2017/10/20

035

設置されていた街灯に明かりが点いていた
明かりから外れた場所は漆黒の闇に覆われていた

キウェインは肩で息をしていた
急激に記憶が戻ってきた影響で、精神的・肉体的に負荷がかかったのだろう

明かりに照らされた道を辿って行けば、スラム街と貧民街の境界線に着くのは間違いなさそうだった



徒歩で、さらに10分程度進んだ頃だろうか
スラムの監視員数人が、罵声や馬鹿笑いとともに、貧民街からの脱出者1人に殴る・蹴るの暴行を加えていた

脱出者は何とか命乞いをしていたが、すでに立つこともできないほど消耗していたようだった
おそらく全身の骨は相当数折れてしまっているだろう

やがて、微動だにしなくなった


少年は10歳ほどだろう
瞬きもせずに、ひたすら目の前で起きていることを眺めているようだった

数人の監視員たちが罵声とともに2人の人間に暴行を加えていた
彼らは少年の両親だった

少年は恐ろしく無表情だった
目はどこを見ているかよくわからないような目付きだった
また、黒目よりも白目の方が多かった


「お~い。おまえいつからそこにいたんだぁ~?」

監視員の1人がキウェインに近付いてきた
焦点の定まっていない、クスリのお世話になっているかのような目をしていた

「…ついさっき」

「はぁ~?なめてんのかぁ~?てめぇ、貧民のくせにいいもん着てんじゃねぇかよ~」

キウェインは嘲るように鼻で笑った


少年の手には鮮血の付いた短刀が握られていた
足元は滴り落ちる鮮血で赤く染まっていった

少年は彼らの元に、ゆっくりと向かって行った
表情、顔色1つ変えずに



「そうか…。そういうことか…」

暴行を受けていた脱出者に加え、監視員たちも死体となっていた

「…トリプル、ゼロ…」

キウェインは鮮血で染まった右手を見つめていた
瞬き1つしない、恐ろしく無表情な目付きだった