2018/02/27

Α-02


静けさに覆われた森内。
鐘の音は止まっていた。
木々の間から見える空は、依然としてダークグレーのままだった。

表情1つ変えずに歩いているアヤカ。
足音が辺りに響いている。


開けた場所。
大きめの池。
対岸はかろうじて視界に入る程度。
川が近くにあるのか、水の流れる音も聞こえてくる。


脱ぎ捨てられたような衣類。
アヤカの姿は見えない。

池から勢いよく姿を見せるアヤカ。
しばし佇んだのち、全身を沈めていく。

この動作を、辺りが闇に覆われるまで何度も繰り返していた。

2018/02/20

Α-01


活気がなく、人の気配もほとんどないマンション帯。
ここ23年の不動産バブルによる負の遺産だった。
数年前に起きた大地震からの復興が順調に進んでいることを、内外に示すためのものでもあった。

少子高齢化による未曽有の人口減少時代に逆行するような動きだったが、誰しもが現実逃避をしたいがために異を唱えなかった。

また、IT化・AI化で職を追われた連中が大量に野に放たれている状況でもあった。

どこからともなく聞こえてくる、重く陰鬱な鐘の音。
空は分厚い雲に覆われている。
黒に近いダークグレー。

あてもなく歩いているタカシ。
アヤカより2030cm程度背が高かったが、栄養不足気味なのか線が細かった。
小顔に切れ長な目。
しかし、目の下にはドス黒いクマ。
大きく落ち窪んだ頰。
虚ろな瞳で、全体的に覇気がなかった。

立ち並ぶマンションはどれも外観こそ様々な趣向が凝らされていたが、人の気配はなく、本来の役割は果たしていないも同然だった。

しかし、防犯用の無人ヘリコプターは各マンションに1機ずつ割り当てられているようで、随時巡回していた。
まるで小型模型のようだった。

1人のみすぼらしい男が、無人機が見えなくなるのを見計らったように、エントランスへ駆け寄っていく。
空き巣か無賃居住をしようとしているかのどちらかと思われた。

しかしエントランスはビクともしない。
近くにオートロックの解除装置があるため、当然である。

それに気付いていないのか、ただ単に破れかぶれになったのか、男は全身の力を駆使してエントランスを開けようとしている。

タカシは見て見ぬ振りをして通り過ぎていく。

ちょうど速度を上げた無人機がやってくるところだった。
無論男は気付いていない。

無人機は10m程度離れた場所で静止し、一瞬だったが機体が光る。
体液らしきものが残っていたが、男の姿は影も形もなくなっていた。

何事もなかったように、通常任務へ戻る無人機。

2018/02/16

Α-00

黒に近いダークグレーの分厚い雲に覆われた空。
辺りには重く陰鬱な鐘が鳴り響いている。
無風状態のためか、よく響いている。

針葉樹の森。
昼間だが、日光が差さないため鬱蒼としていた。
静かだった。
鳥達の囀りはなく、小動物や獣達の気配もない。


1羽のカラスが飛んでくる。

しゃがみ込んで一心不乱に何かをやっているアヤカ。
微動だにしない人間の足らしきものが見える。

降り立ったカラスは、様子を窺うように小刻みに跳ねている。
カサカサという音。


アヤカの動きが止まる。
カラスも跳ねるのを止めて、アヤカの様子を窺う。

ゆっくりと振り返るアヤカ。
小顔に大きな丸い目。
しかし瞳は小さく、血走った白目が大半だった。
目の下にはドス黒いクマ。
頰には、大小問わず多数の殴打または引っ掻かれたような傷痕。
口の周りは、黒を混ぜたような赤で染まっていた。

その場でアヤカの様子を窺っているカラス。

瞬き1つしない目。
小さな瞳にはカラスが映っている。

「いいよ

立ち上がり、カラスから目を逸らし、反対側へ立ち去っていくアヤカ。
ケガをしているのか、片足を引き摺るような動き。
身長は150cm程度。
ショートパンツから伸びている足は枝のように細く、体の半分程度の長さだった。

アヤカのいた場所へ羽ばたいていくカラス。


みんな、食べなきゃ生けてけないから


赤く染まった肉片を啄んでいるカラス。

2018/02/01

95

6月になった

春から夏へ移行する途中の季節
そのわりには暑い日が多いが

オレは新幹線に乗っていた

行き先は東京

しばし、もしかしたら今後一切かもしれないが
この新幹線に乗ることはないだろう

故郷への帰還

とりあえず休息が欲しい

心身とも疲れはてた

あの会社に慰謝料を請求してやりたいが、そんな気力も湧かない

東京に着いた

先のことなど考えたくもない

オレには未来などない


あるのは死への道だけだ



-----完-----


※追記

このブログにも載せているloyal shadowの英訳が終わり、電子書籍化の準備をするため、しばし更新途絶える予定。
とはいえ、新作の構想もそれなりにできつつあるので、2月中に着手できるかと思う。
今しばらくお待ちいただければ幸いだ。