2017/09/06

■65

「なんか、いつもと違うね」

俺の隣には香織がいた
ちょうど行為後のアフターフォローをしようと思っていたところだった

「そうか?」

「うん…。上手く言えないけど、なんかね…」

確かに真奈美とあれだけ濃い一夜を過ごしてから、それほど日が経っていないのだから無理もない

ただ、そういったものを感じさせないようには意識したつもりだったが、かえって逆効果だったのだろうか?

「気のせいじゃないか?」

「う~ん…」

香織は明らかに何かを感じ取ってしまったようだった
女の勘は外れないと言われているが、全てを察知しているとは思えなかった
そう思いたくなかったと言った方がより正確かもしれないが…

「考えすぎは体に毒だぜ」

別に誤魔化すつもりもウソを押し通すつもりもなかった
なぜ、一歩間違えばそう受け取られかねないことを口走ったのかわからなかった

香織はずっと天井を眺めているようだった
俺に対してわだかまりが芽生えたような空気感があった

「ねえ…」

「ん?」

俺は香織を見たが、香織は俺を見なかった

「まだ、タカシ君の中に私はどれくらいいるの?」

香織は相変わらず、天井を眺めているような目をしていた
どこを見ているのかわからないような目だった

「どれくらいいるって感じた?」

どのように答えたとしても、結果は同じだと思った
ならば、俺から言う必要はない気がした

香織の表情は能面のように無表情だった
割と喜怒哀楽は自然と表に出る方なだけに、今回は珍しかった
香織は口を閉じたまま何も話そうとしなかった
何を思っているのか俺にもわからなかった

ほどなくして、香織の目に涙が溢れてきた
涙は次々と頬を伝い、シーツに小さな染みを作っていた
これがどの程度の大きさになるのだろうか…
香織の悲しみに比例することになるとは思うが…

「…違う、匂いがするんだよ…」

「え?」

よく意味がわからなかった

「今までしなかった…、違う女の匂いが…、するんだよ」

どうやら香織は全てを察しているようだった
それにしても、女の勘とは恐ろしいものだ
真奈美はこうなることを想定した上で、俺と体の関係を持ったのだろうか…

「…もう私たち、元には戻れないんだね…」

俺はどう答えていいのかわからなかった
確かに真奈美に対して、香織にはない魅力を感じてしまったのは事実だったし、否定をするつもりはない
しかし、悲しみに濡れる香織を目の当たりにしてしまうと、何とも言えない後味の悪さを感じざるを得なかった

香織は生まれたままの姿で、どこも隠さずに仰向けになっていたが、俺には抱くことも愛撫することはおろか、触れることも出来なかった
ただただ、香織の目から流れ続ける涙を眺めるしかなかった