2019/10/29

そして絶望へ04


「では本題に入ろう。結論から言うと、おまえたちは、この歯止めの効かない少子高齢化を抑えるために連れてこられた」

訝しげな表情を浮かべるオリエ。
それとなく意図を理解した様子のユカ。

「ふ、予想どおりの反応だな。なお、これはおまえたちに限ったことではなく、この施設には、すでに多数の2030代の女性たちがいる」

もしかして、2030代の女子が行方不明になり続けてるっていう事件で連れてこられた?」

「そうだ。言うまでもなく我々が主導している。なお、メディア連中は事件と呼んでいるが、実際は国が主導しているプロジェクトだ。まぁ、そんなことは連中に伝えるわけがなかろう」

……1ついいですか?」

口を開くユカ。

1つとは言わずに、聞きたいことはなんでも聞いてもらって構わないぞ」

一瞬だったが、警官に『おまえが聞きたがっていることは、おおむね見当がついているぞ』とでも言いたげな表情が浮かんだ。

関係ないかもですけど、あたしの彼氏とか、ほかの男の人たちがたくさん殺されちゃったのも、その、国が主導してるプロジェクトですか?」

「ああ、そのとおりだ。そして、関係は大いにある。無論、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99についても同様だ」

2019/10/24

そして絶望へ03


「うん。あたし、その部屋に住んでた。殺されちゃったの、あたしの彼氏だった

「あたしは、そのすぐ上の階に住んでた。で、見ちゃったんだ。意識なくしたあなたが、変なスキンヘッドの男にワゴン車に運び込まれて、そのまま走り去って行くのを」

「そうだったんだ

「いったい何者なんだろうね。てか、あたしたちをさらってきてどうするつもりなんだろ」

「それはこれから説明しよう」

警官の声。
壁だった場所が横にスライドし、警官・スキンヘッド・長髪が入ってくる。

「!!。あなたは?」

口を開くオリエ。

「いかにも」

もしかして聞いてたの?」

「正確な言い方をするなら、我々は別室にいたが、この部屋に仕掛けてある盗聴器で、一言一句漏らさず聞いていた、ということだ」


「ほかに聞きたいことはあるかな?」

オリエもユカも二の句が告げずにいた。

2019/10/22

そして絶望へ02


顔をしかめ、ゆっくりと目を開けていくオリエ。

……

気が、ついた?」

オリエを一瞥するユカ。
意識はだいぶ回復しているようだった。

……ここ、は?」

焦点が合っていないような眼差しのオリエ。

「う~ん、あたしも、ついさっき起きたばっかりだから、よくわかんない

オリエに顔を向けるユカ。
ユカを一瞥するオリエ。

あなたは、いつから、ここに?」

「たぶん、1週間とか2週間ぐらい前、かな?いきなり、アパートの前で、口とか鼻とか塞がれちゃって、意識なくなって、ついさっき、って感じ」

「それ、夜だった?場所は、1階で首のない死体が見つかったアパート?」

ユカに顔を向けるオリエ。
互いの視線が交錯する。

2019/10/15

そして絶望へ01


うっすらと目を開けていくユカ。
焦点が合っていないような眼差し。

「気がついたようだな」

壁だった場所が、ドアのように横にスライドし、オリエを抱えたスキンヘッドが入ってくる。

……

「まぁ、何も言えまい。とりあえず、新しいルームメイトだ」

ユカの隣に、グッタリした様子のオリエが、そっと置かれる。

「コイツは、お前が住んでた部屋の、すぐ上の階に住んでた」

……

「薬の効き目はじきに切れるだろう。敢えてお前よりも濃度を低くしておいた」


「なぜお前の方が濃度を高くしたのか。それは色々と調べたいことがあったからだ」


「いずれにしても、時期が来るまでは仲良くしてやってくれ」

2019/10/12

そして絶望へ00


窓のない、殺風景な6畳程度の白い部屋。
ユカは昏睡しているようだった。
スキンヘッドに拉致されてから、目覚めることなく眠り続けているようだった。


先ほどの部屋と同様な造りをした長い廊下。
スキンヘッドが、気絶したように眠っているオリエを抱えて歩いている。

瞬き1つしないガラス玉のような瞳。
口元には薄ら笑いが浮かんでいる。


広大な白い空間。
ユカの部屋とは別室のようだった。

夥しい数の保育器。
その中には、どことなく顔立ちの似た新生児たちがいた。

2019/10/04

任務進行中26


マサヨシからの返信は、日にちが変わってもくることはなかった。
また、その日はスキンヘッドの付き纏いがなかった。
そして決定的な違いは、住まい周辺の様子が、ユカの恋人が惨殺死体で発見されたときと同様の光景だったことだ。


今回も自然さを装ってエントランスへ近づくオリエ。
しかし、それはエントランス前に横たわっている死体により吹き飛んだ。

「お知り合いですか?」

現場検証に来ていた例の警官が声をかける。

……はい

動揺を隠せない様子のオリエ。

その死体はマサヨシだった。
首と胴体はつながっているようだったが、顔には深めの裂傷が、平行して無数できていた。

「この様子だと、おそらく1時間以内に付けられた傷だと思います。とはいえ、これが致命傷ではなく、この服の下にその要因がある気がします」


「もしかして、ここ最近、何か身の危険を感じることがあったりしますか?」

はい。実は、あの怪しいスキンヘッドにストーキングされてます。今日は、なぜかされなかったですけど

「なるほど。では、安全が確保できるまでビジネスホテルに部屋を用意しましょう。実は、こないだの女性も同じように部屋を用意しました」

……はい、ありがとう、ございます