2018/12/25

Α-42


強いが、優しい日光が辺りを照らし続ける。
幾分収まりつつある慟哭。
顔を伏せ、地面に手を付いたまま全身を痙攣させているアヤカ。

大きめの羽音とともに1羽のカラスが飛んできて、ちょうどアヤカの真正面に着地する。
驚いたように顔を上げるアヤカ。


アヤカを見つめているカラス。

どう、した、の?」


食べたい、の?」

鳴かずにアヤカを見つめ続けているカラス。

いい、よ」

フラつきながら立ち上がり、カラスに背を向けて歩き出すアヤカ。
程なくして、何かを訴えるように耳障りな声で鳴き始めるカラス。

異変に気付いたアヤカが立ち止まり、振り返る。
目にも止まらない速さで飛びかかってくるカラス。

2018/12/14

Α-41


辺りは夜の色に染まっていた。
しかし月明かりのためか、黒く塗りつぶされるほどではなかった。

苦しそうに息をしていたタカシが静かになり、そのまま目を閉じる。
その様子を見て、安心したようにタカシに体を預け、目を閉じるアヤカ。


強めの日差しが2人の寝顔を照らす。
ゆっくりと目を開けていくアヤカ。

もう朝かぁ
なんか、目閉じたらいつの間にか寝ちゃってたし。

固く目を閉じたまま微動だにしないタカシ。
日光に照らされたその顔色は、蒼白に近かった。

でも、天気は良さそう。
ね、タカシ。

無反応なタカシ。

タカシ?
ねぇ、ねぇってば。

激しくタカシを揺さぶるアヤカ。
無反応なまま、力無く俯せに倒れるタカシ。
そのまま微動だにしない。

ねぇ、約束、したじゃん
一緒に、鐘の場所、見に行くって
なのに
なのに……

膝から崩れ落ち、地面を何度も叩きながら悲しみの高音をあげるアヤカ。
タカシを照らす光は、優しく、そして温かだった。

辺りには、慟哭がひたすら反響し続ける。

2018/12/05

Α-40


橙色の木漏れ日が、辺りを同じ色に染めていく。

ウソ
行き止まり?

丸くくり抜かれたような、広場のような場所だったが、周りは高い樹々に囲まれており、目の前は高い崖になっていた。

そう、みてぇだな

荒い息遣いのタカシ。
明らかに顔色は悪くなっていた。

休む、よね?

ああ
なんか、変な感じだ
すっげぇ寒いけど、すっげぇ熱い

とりあえず、座ろ。

片足が不自由なアヤカよりもぎこちない動きのタカシ。

あ、鐘の音。
やっぱり同じだ

無反応なタカシ。


1羽のカラスが飛んでくる。
2人の目の前の、少々離れた場所に降り立ち、様子を窺うように小刻みに跳ねたり、立ち止まって首を傾げたりしている。

カラスに気づき、視線を向けるアヤカ。
互いの視線が交錯する。


2人に背を向けて、そのまま飛び立っていくカラス。

もしかして、あのときのカラス?

タカシは無反応なままだった。
土気色の顔で、苦しそうに息をしている。

心配そうにタカシを一瞥して寄り添い、その手を、包み込むように両手で握りしめるアヤカ。

辺りは橙色から黒へと変わりつつあった。

2018/12/01

Α-39


タカシを固く抱きしめ、微動だにしないアヤカ。
その後ろ姿を、雨が刺すように降りつける。

タカシの腕が力無く伸びてきて、アヤカの背中を抱く。
弱々しい抱擁で、ただ腕を乗せているだけというような状態だった。

響き渡る大音量の雨音。
2人の姿は白靄に掻き消されていく。


樹々の間から、暖かい光が多数漏れてくる。
徐々に薄くなっていく白靄。

止んだね。

ああ、やっと止んでくれたな

抱擁を解き、タカシの顔を覗き込むアヤカ。

やっぱり顔色良くないね。
手も冷たいし。
しすぎちゃって疲れちゃっただけ、じゃない気がする

なんか、もらっちまった、かな?

う~ん、どうなんだろ。

まぁ、そうだったとしても、目的が変わることはねぇ
鐘が、鳴ってる場所に行くっていう

うん。

行こうぜ。

2018/11/24

Α-38


これゲリラ豪雨、かな?

ああ、たぶん

スッゴイ音
でも、やっぱ樹のおかげで、そんなに雨落ちてこないね。

確かに
ポツポツ、だしな


いつ、止むかな?

さぁな
ずっとじゃねぇとは思うけど、すぐってわけでもない気がする

やっぱそうだよね。
でも、早く止んでほしい。

確かに
ポツポツの量も、地味に増えてきたしな

じゃあ

タカシの隣に寄りかかるように座っていたアヤカが立ち上がり、そのまま向きなおる。
交錯する視線。

濡れちゃうから

タカシに覆い被さるアヤカ。

激しさを増していく雨音。
辺りは靄で白くなっていく。

2018/11/15

Α-37


鐘、鳴ってるね

ああ

そういえば、あの音っていつも同じじゃない?
大きさとか、回数とか。

確かに

何なんだろうね。
だって、いつも同じってことは、近づいてもいないし、遠ざかってもいないってことだし。

言われてみれば、そうだな
つっても、なんでなのかは全然想像つかねぇけど

うん


あ、雨だ。

思ったより、早かったか

まだそんなに強くないけど、もっと降ってくるかなぁ

かもな
どんどん暗くなってきたし

辺りに大きな雨音が響き始める。

2018/11/03

Α-36


依然として樹々の間から漏れてくる光は弱いままだった。

結構歩いた気がするけど、なんか、光の感じ、全然変わってなくない?

ああ、そういえば

天気悪くなんのかな。

かもな
気のせいか、雨っぽい臭いがする

あ、確かに。
今日降ってくるかなぁ。

光が漏れてこなくなったら、そうなるかもな

そうなったらどうしよう
あ、でも樹があるから大丈夫かな?

ああ、たぶん
つっても、樹は傘じゃねぇから、ある程度は濡れちまうと思う

ねぇ、大丈夫?
やっぱ、お疲れ?
休む?

そうだな。
そうする

だよね。
さっきから、あたしの方が先に行っちゃいそうになってたから。
激しすぎたもんね。

ああ
ホントだぜ

2018/10/25

Α-35


樹々の間から弱い光が漏れてくる。

いっぱい、しちゃったね。
てか、いっぱいイっちゃった

ああ。いっぱいイかせてやった

ふ~んだ。
タカシだって、いっぱいイっちゃってたじゃん。

そうですが何か?

べっつに~。

いいじゃんよ。どっちかしかイケないってわけじゃなかったんだし。

まぁね~。


あの鐘の音

ん?

聞こえるか?

うん。

まだ夜明け前だと思うけど、誰かが鳴らしてんのかねぇ

もしくは、自動的に鳴ってるとか?

ああ、なるほど

どっちなのかは、一緒に見に行けばわかるよ。

確かに

でも、その前に体洗いに行こっか。
泥々でベタベタだし。

ああ


2018/10/20

Α-34


荒い息遣い。

フフ
女の子みたいな声出して、イっちゃったね

口遣い、てか舌遣い、エロすぎだし

え?気持ち良かった?

てことにしといてやるよ。

フフフ。
いっぱい出ちゃってたもんね
気持ちいいから、いっぱい出ちゃうんだもんね

ハイハイ。

あれ?
なんか、おっきくなってきたよ?
さっきまでキューってなってたのに

触り方がエロいからだろ?
てか、そんなとこくすぐるからだろ?

あ~あ、すっごくおっきくてかたくなっちゃった
したくなっちゃったの?

そうかも、な!

!?


辺りが黒く塗りつぶされていく。

2018/10/13

Α-33


ただ、思ったよりも色々消耗してたみたいで、辞めてからしばらく何もする気になれなかった。
せっかく自己都合で辞められたのに、ハロワに行く気力もなかった。
もちろん、身近な他人たちからはぜってぇ離れたかったから、これはウダウダやってる間に住む場所決めておいた。こないだ行ったあの場所じゃねぇけど。

燃え尽きちゃったんだろうね

毎日最低でも12時間は寝続けてたな。完全に干物状態だった。
つっても金はあったから、なんとかなった。
まぁ、使いたくてもその時間と気力とか体力がなかったから貯まってたってのもあるけど。

(微笑しながらタカシの手の関節を弄り始める)

で、3ヶ月ぐらい経ってなんだかんだで金がなくなってきたから、しゃあねぇから仕事探しして、コールセンターで働くことにした。

電話の、問い合わせ的な?

ああ。
座って喋ってれば金になるからラクかなと思ってな。
まぁ、そこでも色々あったけど、ブラックと比べれば全然だった。
で、IT化とかAI化の煽りをモロ喰らって、野に放たれちまって今に至るって感じだな。

フフフ、お疲れさま
なんか、あたし、すっごくタカシを気持ち良くさせてあげたい気分なんだ

へぇ
何してくれんだ?

ん?
お口でね


橙色に染まっていく木漏れ日。

2018/10/10

Α-32


残り1ヶ月はどんな感じだった?

途中までは、その1日中座って電話ってのを続けてたけど、20日あたりから、メドがついたってことで、俺含め残ってた連中に順次子会社のいくつかから、来ないか?って誘いが来るようになった。
もちろん気が進まなかったから、どれも断ってたけど。
まぁ、俺のいたところも子会社だったから、子会社同士で異動って感じだったけどな。

てか、20日ごろからって遅すぎじゃない?
1ヶ月、何日あると思ってるわけ?

会社にとっちゃ、ありえねぇことが起こっちまったので、テンパっててズレ込んだか、実はもっと早くからほかの子会社の受け入れ体制ができてたけど、俺らに選択肢を与えさせないために敢えてその時期に言ってきたか、もしくはその両方か、だろうな。

なんか、両方な気がする
で、その子会社のどれかに異動したの?

いや、いい機会だから辞めた。
ホント、最後の最後までゴネてやったよ。ほかにもっといいとこはねぇのかって感じで。
最終的に、会社に、ほかにはないから会社都合で辞めていいって言わせるまで粘ってやった。
なかなか言いやがらなかったけど、俺以外にも同じ考えの連中が数人いてさ、みんなでゴネてやった。

フフ、なんか楽しそう
会社的には、やらかしてるだけに強く出られなかった気がする

だな。
弱みを突きまくって、最終的に取るもん取ってやったって感じになるな。
会社都合で辞めると、自己都合で辞めたときと違って、ハロワに申請すれば、すぐに金入ってくるし。
あと、1回も使えなかった有休10日を金に変えることができたし、最後の月の給料とボーナスも入ったから、勝ち組も同然よ。

(微笑しながらタカシを見つめる)

2018/09/22

Α-31


でさ、いつも、どれだけ仕事してた?
仕事する時間、超長かったって言ってたけど。

だいたい、朝9時から夜8時ごろだったな。もちろん、もっと遅くなることの方が多かった。終電で帰ることも結構あった。
まぁ、アヤカの母ちゃんほどじゃねぇ気はするけど。

それはそうかも
でも、タカシのいた会社みたいな感じじゃなかったぽい
仕事も、違うみたいだったし
たぶん、病む人そんなにいなかった気がする

やっぱり、仕事のことはそんなに話さなかった感じ?

うん
会話自体、そんなになかったかな
まぁ、お母さんの仕事のこと、あたしが知ってもよくわからなかったと思うし、知る必要もないかなって。

知ったところでどうにかなるもんでもねぇしな。

うん
で、その色々ビミョーなブラックには、どれだけいた感じ?

確か9ヶ月ぐらいだったな。
実は、辞める3ヶ月ぐらい前に、そのサービスの売り込みをやってた営業所が全て閉鎖されることになってさ。
詳細は聞かされなかったけど、おそらく例の勝手に契約したことにしてたってのがこじれて、それがマスコミに行っちまったのがキッカケだと思う。

なんか、マジでイミフな会社

実際、社名は出なかったけど、当時ニュースに、こんなことありました的な感じで放送されてたし。
で、2ヶ月ぐらい、全ての客なのか一部の客なのかわからんけど、直接電話してさ。もちろん、さっきの話は伏せて、このサービス続けますか?辞めますか?っていう2択を迫るようなことをやってた。

無意味に取り繕ってるだけの感じがする。

だろうな。
でも楽だったぜ。1日中座って電話してるだけだったし、つながらないことも多かったし、つながっても、すんなり続ける、辞めるで話が進んだし。もちろん金もフツーに出たし。
まぁ、上手くいかない連中の方が多かったみたいだけどな。

たぶん、タカシだから上手くいった気がする

どうだろうな。
俺は当たり前のことを当たり前にしてただけだけどな。
それが逆に良かったのかもしれんけど。

うん、だって、当たり前のことって当たり前にできないことが多い気がする
そうじゃなかったら、揉め事とか事件とか犯罪も起こらないと思うし。

ああ、確かに。

2018/09/15

Α-30


どんな感じ?

そいつも実績買われて所長をやってたんだが、会社に不満があったってのと、営業所で上げた売上げをそのまま使えば、自分で会社作ってやってけんじゃね?って思ったみたいで、営業所の売上げをそのままパクってバックれた。
そしてタチが悪いことに、立ち上げメンバーとして何人か引き抜いてったんだ。
その中には、俺がいた営業所の連中が数人いた。

確かに、ギリギリかも
最初のうちは、バレなければなんとかなるかもだけど、ずっとは無理そう

まぁ、直接連中と面識あったわけじゃないから、どんだけ続いたかとか、今どうしてるか、ってのは知らんけど、良くて23年だろうな。

タカシは、声かけられた?

いや。
なので、その事実は同じ時期に入った、仲の良かった同僚から直接聞かされた。
まぁ、引き抜かれた連中、ある日突然来なくなったし、その同僚、俺より契約取ってたせいか、連中から声かけられたって言ってた。
もちろん、どの程度連中から詳しいことを聞いてたかわからんけど、ヤバいって思ったみたいで、サクッと断ったって言ってたな。
俺は、取れるようになってたけど、そいつほどじゃなかったし、ちょっと仕事が面白くなっててほかに行くっていう選択肢はなかったから、それを連中が察したんだろう。

でも、仮に不満とかあって辞めたいって思ってても、なんとなくタカシは乗らない気がする

ああ、それはそうだと思う。

2018/09/06

Α-29


電話料金が安くなる的なサービスの売り込みで、会社はとにかく売上げに拘っててさ。
どんな手使ってでも契約取ってこい的な感じだった。

なんか、ビミョー
タカシは、どうだったの?
契約は、取れてた感じ?

ああ。
最初はダメだったけど、23週間経ったら取れるようになった。もちろん最初から取れてたヤツもそれなりにいたけど、それは、前もほかの仕事何年もやってたようなヤツばっかだった。
まぁ、そもそも俺みたいに、実質学校出たてみたいなヤツはほぼいないような会社だったしな。

売上げが、欲しくてしょうがなかったから、かな?

だろうな。

でも、そうやって無理矢理売上げ上げても、あんま意味ない気がする
なんだろう
その会社だと、やっぱり病む人多そうだし、契約取ってもすぐにキャンセルとかも多そうだし

それだけで済むなら全然マシさ。
その会社も全国に営業所があって、まぁ従業員は少なくても1000人はいるような規模だったけど、ほかの営業所で、実際に相手と話ししてないのに、自分で契約書書いて、持ち歩いてたハンコを押して契約したことにしてたヤツがいたよ。

ウソ

しかも、そいつ営業所内で1番取れるヤツで、所長代理みたいなこともやってて、その事実が発覚するまでは、実績買われて、新しくできた営業所の所長やってた。

やっぱり、クビ?

ああ、そりゃあな。懲戒解雇っていうすげぇ重い辞めさせられ方だったらしい。
もちろん、次の職に就くのがほぼ不可能なレベルだ。

だって、犯罪じゃん
そんなの
ちょっと考えればわかるじゃん

バレないって思ってた気がするな。取ったら取りっぱなしだし、会社とか商店相手への売り込みで、一応電話回線の名義も書いてたけど、そのまま会社名とか商店名書いとけばいんじゃね?って感じだったと思う。
で、その名義が実際の登録と違うことが多くて、サービス提供ができなかったから、すぐに発覚しなかった気がする。
たぶん、そいつその辺もある程度計算してたんじゃないかと。

マジありえない

まだあるぜ。
これも、またほかの営業所のヤツで、さっきほどは重くないけど、超ギリギリな感じだ。

2018/08/31

Α-28


考えてもみろよ。工場へ回される前、俺だけ直接人事の連中に呼び出されてさ。
人事ってのは、人を採用したり、誰をどこに回すかとか、誰の取り分を増やすかとか減らすかとかを決めるとこだけど。
人が足りないから優先的に工場へ行ってもらう、って言われたのに、実際に行ってみたら全然そんなことなくてさ。コイツどうすっかなぁ、みたいな感じだったわけよ。
誰だって不信感持つし、まともにやってやろうって気もなくなるぜ。

確かに

まぁ、結果的に会社の思惑通りな感じになったのはすげぇ気に入らねぇし、戻ったとしても安心できる状況じゃねぇことも頭ではわかってたけど、体が、ていうか細胞自体があの場にいることを拒否ったって感じだった。

うん、そうだと思う。

で、次のとこはブラックだったんだが、ブラックって言われて何をイメージする?

う~ん
やってることが、良くないことなんだけど、そうじゃないみたいな感じでやるとか
すごい長い時間仕事しても、その時間に合ったお金がもらえないとか
かな?

次のとこは、その全てを兼ね備えてたな。

え、マジで?

2018/08/24

Α-27

最初んとこは食品メーカーで、地方にある本社近くの工場で働いてた。次のブラックは営業で、電話料金が安くなる的なサービスの売り込みをやってた。

全然違う仕事だね…

食品メーカーは、行ってた大学がそっちに強かったからなんとかなったようなもんで、ブラックだって、人を選ぶ基準がゆるかったから入れたようなもんさ。

でも、運は良かった気がする…
そういうのに恵まれない人って、ホント恵まれない気がするし…

ああ、今思えば確かに。

仕事は、どうだった?
やっぱり、大変だった?

そりゃあな。色々な会社見たけど、楽なことは1つもなかったな。面白くもなんともねぇし、キツいことしかなかった気がする。

そうなんだ…

ただ、そのキツさのポイントが会社によって違うって感じだな。
最初んとこは、工場だったってのもあるけど、体的にキツいのは言うまでもなく、追い打ちをかけるように、性格の悪りぃ連中に恵まれてさ。
で、土地も合わないから気の休まるときが全然なくて、ハッキリ言ってイミフな状態だった。

よく、1年も続いたよね…

連中も、俺がどんだけ持つか観てやがる感じだった。だから、奴らの予想を裏切ることだけ考えてたし、それが唯一の原動力だった。

なんか、タカシはその会社から受け入れられてなかった気がする…

だろうな。
あの会社、100人ぐらいの従業員で全国に支店があってさ、俺が入るときまでは、毎年多くても数人ぐらいしか人取ってなかったらしいけど、俺んときは色々と変えようとしてたみたいで、15人取ってた。
で、俺はそいつらと全然合わなくてさ。いつもどうでもいいことで揉めまくってて、仕事も回らなくなりかけることもそれなりにあった。

もしかして、タカシだけ先に工場に?

ああ。
ほかの連中は、もっとあとでバラバラに全国にある支店に回されてた。まぁ、営業だったみたいだが、低レベルすぎたからついてけなくて、もう辞めてるかもな。
ちなみに、俺が先に工場に回されたのは能力を買われてってことじゃなくて、悪影響しかないから切り離したって感じだ。

うん、そんな気がする。

2018/08/03

Α-26


その会社には、どれくらいいたの?

1年ぐらいだな。どうも合わなくてさ。会社もその土地も。結局、1番身近な他人たちの元へ戻るしかなかった。奴らに白い目で見られたのは言うまでもねぇ。

逆に、あたしはそういう方がやだな
精神的に病みそう

まぁ、俺だってやだったけど、ほかに行く場所がない以上はしょうがねぇ。幸い、連中には世間体を気にする性質があって、俺を殺す気はなかったからエサが途絶えることはなかったけどな。

上手く利用した感じだね

ただ、居座るための条件を満たしてないことに変わりはねぇから、あの手この手使ってメンタル攻撃を仕掛けてきやがったよ。それがてめぇらの生き甲斐か?っつう勢いで。

よく病まなかったね

なんとか3ヶ月ぐらいで総合職にありつけたからな。もっと長引いてたら色々とヤバかったと思う。間違いなく連中に、てめぇらのせいで俺はこうなったから責任取れ、って言ってるだろうし。たぶんそうなったら、色々収集つかなくなって、俺が連中を殺すか、その逆になるか、って感じだったと思う。

だったら、早く決まってホント良かったよね
最悪の状況は防げたわけだし

まぁな。ただ、次のとこがブラックだったから、一難去ってまた、って感じだった。

そうなんだ

2018/07/31

Α-25


ねぇ、また、タカシのこと聞いてもいい?
学校出てからは、どんな感じだったの?

まぁ、それなりに色々あったかな。
転職も何回かしたし。

そうなんだ

大学出て、最初は一応新卒総合職っていう形で、地方の会社に入ったんだ。
1番身近な他人たちから離れるためにな。
別にそこに行きたかったわけじゃないけど、不景気だったからどこも人取らなくてさ。
40社近く受けて、そこしか行く場所がなかったからって感じさ。

うん

最初は、就活なんてテキトーに、多くても10社ぐらい行けばどっか決まるだろうぐらいしか思ってなかったけど、まさかその4倍も行くことになるとはって感じだったな。
不景気マジハンパねぇ。

あれかも
タカシに、その会社でどうなりたいとか、何がやりたいとか、そういうのがなくて、向こうにもそれを見られたからかも

ああ、今思えばそうだろうな。でもしょうがねぇじゃん。ないもんはないんだし。そもそも仕事なんてしたくねぇし。じゃあなんで就活なんてやったかっていうと、1番身近な他人たちを黙らせるためさ。学校出てすぐなんて1人暮らしできるだけの金がないから、物理的に連中と暮らすしかねぇわけだし。それに連中は、この家にいるなら総合職じゃねぇとダメって言ってきやがったしな。

生きるためにそうするしかなかった、って感じだね

まぁな。てか、そもそも生まれたくて生まれてきたわけじゃねぇし。かといって簡単に死ねるわけでもねぇ。もっと言うと、てめぇらが勝手に俺という存在を作り出したにすぎねぇわけじゃん?
なのに、おかしくね?
食わせてやってるんだからこっちに従え、って言ってるも同然だし。
逆だろ?って。

それは、そうかも
でも、あんま考えたことないかな

ああ、まぁ、前聞いた状況だと考える余裕もなかった気がするし。

それもそうだけど、もし同じ状況だったとしても、あたしはタカシみたいには考えないと思う

そっか