任務遂行や、無駄に外部から嗅ぎ回られるのを防ぐために効果的だったのは間違いない」


「では、我々は退散するとしよう。次に会うときは、おまえたちの相手を紹介するときだ。楽しみにしていてくれ」


スキンヘッドと長髪が部屋を後にする。

「ふ、先ほどこの部屋には盗聴器があると言ったが、あえて取り外すこととしよう」

警官は2人の前に移動し、壁に手を触れる。
小型の、カメラのような機器が出てくる。

「これはカメラ機能のある盗聴器だ。信じる信じないは勝手だが、この部屋には、ここにしか設置されていない」

機器を取り外す警官。
到底信じ難いという様子の2人。

「言うなれば、おまえたちの発言や行動など容易く想像がつく、ということだ」

不敵に薄ら笑いを浮かべて2人を一瞥し、部屋を後にする警官。

2019/11/05

そして絶望へ06


「納得しようがしまいが、これは覆しようのない事実なのだ。あきらめるんだな」

あの、いいですか?」

「構わない。続けてくれ」

「その、あたしの彼氏は、誰に?」

3人を一通り見回すユカ。

「俺だ」

薄ら笑いを浮かべながら口を開くスキンヘッド。

「先回りするようだが、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99は俺が殺った」

同じように薄ら笑いを浮かべながら口を開く長髪。

「気づいたかもしれないが、この2人は優勢な遺伝子で構成された強化人間だ。髪の生え方だけ遺伝子が違うが。なお、そういう私もな」

2人と同じように薄ら笑いを浮かべる警官。


「これが実態だ。倫理がどうのなどというのは、国の生き残りがかかっているときは、所詮詭弁でしかない」

観念した様子のユカ。
到底受け入れらないという面持ちながらも二の句が告げない様子のオリエ。

2019/11/01

そして絶望へ05


「そもそも、なぜ人口が減るまで少子高齢化が進んだのか?これは男どもの草食化に歯止めがかからないからだ。どいつもこいつも生身の女性を相手にじゃなくて、やれフィギアだの、2次元だの、ゲームだの、アニメだの、バーチャルな存在だけに満足しすぎている。これに異論はあるまい?」

深くうなずくオリエとユカ。

「そんな連中は、女性側からどんなにその気にさせるようなことをしても無意味だ。だったら存在そのものを消して、より優勢な遺伝子を持つ者を当てがった方がいい。そう思わないか?」

表情を曇らせるユカ。
顔をしかめたオリエが口を開く。

「う~ん。理論的にはそうかもしれないけど、なんか違う気がする」

「ならば聞こう。おまえは草食化した男と一緒になりたいのか?」

「それはイヤ」

「だとしたら、ここにいられる方が幸せになれるのは間違いない。この2名以外にも、草食系などではない、優勢な遺伝子を持つ者が多数いる。その中から相手を選べるのだからな」

「でも、それって結局は不自由じゃん?そもそも一緒になるとかならないって、遺伝子が優勢だからとかじゃなくて、あたしの自由なわけでしょ?これって人権侵害だと思うな」

「ふ、素晴らしい理論だ。素晴らしすぎてアクビが出るほどだな。そもそも人権や自由などというものは、国があって、それが正常に機能していることが前提なのだ。どう考えても今の状態は正常とは言い難い。よって、おまえたちには侵害されるような人権や自由などというものは存在しない」

「はぁ?あたしたちは国の駒なわけ?」

「そうは言わないが、構成員なのは事実だろう?もし、国から国籍が与えられていなく、国民として扱われていなかったら、もっと命を脅かされるようなことが起きていたはずだ」