2019/12/14

そして絶望へ12


膝に手をついて肩で息をしているオリエ。

はあ
どんだけ歩いたんだろ
間違いなく人生で1番歩いた気がする
てか、ここマジでどうなってんの?
歩いても歩いても全然違う感じにならないって、ど~ゆうこと?
これじゃどこに向かってるか、全然わかんないじゃん
とりあえず、座ろっと。
てか、どうでもいいけど、ここ、なんでこんなに静かなんだろ?
多くの女子が監禁されてるはずなのに、人の気配もしないし

壁にもたれかかるように、ゆっくりとしゃがむオリエ。


痛っ!!

オリエの足元が赤く染まっていく。

え!?

「ふ、長い時間ご苦労だったな」

どこからともなく現れる警官。
手には銃が握られており、銃口はオリエに向けられていた。

状況がよく理解できていない様子のオリエ。

「順番に話そう。まず、おまえの両足はこの銃で撃たれた。銃声がしなかったのは、消音設定をしておいたからだ。次に、あまりにもタイミングが良すぎるのは、当然と言えば当然だ。なぜなら、ここには至るところに監視カメラが仕掛けられており、おまえの動向は丸分かりだったからだ。そして、ここがどこもかしこも同じような作りなのは、おまえのように無謀なことをする輩への対策だ。人間は、自分がどこに向かっているかわからない状態では歩き続けることは不可能だ。気力や集中力には限界がある。また、異様に静かなのも当然だ。壁は全て防音になっている。無論、こうしている間に何人もの女たちが優勢な遺伝子を注入されているのは確実だ。言うまでもなく、おまえのルームメイトも、今ごろたっぷりと孕まされていることだろう」

顔を歪めているオリエ。

「ふ、安心しろ。急所は外してある。ただ、ここままだと止血しない限り、体内の血液が半永久的に流れ続けることになる。無論、それまでの間に意識がなくなるはずだがな」

警官は無表情だったが、口元には不敵な笑みが浮かんでいた。


二の句は告げないでいたが、憎悪のこもった眼差しで警官を睨み続けるオリエ。

「ふ、気の強さだけはいっちょまえだな。だが、それだけではどうすることもできない。それぐらいはわかるだろ?」

それで?あなたは、あたしをどうしようと、してるの?」

「と言うと?」

「あたしを、殺そうと思えば、サクッと急所を撃つことも、できたはずでしょ?」

「ふ、それは殺すかどうかは、今後のおまえの返答次第で決める、ということだ」


「さて、だいぶ意識が朦朧としてきているはずなので、そろそろ本題に入ろう。単刀直入に言おう。おまえの相手はこの私に決まった。受け入れるか否か、どっちだ?」

……イヤと言ったら?」

「念を押すようだが、それは否ということでいいのだな?」

「当たり前、じゃん。それ以外に」

警官の口元に薄ら笑いが浮かび、銃の引金を引く。

焦点が合わないような眼差しのオリエ。
そのまま、前にのめるように倒れる。

「言い忘れてたが、この施設は絶海の孤島にあるわけではない。おまえの住んでいた街の地下にある。入口は、とあるビルのロビーにあるエレベーターだ。無論、仮にそこまで辿り着けたとしても、警備連中の網を潜り抜けることは不可能だろう」

赤い液体の中に浮かぶ微動だにしないオリエ。

「おっと、もう絶命してるんだったな」

そのまま立ち去っていく警官。




---------------完---------------


※あとがき的なもの

前作がある意味ハッピーエンド的な内容だったのに対し、今作はその反動か、かなりアンハッピーエンド的な内容となった(汗)

そして、全くないどころか、むしろ裏で実際に起こっていそうな感さえすることでもある

また、究極的でもあるかなとも思う

しかし、読者数は全世界で確実に増えており、多くの方が、安っぽい、現実逃避的な希望に、さぞかし飽々しているのだろうと感じた

無論、私自身もそんなものには辟易している次第だ

なお、この作風からは信じ難いかもしれないが、私は心身ともに、かつてないほど健康な状態である

よって、次回作の構想もすでに色々と湧き出している

加えて、今作の電子書籍化や、過去作品で、関連作品をまとめた物を電子書籍化する構想もある

ということで、このブログはしばし更新が途絶えるが、右にある「My website」内にリンクされている私のサイトやInstagram、Twitterあたりで電子書籍化や次回作の公開について告知予定なので、チェックしてもらえれば幸いだ

2019/12/06

そして絶望へ11


施錠してないって?
ホントかねぇ

ったく、アイツら何考えてんだろ

てか、マジで開けゴマしたらあたしゃガチで逃げるぜ?
あの子みたいにサクッと言うこと聞く子じゃないし。

横にスライドしていたと思われる壁に触れるオリエ。

確かこの辺だったような
開くかな?

ゆっくりと壁がスライドしていく。


え!?
何ここ??

部屋の外は、見渡す限り、殺風景な白く長い廊下だった。

マジで
これじゃ、どっちに行けばいいかわかんないじゃん

開いていた壁が閉じていく。

あれ?閉じちゃうの?
しかも、開かないし
……とりあえず、移動しよ。

2019/12/03

そして絶望へ10


眠っている2人。
部屋の明かりはいつの間にか消えていた。

壁が横にスライドし、外の明かりが2人を照らす。
人影が2つ。

顔をしかめて少しずつ目を開けていくユカ。

「ふ、おまえは比較的寝起きがいいようだな」

警官の声。
顔をしかめるものの、目は開けられない様子のオリエ。
部屋の明かりが点いていく。

「今回はおまえの相手を連れてきた」

体を起こすユカ。
ようやく目を開けていくオリエ。

「!!。ダイジロウ!?」

警官の隣には、ダイジロウと全く同じ顔をした男がいた。
しかし、ユカの呼びかけには無反応だった。

「ふ、この男はおまえが愛したダイジロウではない。顔だけ遺伝子操作で同じにしてあるだけだ」


眠そうに体を起こすオリエ。

「さて、では聞かれてないことだが、おまえの方が薬が強かったのは、妊娠してないかを調べるためだ」

やっぱり」

「で、その結果、じき妊娠する兆候があったため、取り除かせてもらった」

「ダイジロウが草食系な感じだったから、ですか?」

「いかにも。これはおまえに限った話ではなく、草食系の遺伝子を身篭っていた女性たちは、全て同じように取り除いている」


「少なくとも顔が同じなら、多少は受け入れやすいだろう?」

はい」

「ちょ!いいの?それで」

「ふ、相変わらずだな。この状況でいいも悪いもなかろう」


「さぁ、行こうか」

ダイジロウの顔をした男がユカに手を差し出す。
微笑して、その手を握るユカ。
顔をしかめるものの、何もできない様子のオリエ。

そのまま男と連れ立って行くユカ。

「言うまでもなく次はおまえの番だが、少々日が開くかもしれない。どの男を当てがうか、選定に時間がかかりそうなのでな」

「あまり、時間を開けない方がいいかもよ」

「ほぉ、それはここから脱出するという意味か?」

「言わなくてもわかるんじゃなかったの?」

「ふ、よかろう。やれるものならやってみるがいい。この部屋は敢えて施錠しないでおこう」

不敵な笑みを浮かべて部屋を後にする警官。


ダイジロウと似て非なる男にしがみついているユカ。
その指は、筋肉質の背中に食い込むほど力が入っていた。

大粒の汗で光る肢体。
ユカは甲高い声をあげながら、体を上下左右に揺らしており、顔は同じように不規則に揺れていた。
閉じられた目からは涙がこぼれ、頬を止めどなく流れている。

2019/11/26

そして絶望へ09


「そりゃそうだけどさ

「たぶん、あたしがこう考えるのは、厳しめの家庭で反発とかせずに生きてきたからだと思う」

「あ~、なるほど。てか、それだったらあたしも似たような感じだったけど、あたしは反発しまくってたな。だから、学校出たらサッサと一人暮らししちゃった」

「うん、そんな気がする」

「え、もしかして彼氏も親が紹介してきたとか?」

「いや、さすがにそれはあたしが好きになった人だったよ。同じ学校で、そのときから付き合ってた」

「あ~、じゃあ、もう結婚秒読みな感じだった?」

「うん。殺されちゃう前の日、ひょっとしたら聞かれちゃってたかもだけど、彼氏としてて、初めて付けずにしてたんだ」

「結構思い切った感じじゃん。あたしは無理だな。絶対結婚してからだな。それも、生まれてきた子供が不自由しない状態になってからじゃないと無理かな」

「確かにね。ただ、それだと何年かかるかわかんないし、子供が生まれてからも働かないとやってけないことに変わりはないし、それに彼氏のこと大好きだったし」

「それだったら全然いいと思う。でも、それだったらなんでアイツら、あなたもさらってきたんだろ?だってさ、できちゃってる可能性が高いわけじゃん?」

「あれかな。あたしの彼氏、草食系な感じだったからかな?」

「あ~、だったら辻褄合いそう」

「てことは、あたしの方が薬が強めだったのは、妊娠してるかを調べるためかなぁ」

「たぶん、そんな気がする」


「まぁ、考えてもしょうがないじゃん。どうせまた近いうちに連中が来て、聞いてもないことまで話してくれると思うし」

2019/11/23

そして絶望へ08


声を潜めて話している2人。

「絶対まだどっかに盗聴器あるって」

「うん、たぶんそんな気がする」

「探す?」

「いや、たぶん見つけらんないと思うし、無闇に動かない方がいいかも」

「あ~、確かに。でも、なんかビミョーじゃない?このまま待ってたら、あたしたち確実に産む機械みたいな感じになっちゃうじゃん?」

「まぁ、それはそうだけど、どうすることもできないよね」

「え?じゃあ、このまま待っちゃう感じ?あたしは絶対イヤ!」

なんか、考えがあるの?」

「そう言われるとアレだけど、なんとかしてここがどんな構造してるとか、場所がどこなのかとか調べて、とにかく脱出しよ!」

「でも、どうやって?この部屋からは出られないし、スマホは没収されちゃってるし、仮に脱出できたとしても、絶海の孤島とかだったら、結局どこにも行けないよ」

2019/11/08

そして絶望へ07


「さて、そろそろいいかな?」

「最後に、1つだけいい?」

「なんだ?」

「もしかして、あなたたちはマサヨシのブログの内容とか、あたしがコメントしてたこととか、メッセのやり取りとか、全部見れてたの?」

「いかにも。付け加えるなら、我々はおまえのやり取りのみならず、国内にいる連中全ての、ありとあらゆる通信網の情報を把握することができる」

やっぱり、なんか色々タイミングが良すぎだと思った」

「とはいえ、仮にそこまでできなくとも、我々にかかれば容易いことだ。所詮情報は情報に過ぎないが、より確実な任務遂行や、無駄に外部から嗅ぎ回られるのを防ぐために効果的だったのは間違いない」


「では、我々は退散するとしよう。次に会うときは、おまえたちの相手を紹介するときだ。楽しみにしていてくれ」


スキンヘッドと長髪が部屋を後にする。

「ふ、先ほどこの部屋には盗聴器があると言ったが、あえて取り外すこととしよう」

警官は2人の前に移動し、壁に手を触れる。
小型の、カメラのような機器が出てくる。

「これはカメラ機能のある盗聴器だ。信じる信じないは勝手だが、この部屋には、ここにしか設置されていない」

機器を取り外す警官。
到底信じ難いという様子の2人。

「言うなれば、おまえたちの発言や行動など容易く想像がつく、ということだ」

不敵に薄ら笑いを浮かべて2人を一瞥し、部屋を後にする警官。

2019/11/05

そして絶望へ06


「納得しようがしまいが、これは覆しようのない事実なのだ。あきらめるんだな」

あの、いいですか?」

「構わない。続けてくれ」

「その、あたしの彼氏は、誰に?」

3人を一通り見回すユカ。

「俺だ」

薄ら笑いを浮かべながら口を開くスキンヘッド。

「先回りするようだが、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99は俺が殺った」

同じように薄ら笑いを浮かべながら口を開く長髪。

「気づいたかもしれないが、この2人は優勢な遺伝子で構成された強化人間だ。髪の生え方だけ遺伝子が違うが。なお、そういう私もな」

2人と同じように薄ら笑いを浮かべる警官。


「これが実態だ。倫理がどうのなどというのは、国の生き残りがかかっているときは、所詮詭弁でしかない」

観念した様子のユカ。
到底受け入れらないという面持ちながらも二の句が告げない様子のオリエ。

2019/11/01

そして絶望へ05


「そもそも、なぜ人口が減るまで少子高齢化が進んだのか?これは男どもの草食化に歯止めがかからないからだ。どいつもこいつも生身の女性を相手にじゃなくて、やれフィギアだの、2次元だの、ゲームだの、アニメだの、バーチャルな存在だけに満足しすぎている。これに異論はあるまい?」

深くうなずくオリエとユカ。

「そんな連中は、女性側からどんなにその気にさせるようなことをしても無意味だ。だったら存在そのものを消して、より優勢な遺伝子を持つ者を当てがった方がいい。そう思わないか?」

表情を曇らせるユカ。
顔をしかめたオリエが口を開く。

「う~ん。理論的にはそうかもしれないけど、なんか違う気がする」

「ならば聞こう。おまえは草食化した男と一緒になりたいのか?」

「それはイヤ」

「だとしたら、ここにいられる方が幸せになれるのは間違いない。この2名以外にも、草食系などではない、優勢な遺伝子を持つ者が多数いる。その中から相手を選べるのだからな」

「でも、それって結局は不自由じゃん?そもそも一緒になるとかならないって、遺伝子が優勢だからとかじゃなくて、あたしの自由なわけでしょ?これって人権侵害だと思うな」

「ふ、素晴らしい理論だ。素晴らしすぎてアクビが出るほどだな。そもそも人権や自由などというものは、国があって、それが正常に機能していることが前提なのだ。どう考えても今の状態は正常とは言い難い。よって、おまえたちには侵害されるような人権や自由などというものは存在しない」

「はぁ?あたしたちは国の駒なわけ?」

「そうは言わないが、構成員なのは事実だろう?もし、国から国籍が与えられていなく、国民として扱われていなかったら、もっと命を脅かされるようなことが起きていたはずだ」

2019/10/29

そして絶望へ04


「では本題に入ろう。結論から言うと、おまえたちは、この歯止めの効かない少子高齢化を抑えるために連れてこられた」

訝しげな表情を浮かべるオリエ。
それとなく意図を理解した様子のユカ。

「ふ、予想どおりの反応だな。なお、これはおまえたちに限ったことではなく、この施設には、すでに多数の2030代の女性たちがいる」

もしかして、2030代の女子が行方不明になり続けてるっていう事件で連れてこられた?」

「そうだ。言うまでもなく我々が主導している。なお、メディア連中は事件と呼んでいるが、実際は国が主導しているプロジェクトだ。まぁ、そんなことは連中に伝えるわけがなかろう」

……1ついいですか?」

口を開くユカ。

1つとは言わずに、聞きたいことはなんでも聞いてもらって構わないぞ」

一瞬だったが、警官に『おまえが聞きたがっていることは、おおむね見当がついているぞ』とでも言いたげな表情が浮かんだ。

関係ないかもですけど、あたしの彼氏とか、ほかの男の人たちがたくさん殺されちゃったのも、その、国が主導してるプロジェクトですか?」

「ああ、そのとおりだ。そして、関係は大いにある。無論、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99についても同様だ」

2019/10/24

そして絶望へ03


「うん。あたし、その部屋に住んでた。殺されちゃったの、あたしの彼氏だった

「あたしは、そのすぐ上の階に住んでた。で、見ちゃったんだ。意識なくしたあなたが、変なスキンヘッドの男にワゴン車に運び込まれて、そのまま走り去って行くのを」

「そうだったんだ

「いったい何者なんだろうね。てか、あたしたちをさらってきてどうするつもりなんだろ」

「それはこれから説明しよう」

警官の声。
壁だった場所が横にスライドし、警官・スキンヘッド・長髪が入ってくる。

「!!。あなたは?」

口を開くオリエ。

「いかにも」

もしかして聞いてたの?」

「正確な言い方をするなら、我々は別室にいたが、この部屋に仕掛けてある盗聴器で、一言一句漏らさず聞いていた、ということだ」


「ほかに聞きたいことはあるかな?」

オリエもユカも二の句が告げずにいた。

2019/10/22

そして絶望へ02


顔をしかめ、ゆっくりと目を開けていくオリエ。

……

気が、ついた?」

オリエを一瞥するユカ。
意識はだいぶ回復しているようだった。

……ここ、は?」

焦点が合っていないような眼差しのオリエ。

「う~ん、あたしも、ついさっき起きたばっかりだから、よくわかんない

オリエに顔を向けるユカ。
ユカを一瞥するオリエ。

あなたは、いつから、ここに?」

「たぶん、1週間とか2週間ぐらい前、かな?いきなり、アパートの前で、口とか鼻とか塞がれちゃって、意識なくなって、ついさっき、って感じ」

「それ、夜だった?場所は、1階で首のない死体が見つかったアパート?」

ユカに顔を向けるオリエ。
互いの視線が交錯する。

2019/10/15

そして絶望へ01


うっすらと目を開けていくユカ。
焦点が合っていないような眼差し。

「気がついたようだな」

壁だった場所が、ドアのように横にスライドし、オリエを抱えたスキンヘッドが入ってくる。

……

「まぁ、何も言えまい。とりあえず、新しいルームメイトだ」

ユカの隣に、グッタリした様子のオリエが、そっと置かれる。

「コイツは、お前が住んでた部屋の、すぐ上の階に住んでた」

……

「薬の効き目はじきに切れるだろう。敢えてお前よりも濃度を低くしておいた」


「なぜお前の方が濃度を高くしたのか。それは色々と調べたいことがあったからだ」


「いずれにしても、時期が来るまでは仲良くしてやってくれ」

2019/10/12

そして絶望へ00


窓のない、殺風景な6畳程度の白い部屋。
ユカは昏睡しているようだった。
スキンヘッドに拉致されてから、目覚めることなく眠り続けているようだった。


先ほどの部屋と同様な造りをした長い廊下。
スキンヘッドが、気絶したように眠っているオリエを抱えて歩いている。

瞬き1つしないガラス玉のような瞳。
口元には薄ら笑いが浮かんでいる。


広大な白い空間。
ユカの部屋とは別室のようだった。

夥しい数の保育器。
その中には、どことなく顔立ちの似た新生児たちがいた。

2019/10/04

任務進行中26


マサヨシからの返信は、日にちが変わってもくることはなかった。
また、その日はスキンヘッドの付き纏いがなかった。
そして決定的な違いは、住まい周辺の様子が、ユカの恋人が惨殺死体で発見されたときと同様の光景だったことだ。


今回も自然さを装ってエントランスへ近づくオリエ。
しかし、それはエントランス前に横たわっている死体により吹き飛んだ。

「お知り合いですか?」

現場検証に来ていた例の警官が声をかける。

……はい

動揺を隠せない様子のオリエ。

その死体はマサヨシだった。
首と胴体はつながっているようだったが、顔には深めの裂傷が、平行して無数できていた。

「この様子だと、おそらく1時間以内に付けられた傷だと思います。とはいえ、これが致命傷ではなく、この服の下にその要因がある気がします」


「もしかして、ここ最近、何か身の危険を感じることがあったりしますか?」

はい。実は、あの怪しいスキンヘッドにストーキングされてます。今日は、なぜかされなかったですけど

「なるほど。では、安全が確保できるまでビジネスホテルに部屋を用意しましょう。実は、こないだの女性も同じように部屋を用意しました」

……はい、ありがとう、ございます

2019/09/16

任務進行中25


その翌日も、スキンヘッドの付き纏いは変わらずだった。
全速力で振り切ろうとするオリエも同様だった。

しかし、今回のスキンヘッドはこれまでと違い、オリエを追いかけてきた。

「!!」

角を曲がろうとするオリエの視界に、迫り来るスキンヘッドが映っている。


なんとかやり過ごし、家路に着くオリエ。

『ねぇ、どうしよう。なんかあのスキンヘッド、今日は走っても追ってきちゃったよ。だから、すぐに帰んないで、ぐるっと回って、いないのを確かめてから帰ったよ』


マサヨシから返信がくることはなかった。

2019/09/13

任務進行中24


『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:なんか、またあのスキンヘッドにストーカーされるようになっちゃったよ。リアルで会ったときは大丈夫だったのに』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:てか昨日の今日じゃん。どこまで付いてくる感じ?』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:なんだろう。家まで来させたくないから途中で走っちゃうんだけど、そうすると追って来なくなるんだよね』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:敢えてそうしてるのか、オリエの走るスピードが速すぎて追う気が無くなるのか、ただ単に疲れたくないか、そのどれかだろうな』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:わかんないよ、そんなの

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:じゃあ、近いうちにまた会おうぜ?リアルで会うと現れないっていうことなら、それが1番効果的だし』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:ゴメン。ここ最近は仕事も忙しいし、予定もあるから無理。また今度ね』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:了解』

2019/09/10

任務進行中23


「それでようやく2人は、初対面したってわけか

「ああ」

例の隠れ家的なカフェに集っている3名。
並んでいるグラスには、オレンジ・水色・無色透明の液体がそれぞれ満たされていた。

タブレットを操作している警官。
長髪は水色の液体を飲み始める。

「しかし、よく気づかれなかったな」

「どうだろうな。動画を見てもらえばわかると思うが、この女、時々カメラ目線になる」

タブレットに、オリエとマサヨシの後ろ姿が映っている。
場所は、雰囲気が良いとは言い難い、少々雑然とした様子のカフェと思われた。

スキンヘッドはオレンジの液体を、警官は無色透明の液体を飲み始める。

「確かに今カメラ目線になったな」

「だが、すぐに男の方に視線と顔を向けた。となると、大丈夫と見ていいだろうな」

「そうだな。当日は自然さを装って、スマホで動画を撮り続けてた。言うまでもなく私服でな」

「しかし、この男、思ったより重症だな。この手のセッティングで、女を壁側に座らせるとは」

「ただ、今後の展開を占う意味では絶妙なセッティングだ。なぜなら、この手の決定権は女にあることが大半だからな」

「ああ、間違いない。だとすると、これはかなり難しいだろうな」

「そうだな。この女、全く目の前の男に集中してないな」

「カメラ目線以外にも、通行人がいればそっちに視線を移したり、よく下を向いたり、そして、苦笑いばかりだな」

「しかも、口元は笑っていても目が笑ってない。ひどいと笑いながら通行人を見てたりしてるな」


空になった3つのグラス。

「さて、この2人はもうこれ以上関係が進展しないと思われるが、どうだ?」

「同感だ」

「ということは、近日中にやるのか?」

「もちろん。役に立たない男は消す。多少なりとも使えそうなヤツは、ひとまず残しておく。これが我々の任務だからな」