2018/03/24

Α-06


白に近い薄いグレーの分厚い雲に覆われた空。
重く鳴り響いている陰鬱な鐘。

静けさに包まれている針葉樹の森。
しゃがみ込んで一心不乱に何かをやっているアヤカ。
微動だにしない人間の足。

カサカサという音。
アヤカの動きが止まる。

「俺も、食っていいか?」

タカシだった。
アヤカはタカシに背を向けたまま動かない。

「カネ、ないんだ。ここ最近、何も食ってないんだ」

ゆっくりと振り返るアヤカ。
互いの視線が交錯する。

「いい、よ

2018/03/23

Α-05


閑静な住宅街。
大きめの戸建てが並んでおり、ところどころに510世帯規模のアパートが入り混じっている。
防犯のためか、街灯も先ほどの区域より明るく、住居によっては玄関付近を通りかかると、自動的に明りが照らされるようになっていた。

2階建ての鉄筋造アパート。
エントランス付近に用意されているゴミ置場で、何かをしているアヤカ。

ちょうど通りかかるタカシ。
アヤカに気付き立ち止まる。


視線に気付いたのか、手を止めてゆっくりと振り返るアヤカ。

「何、してる?」

大きく目を見開き、慌てて逃げ出すアヤカ。
手には大きめの段ボールが握られていた。


アヤカの姿が見えなくなるまで目で追い続けるタカシ。

2018/03/17

Α-04


辺りは黒く塗りつぶされていた。
街灯も明るさが増していたが、役不足だった。

あてもなく歩いているタカシ。
かつては多くの個人商店が立ち並んでいたと思われる場所。
人の気配は感じられない。
人通りもない。

コンビニエンスストアの明かりが点いていた。
人口減少に伴い、どの店舗も来店があったときのみ明かりが点くようになっていた。
店舗自体、以前の半分から3分の1程度の大きさになっていた。
また、レジはIT化・AI化により無人になっていた。
人間は店頭に立つことはなく、裏で日中に商品の発注や搬入、売上の管理を行うのみだった。
商品は残数がゼロになると、自動的に一定数AIで補充されるようになっていた。

出入り口前に、男か女か見分けのつかない人間が倒れていた。
うつぶせになっており、砕けた頭部から夥しい赤い液体が流れている。

無人化したのをいいことに盗みに入ったものの、警備用の無人機に死角から撃たれたと思われる。
逆に、なんらかの無人機を仕掛けていない店舗の方が珍しいくらいである。

ちょうど、何事もなかったかのように通りかかるタカシ。
明かりが消える。

2018/03/07

Α-03


寂れた様子の街並み。
かつては1億を超える人口を抱えていたのが嘘のような活気のなさである。

大地震・少子高齢化・IT化・AI化により、直接的にも間接的にも人口が激減することは以前から言われていたが、なんら有効な対策が取られなかった結果でもある。

スーパーマーケットやデパート、個人商店は軒並み閉鎖され、コンビニエンスストアや一部の専門店が細々と運営しているような状態だった。

夜の訪れが近いせいか、疎らに設置されている街灯が薄っすらと点り始める。
辺りが完全に闇に覆われた場合は、その役目を全うするのは困難な明るさである。