そこには死体となった両親の姿があった
死体には首がなかった
鋭利な刃物で切り取られていたようだった
幼いルミはただ立ち尽くすしかなかった
変わり果てた両親の姿を見せつけられて、完全に思考停止状態になっていたのだろう
「それ以上見ない方がいいぜ」
キウェインは、背後から目隠しをするように、ルミの両目を押さえた
「!?」
「何も言うなよ。死にたくなかったらな…」
キウェインは、ルミの喉近くに短刀を持ってきた
その表情は殺戮マシーンそのものだった
ルミは、その尋常でない殺気を感じたのか、小刻みに震えていた
「安心しな。大人しくオレの言うこと聞いてれば殺さねぇから」
「…」
ルミは震えが収まらないようだった
「ゆっくりでいい…。回れ右しな」
ルミは言われるがままに応じた
実際は回れ左になっていたが、ルミとキウェインが死体に対して背を向ける形になれば、問題なかったのだろう
キウェインはルミから目隠しを解いた
木々に囲まれた一本道と所々に電灯らしき物も見えた
「オレが短刀をしまったら、あの道をそのまま進んで行け。振り返るなよ…。いいな…」
キウェインは、ルミの喉の辺りにあった短刀を引っ込めた
ルミは、涙を流しながら一目散に走って行った
ルミを突き動かしていたものは、両親を殺された精神的ショックや悲しみ以上に、「殺されたくない」という本能だったに違いない