2019/07/28

任務進行中17


とあるカフェのテーブル席で、スキンヘッドがガラパゴスを操作している。
空になった、酒が入っていたと思われる長めのグラスが1個。

知る人ぞ知る隠れ家的な場所で、夜間という時間帯のせいか、客はこの男のみだった。

全体的にアンティークな造りで、陳列されている小物も同様。
そして、暗めの照明。
BGMもかかっていなかった。

ほぼ確実に経営者の趣味と思われるような佇まいだったが、タンクトップのスキンヘッドがいても不思議と違和感はなかった。

「ずいぶん珍しい場所だな」

長髪と私服姿の、事件現場に居合わせた警官と見た目が酷似した男がやってくる。

「俺は、わりとこういうとこ好きだがな」

ニヤニヤしながらガラパゴスから目を離し、2人を一瞥するスキンヘッド。

「例のヤツは、そろそろ動くのか?」

「ああ、そのつもりだ。そっちがもう少し距離が縮まってからとも思ったんだが、アレだとメッセージのやり取りだけで満足してる感があるからな」

「間違いない。俺も、そろそろ何かしらキッカケが必要だと思ってたところだ」

「ということで警官さん、あんたにも手伝ってほしいんだが?」

「構わない。だから呼んだのだろう?」

「もちろん。さて、これから具体的な話だが、その前にせっかく来たんだから、1杯ぐらいなんか飲みな」

2019/07/19

任務進行中16


マサヨシのノートパソコン画面右下に、メールの受信を知らせるアイコンが表示される。
『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』

これが長髪の言う、これまでと違った反応だろうか?
怪訝そうにメールを確認するマサヨシ。

『氏名:o.r.i.e_dayon

『本文:突然メッセージ送っちゃってすみません(汗)
masa_yo.s.h.i.99さんだったら、って思ったので、送らせてもらいました。
実はあの遺体が見つかったアパート、あたしが住んでるアパートなんです。
もちろん、遺体が置かれてた部屋じゃないですけど。
でも、すぐ下の部屋なので、色々落ち着かないです(汗)』



『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』

スマートフォンを操作してメッセージを確認するオリエ。

『氏名:masa_yo.s.h.i.99

『本文:メッセージありがとうございます。
そうでしたか
さすがに、ちょっと気の利いたことは思いつかないですが、ホント、早く犯人が捕まれば、って思います』

表情をほころばせるオリエ。

これ以降、2人の間にメッセージのやり取りが増えていく。

2019/07/16

任務進行中15


オリエのスマートフォンに、マサヨシのブログが更新されたことを知らせるアイコンが表示される。

『タイトル:これはマジエグい

『本文:昨日、場所は控えるが、とあるアパートの1階で、何者かに遺棄されたと思われる首無しの遺体が発見されたらしい。
身元を特定すると、どうも事件前日ごろから行方不明になっていた、この部屋の住人の交際相手だったそうだ。

これまでの事件と因果関係があるかは謎だが、いったい、どこのどいつがなんのために?だな

あと、どうも交際上のトラブルとかじゃないらしい。現にこの2人は事実婚も同然の状態だったみたいで、恨みを買ってて、っていうのも心当たりがないそうだ。

だとしたら、誰でもよかった的な無差別殺人な感があるだけに厄介そうだ
特に、同じアパートの住人たちは気が気でないと思われるだけに、早期解決を祈る

スマートフォンを見ながら、ニヤリと笑う長髪。

2019/07/14

任務進行中14


事件発生の当日から、ユカはビジネスホテルで暮らすことになった。
被害拡大防止と精神面への配慮から、警察が手配したのだった。

事件現場は、一通りの検証が終わったためか、翌日にはパトカーや警官たちの姿は見えなかった。
オリエは残ることにしたが、なにぶん、すぐ階下の部屋で起こっていたこともあり、気が気ではなかったようだ。

ニヤニヤしながら通話中のスキンヘッド。

「そうか、片割れはあのビジネスホテルに移動したか。ああ、その方がやりやすい。当面は滞在するだろうから、タイミングを見計らって決行予定だ。ん?別件のヤツは、ちょっと時間がかかると思うが、最終的には予定通りになる」

2019/07/09

任務進行中13


時を同じくして、マサヨシが少々放心気味な様子で、人気のない大通りを歩いている。
状況の整理ができないでいると思われた。


「ハンドルネームo.r.i.e_dayonを知っているな?」


「あらかじめ言っておくが、我々はお前がブログをやっていることも、どんな内容かも、コメント者も把握済みだ」

名前ぐらいなら」

「では、まずは本人と実際に会って、関係を深めてもらおう」

「どう、やって?」

「もう少し見所があると思ったんだが、まぁいいだろう。いきなりメッセージを送っても上手くいかないことぐらいはわかるな?」

「それは確かに

「実は今日の早朝に、このo.r.i.e_dayonが住んでいるアパートで遺棄されたと思われる死体が発見された」

「なんだって!?」

「ここまで言えば、どうすればいいかわかるな?」

ああ、なんとなく

「上手くいけば、これまでと違った反応があるはずだ」

ワゴン車のドアが開かれる。

「この道を、ワゴン車の進行方向と反対に向かって行くがいい」


「言うまでもないが、今回の件はみだりにブログやSNSで公開しないこと。仮に公開したら、我々は即時に把握できる。そうなったら、命はないと思え」

2019/07/04

任務進行中12


疲弊しきった様子のオリエ。
しかし、昨日の同時刻と明らかに住まい周辺の様相が違うことに気づくことができないほどではなかった。

赤色灯が点いたパトカーが1台。
明らかに事件があったとわかるバリケードテープ。
エントランス前と現場の生け垣前に警官が1名ずつ。

自然さを装い、エントランスに近づくオリエ。

「住民の方ですね?」

「あ、はい

職業柄なのか、この警官はガラス玉のような無機質な目をしていた。

「ご存じかもしれませんが、この入ってすぐの部屋で、今朝殺人事件がありました」

「え!?」

「特に、この部屋の住民の方とは面識はないですね?」

「はい、ないです

「では、どうぞ」

警官はエントランスから離れたものの、オリエの諸々の動作が、いつも以上に時間がかかったのは言うまでもない。