2019/11/08

そして絶望へ07


「さて、そろそろいいかな?」

「最後に、1つだけいい?」

「なんだ?」

「もしかして、あなたたちはマサヨシのブログの内容とか、あたしがコメントしてたこととか、メッセのやり取りとか、全部見れてたの?」

「いかにも。付け加えるなら、我々はおまえのやり取りのみならず、国内にいる連中全ての、ありとあらゆる通信網の情報を把握することができる」

やっぱり、なんか色々タイミングが良すぎだと思った」

「とはいえ、仮にそこまでできなくとも、我々にかかれば容易いことだ。所詮情報は情報に過ぎないが、より確実な任務遂行や、無駄に外部から嗅ぎ回られるのを防ぐために効果的だったのは間違いない」


「では、我々は退散するとしよう。次に会うときは、おまえたちの相手を紹介するときだ。楽しみにしていてくれ」


スキンヘッドと長髪が部屋を後にする。

「ふ、先ほどこの部屋には盗聴器があると言ったが、あえて取り外すこととしよう」

警官は2人の前に移動し、壁に手を触れる。
小型の、カメラのような機器が出てくる。

「これはカメラ機能のある盗聴器だ。信じる信じないは勝手だが、この部屋には、ここにしか設置されていない」

機器を取り外す警官。
到底信じ難いという様子の2人。

「言うなれば、おまえたちの発言や行動など容易く想像がつく、ということだ」

不敵に薄ら笑いを浮かべて2人を一瞥し、部屋を後にする警官。

2019/11/05

そして絶望へ06


「納得しようがしまいが、これは覆しようのない事実なのだ。あきらめるんだな」

あの、いいですか?」

「構わない。続けてくれ」

「その、あたしの彼氏は、誰に?」

3人を一通り見回すユカ。

「俺だ」

薄ら笑いを浮かべながら口を開くスキンヘッド。

「先回りするようだが、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99は俺が殺った」

同じように薄ら笑いを浮かべながら口を開く長髪。

「気づいたかもしれないが、この2人は優勢な遺伝子で構成された強化人間だ。髪の生え方だけ遺伝子が違うが。なお、そういう私もな」

2人と同じように薄ら笑いを浮かべる警官。


「これが実態だ。倫理がどうのなどというのは、国の生き残りがかかっているときは、所詮詭弁でしかない」

観念した様子のユカ。
到底受け入れらないという面持ちながらも二の句が告げない様子のオリエ。

2019/11/01

そして絶望へ05


「そもそも、なぜ人口が減るまで少子高齢化が進んだのか?これは男どもの草食化に歯止めがかからないからだ。どいつもこいつも生身の女性を相手にじゃなくて、やれフィギアだの、2次元だの、ゲームだの、アニメだの、バーチャルな存在だけに満足しすぎている。これに異論はあるまい?」

深くうなずくオリエとユカ。

「そんな連中は、女性側からどんなにその気にさせるようなことをしても無意味だ。だったら存在そのものを消して、より優勢な遺伝子を持つ者を当てがった方がいい。そう思わないか?」

表情を曇らせるユカ。
顔をしかめたオリエが口を開く。

「う~ん。理論的にはそうかもしれないけど、なんか違う気がする」

「ならば聞こう。おまえは草食化した男と一緒になりたいのか?」

「それはイヤ」

「だとしたら、ここにいられる方が幸せになれるのは間違いない。この2名以外にも、草食系などではない、優勢な遺伝子を持つ者が多数いる。その中から相手を選べるのだからな」

「でも、それって結局は不自由じゃん?そもそも一緒になるとかならないって、遺伝子が優勢だからとかじゃなくて、あたしの自由なわけでしょ?これって人権侵害だと思うな」

「ふ、素晴らしい理論だ。素晴らしすぎてアクビが出るほどだな。そもそも人権や自由などというものは、国があって、それが正常に機能していることが前提なのだ。どう考えても今の状態は正常とは言い難い。よって、おまえたちには侵害されるような人権や自由などというものは存在しない」

「はぁ?あたしたちは国の駒なわけ?」

「そうは言わないが、構成員なのは事実だろう?もし、国から国籍が与えられていなく、国民として扱われていなかったら、もっと命を脅かされるようなことが起きていたはずだ」

2019/10/29

そして絶望へ04


「では本題に入ろう。結論から言うと、おまえたちは、この歯止めの効かない少子高齢化を抑えるために連れてこられた」

訝しげな表情を浮かべるオリエ。
それとなく意図を理解した様子のユカ。

「ふ、予想どおりの反応だな。なお、これはおまえたちに限ったことではなく、この施設には、すでに多数の2030代の女性たちがいる」

もしかして、2030代の女子が行方不明になり続けてるっていう事件で連れてこられた?」

「そうだ。言うまでもなく我々が主導している。なお、メディア連中は事件と呼んでいるが、実際は国が主導しているプロジェクトだ。まぁ、そんなことは連中に伝えるわけがなかろう」

……1ついいですか?」

口を開くユカ。

1つとは言わずに、聞きたいことはなんでも聞いてもらって構わないぞ」

一瞬だったが、警官に『おまえが聞きたがっていることは、おおむね見当がついているぞ』とでも言いたげな表情が浮かんだ。

関係ないかもですけど、あたしの彼氏とか、ほかの男の人たちがたくさん殺されちゃったのも、その、国が主導してるプロジェクトですか?」

「ああ、そのとおりだ。そして、関係は大いにある。無論、ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99についても同様だ」

2019/10/24

そして絶望へ03


「うん。あたし、その部屋に住んでた。殺されちゃったの、あたしの彼氏だった

「あたしは、そのすぐ上の階に住んでた。で、見ちゃったんだ。意識なくしたあなたが、変なスキンヘッドの男にワゴン車に運び込まれて、そのまま走り去って行くのを」

「そうだったんだ

「いったい何者なんだろうね。てか、あたしたちをさらってきてどうするつもりなんだろ」

「それはこれから説明しよう」

警官の声。
壁だった場所が横にスライドし、警官・スキンヘッド・長髪が入ってくる。

「!!。あなたは?」

口を開くオリエ。

「いかにも」

もしかして聞いてたの?」

「正確な言い方をするなら、我々は別室にいたが、この部屋に仕掛けてある盗聴器で、一言一句漏らさず聞いていた、ということだ」


「ほかに聞きたいことはあるかな?」

オリエもユカも二の句が告げずにいた。

2019/10/22

そして絶望へ02


顔をしかめ、ゆっくりと目を開けていくオリエ。

……

気が、ついた?」

オリエを一瞥するユカ。
意識はだいぶ回復しているようだった。

……ここ、は?」

焦点が合っていないような眼差しのオリエ。

「う~ん、あたしも、ついさっき起きたばっかりだから、よくわかんない

オリエに顔を向けるユカ。
ユカを一瞥するオリエ。

あなたは、いつから、ここに?」

「たぶん、1週間とか2週間ぐらい前、かな?いきなり、アパートの前で、口とか鼻とか塞がれちゃって、意識なくなって、ついさっき、って感じ」

「それ、夜だった?場所は、1階で首のない死体が見つかったアパート?」

ユカに顔を向けるオリエ。
互いの視線が交錯する。

2019/10/15

そして絶望へ01


うっすらと目を開けていくユカ。
焦点が合っていないような眼差し。

「気がついたようだな」

壁だった場所が、ドアのように横にスライドし、オリエを抱えたスキンヘッドが入ってくる。

……

「まぁ、何も言えまい。とりあえず、新しいルームメイトだ」

ユカの隣に、グッタリした様子のオリエが、そっと置かれる。

「コイツは、お前が住んでた部屋の、すぐ上の階に住んでた」

……

「薬の効き目はじきに切れるだろう。敢えてお前よりも濃度を低くしておいた」


「なぜお前の方が濃度を高くしたのか。それは色々と調べたいことがあったからだ」


「いずれにしても、時期が来るまでは仲良くしてやってくれ」

2019/10/12

そして絶望へ00


窓のない、殺風景な6畳程度の白い部屋。
ユカは昏睡しているようだった。
スキンヘッドに拉致されてから、目覚めることなく眠り続けているようだった。


先ほどの部屋と同様な造りをした長い廊下。
スキンヘッドが、気絶したように眠っているオリエを抱えて歩いている。

瞬き1つしないガラス玉のような瞳。
口元には薄ら笑いが浮かんでいる。


広大な白い空間。
ユカの部屋とは別室のようだった。

夥しい数の保育器。
その中には、どことなく顔立ちの似た新生児たちがいた。

2019/10/04

任務進行中26


マサヨシからの返信は、日にちが変わってもくることはなかった。
また、その日はスキンヘッドの付き纏いがなかった。
そして決定的な違いは、住まい周辺の様子が、ユカの恋人が惨殺死体で発見されたときと同様の光景だったことだ。


今回も自然さを装ってエントランスへ近づくオリエ。
しかし、それはエントランス前に横たわっている死体により吹き飛んだ。

「お知り合いですか?」

現場検証に来ていた例の警官が声をかける。

……はい

動揺を隠せない様子のオリエ。

その死体はマサヨシだった。
首と胴体はつながっているようだったが、顔には深めの裂傷が、平行して無数できていた。

「この様子だと、おそらく1時間以内に付けられた傷だと思います。とはいえ、これが致命傷ではなく、この服の下にその要因がある気がします」


「もしかして、ここ最近、何か身の危険を感じることがあったりしますか?」

はい。実は、あの怪しいスキンヘッドにストーキングされてます。今日は、なぜかされなかったですけど

「なるほど。では、安全が確保できるまでビジネスホテルに部屋を用意しましょう。実は、こないだの女性も同じように部屋を用意しました」

……はい、ありがとう、ございます

2019/09/16

任務進行中25


その翌日も、スキンヘッドの付き纏いは変わらずだった。
全速力で振り切ろうとするオリエも同様だった。

しかし、今回のスキンヘッドはこれまでと違い、オリエを追いかけてきた。

「!!」

角を曲がろうとするオリエの視界に、迫り来るスキンヘッドが映っている。


なんとかやり過ごし、家路に着くオリエ。

『ねぇ、どうしよう。なんかあのスキンヘッド、今日は走っても追ってきちゃったよ。だから、すぐに帰んないで、ぐるっと回って、いないのを確かめてから帰ったよ』


マサヨシから返信がくることはなかった。

2019/09/13

任務進行中24


『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:なんか、またあのスキンヘッドにストーカーされるようになっちゃったよ。リアルで会ったときは大丈夫だったのに』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:てか昨日の今日じゃん。どこまで付いてくる感じ?』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:なんだろう。家まで来させたくないから途中で走っちゃうんだけど、そうすると追って来なくなるんだよね』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:敢えてそうしてるのか、オリエの走るスピードが速すぎて追う気が無くなるのか、ただ単に疲れたくないか、そのどれかだろうな』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:わかんないよ、そんなの

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:じゃあ、近いうちにまた会おうぜ?リアルで会うと現れないっていうことなら、それが1番効果的だし』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:ゴメン。ここ最近は仕事も忙しいし、予定もあるから無理。また今度ね』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:了解』

2019/09/10

任務進行中23


「それでようやく2人は、初対面したってわけか

「ああ」

例の隠れ家的なカフェに集っている3名。
並んでいるグラスには、オレンジ・水色・無色透明の液体がそれぞれ満たされていた。

タブレットを操作している警官。
長髪は水色の液体を飲み始める。

「しかし、よく気づかれなかったな」

「どうだろうな。動画を見てもらえばわかると思うが、この女、時々カメラ目線になる」

タブレットに、オリエとマサヨシの後ろ姿が映っている。
場所は、雰囲気が良いとは言い難い、少々雑然とした様子のカフェと思われた。

スキンヘッドはオレンジの液体を、警官は無色透明の液体を飲み始める。

「確かに今カメラ目線になったな」

「だが、すぐに男の方に視線と顔を向けた。となると、大丈夫と見ていいだろうな」

「そうだな。当日は自然さを装って、スマホで動画を撮り続けてた。言うまでもなく私服でな」

「しかし、この男、思ったより重症だな。この手のセッティングで、女を壁側に座らせるとは」

「ただ、今後の展開を占う意味では絶妙なセッティングだ。なぜなら、この手の決定権は女にあることが大半だからな」

「ああ、間違いない。だとすると、これはかなり難しいだろうな」

「そうだな。この女、全く目の前の男に集中してないな」

「カメラ目線以外にも、通行人がいればそっちに視線を移したり、よく下を向いたり、そして、苦笑いばかりだな」

「しかも、口元は笑っていても目が笑ってない。ひどいと笑いながら通行人を見てたりしてるな」


空になった3つのグラス。

「さて、この2人はもうこれ以上関係が進展しないと思われるが、どうだ?」

「同感だ」

「ということは、近日中にやるのか?」

「もちろん。役に立たない男は消す。多少なりとも使えそうなヤツは、ひとまず残しておく。これが我々の任務だからな」

2019/09/07

任務進行中22


『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:ねぇ、なんか23日ぐらい前から、例のスキンヘッドからストーキングされてて、めっちゃ怖い

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:え!?マジで!?見られてることに気づかれたとか?』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:わかんないよ、そんなの
ねぇ、どうしよう


『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:とりあえず、俺に何ができるってわけじゃないけど、明日会わないか?』


『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:うん、いいよ

2019/08/27

任務進行中21


ここ最近の不穏な状況とは裏腹に天気は良く、今日も快晴だった。
余裕がなさそうな様子でアパートを後にするオリエも、これまでと同様だった。

唯一の相違点は、アパートを後にしたオリエを、物陰からスキンヘッドが瞬き1つせずに凝視していたことだった。


「ハンドルネームmasa_yo.s.h.i.99

驚いたように振り返るマサヨシ。
ちょうど自宅エントランス前だった。

おそらく、近くの物陰に潜んでいたと思われる長髪だった。
夜ということもあり、どこに潜んでいたかまでは確認できなかった。

「用件だけ言おう。近日中、もしかすると今日中かもしれんが、o.r.i.e_dayonから、怪しいヤツに付きまとわれている、という趣旨のメッセージが来るはずだ」

「なんだって!?」

「ここまで言えば、どうすればいいかわかるな?」


「確実なことは、もうメッセージのやり取りだけで満足していてはダメだ、ということだ。いいな?」

わかった、よ」



落ち着かない様子で、何度も振り返りながら自宅への夜道を歩いているオリエ。
一定の距離感で付いてくるスキンヘッドが、その都度視界に入るのだから無理もない。

全速力で走り出すオリエ。

立ち止まり、薄ら笑いを浮かべるスキンヘッド。

2019/08/23

任務進行中20


『タイトル:いったい何が目的なんだ?』

『本文:先日首無しの遺体が発見されたアパートで、住人の女性が何者かに誘拐され、行方がわからなくなっているらしい。
犯行時目撃者はいなかったらしいが、警察の調べによると、この女性は遺体が遺棄された部屋の住人だそうだ。

おそらく、2030代の女子が行方不明になり続けてるっていう事件の一環な気がするが、わざわざ相手を亡き者にしてまで拐う意図は、どこにある?
これまでは、元から相手のいない女子ばかりだったらしいから尚更だ。

いずれにしても、これも早く解決してほしいもんだ

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:やっぱりそうだったんだ
実は、あたし見ちゃったんだ。この現場を
なんか、怪しげなスキンヘッドの男が女の人をワゴン車に運び込んで、そのまま走り去ってた

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:マジ?警察に通報はした感じ?』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:いや、あたしが目撃したとき、偶然警官が通りかかって、って感じだったから。それに遠かったから、どうすることもできなかったし』

『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』
『本文:ああ、そういうことか。まぁ、警官が見てたんだったら、案外サクッと犯人捕まるんじゃね?』

『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』
『本文:うん、だといいね』

2019/08/17

任務進行中19


列車内で十分に睡眠を取ったと思われるものの、疲弊しきった様子のオリエ。
しかし、遠めでも怪しげなスキンヘッドが、動かなくなったユカを抱きかかえ、停めてあったワゴン車に運び込んでいるのを見逃すほどではなかった。


「どうかされましたか?」

驚いたように振り返るオリエ。
先日エントランス前にいた、無機質な目をした警官だった。

「あ、いや

「もしかして、今走り去ったあのワゴン車ですか?」

「はい。見ちゃったんです。怪しそうなスキンヘッドの男が、たぶん女の人を、ワゴン車に運び込んでるのを

「そうでしたか。その女の人は、あのアパートの住人でしたか?正確に言うと、あのアパートから、その怪しげな男が運び込んでましたか?」

「いや、そこまでは

「わかりました。そういえば、先日あのアパートで起きた死体遺棄事件も、捜査を進めたところワゴン車で死体が運び込まれたようなんです」

「さっきのワゴン車かも、って感じですか?」

「その可能性もあります。ただ、まだ車種を含め詳細不明な状態なので、これからです」

「そうですか

「では失礼します」

2019/08/10

任務進行中18


列車内の座席で、少々のことでは目覚めない様子で寝ているオリエ。
乗客は、このオリエとユカのみだった。

ユカはドア付近に立っており、外を眺めていた。
愛する者を奪われてから、その表情には影が色濃く出るようになった。

外は、そのような心象風景を写しているかのような夜だった。


ユカは、ビジネスホテルで暮らすようになっても定期的にアパートに出入りしていた。
あまりにも急だったため、私物の持ち出しがほとんどできていなかったのだ。

この日も私物の持ち出しに訪れていた。
エントランスの鍵を開けようとしていたところを、物陰に潜んでいたスキンヘッドが背後から厚めの布で口と鼻を塞ぐ。

「!?」

大きく目を見開いていたが、薬を嗅がされたようで、程なくして脱力したように目を閉じていく。

2019/07/28

任務進行中17


とあるカフェのテーブル席で、スキンヘッドがガラパゴスを操作している。
空になった、酒が入っていたと思われる長めのグラスが1個。

知る人ぞ知る隠れ家的な場所で、夜間という時間帯のせいか、客はこの男のみだった。

全体的にアンティークな造りで、陳列されている小物も同様。
そして、暗めの照明。
BGMもかかっていなかった。

ほぼ確実に経営者の趣味と思われるような佇まいだったが、タンクトップのスキンヘッドがいても不思議と違和感はなかった。

「ずいぶん珍しい場所だな」

長髪と私服姿の、事件現場に居合わせた警官と見た目が酷似した男がやってくる。

「俺は、わりとこういうとこ好きだがな」

ニヤニヤしながらガラパゴスから目を離し、2人を一瞥するスキンヘッド。

「例のヤツは、そろそろ動くのか?」

「ああ、そのつもりだ。そっちがもう少し距離が縮まってからとも思ったんだが、アレだとメッセージのやり取りだけで満足してる感があるからな」

「間違いない。俺も、そろそろ何かしらキッカケが必要だと思ってたところだ」

「ということで警官さん、あんたにも手伝ってほしいんだが?」

「構わない。だから呼んだのだろう?」

「もちろん。さて、これから具体的な話だが、その前にせっかく来たんだから、1杯ぐらいなんか飲みな」

2019/07/19

任務進行中16


マサヨシのノートパソコン画面右下に、メールの受信を知らせるアイコンが表示される。
『件名:o.r.i.e_dayonさんからメッセージがあります』

これが長髪の言う、これまでと違った反応だろうか?
怪訝そうにメールを確認するマサヨシ。

『氏名:o.r.i.e_dayon

『本文:突然メッセージ送っちゃってすみません(汗)
masa_yo.s.h.i.99さんだったら、って思ったので、送らせてもらいました。
実はあの遺体が見つかったアパート、あたしが住んでるアパートなんです。
もちろん、遺体が置かれてた部屋じゃないですけど。
でも、すぐ下の部屋なので、色々落ち着かないです(汗)』



『件名:masa_yo.s.h.i.99さんからメッセージがあります』

スマートフォンを操作してメッセージを確認するオリエ。

『氏名:masa_yo.s.h.i.99

『本文:メッセージありがとうございます。
そうでしたか
さすがに、ちょっと気の利いたことは思いつかないですが、ホント、早く犯人が捕まれば、って思います』

表情をほころばせるオリエ。

これ以降、2人の間にメッセージのやり取りが増えていく。

2019/07/16

任務進行中15


オリエのスマートフォンに、マサヨシのブログが更新されたことを知らせるアイコンが表示される。

『タイトル:これはマジエグい

『本文:昨日、場所は控えるが、とあるアパートの1階で、何者かに遺棄されたと思われる首無しの遺体が発見されたらしい。
身元を特定すると、どうも事件前日ごろから行方不明になっていた、この部屋の住人の交際相手だったそうだ。

これまでの事件と因果関係があるかは謎だが、いったい、どこのどいつがなんのために?だな

あと、どうも交際上のトラブルとかじゃないらしい。現にこの2人は事実婚も同然の状態だったみたいで、恨みを買ってて、っていうのも心当たりがないそうだ。

だとしたら、誰でもよかった的な無差別殺人な感があるだけに厄介そうだ
特に、同じアパートの住人たちは気が気でないと思われるだけに、早期解決を祈る

スマートフォンを見ながら、ニヤリと笑う長髪。

2019/07/14

任務進行中14


事件発生の当日から、ユカはビジネスホテルで暮らすことになった。
被害拡大防止と精神面への配慮から、警察が手配したのだった。

事件現場は、一通りの検証が終わったためか、翌日にはパトカーや警官たちの姿は見えなかった。
オリエは残ることにしたが、なにぶん、すぐ階下の部屋で起こっていたこともあり、気が気ではなかったようだ。

ニヤニヤしながら通話中のスキンヘッド。

「そうか、片割れはあのビジネスホテルに移動したか。ああ、その方がやりやすい。当面は滞在するだろうから、タイミングを見計らって決行予定だ。ん?別件のヤツは、ちょっと時間がかかると思うが、最終的には予定通りになる」

2019/07/09

任務進行中13


時を同じくして、マサヨシが少々放心気味な様子で、人気のない大通りを歩いている。
状況の整理ができないでいると思われた。


「ハンドルネームo.r.i.e_dayonを知っているな?」


「あらかじめ言っておくが、我々はお前がブログをやっていることも、どんな内容かも、コメント者も把握済みだ」

名前ぐらいなら」

「では、まずは本人と実際に会って、関係を深めてもらおう」

「どう、やって?」

「もう少し見所があると思ったんだが、まぁいいだろう。いきなりメッセージを送っても上手くいかないことぐらいはわかるな?」

「それは確かに

「実は今日の早朝に、このo.r.i.e_dayonが住んでいるアパートで遺棄されたと思われる死体が発見された」

「なんだって!?」

「ここまで言えば、どうすればいいかわかるな?」

ああ、なんとなく

「上手くいけば、これまでと違った反応があるはずだ」

ワゴン車のドアが開かれる。

「この道を、ワゴン車の進行方向と反対に向かって行くがいい」


「言うまでもないが、今回の件はみだりにブログやSNSで公開しないこと。仮に公開したら、我々は即時に把握できる。そうなったら、命はないと思え」