2017/09/01

■60

空はすっかり夜の色になっており、星が輝いているのが見えた
何かの星座の形をしているようだったが、思い出せなかった

京王八王子駅に列車が入って来たようだった
俺は線路の通っているすぐそばの道を歩いていた
今この瞬間に地震や事故などで列車が脱線したら、と考えるとあまり気持ちのいいものではないが、この道は線路と同じ高さではないし、ガードも列車が見えないほどの高さなので、まず大丈夫だろう

無論、この道は俺が住んでいるマンションに通じているので通らざるを得ないのだが

マンションの入り口前に真奈美がいるのが見える
どうやらタバコを吸っているようだった
確かデニーズを出たときに俺とは反対側の方向に行ったはずだ
後をつけられていたのだろうか?

真奈美は俺に気付くと、悪戯っ子のようにニヤニヤし始めた
まるで、『あたしの悪戯を解決してみてよ。無理だと思うけど』と言っているようだった

「…何してんだ?」

「え?見りゃわかるでしょ~?」

「まあ、そうだな…」

どうやら俺は真奈美がこの場にいるという事実を受け入れられていないのだろうか?
今のセリフは明らかに脳が対応出来ていなかったとしか思えないような内容だった
思わず苦笑するしかなかった

「大丈夫だよ~。君の言いたいことはわかってるから」

備え付けの灰皿にタバコを捨てる真奈美

「そうか」

「とりあえず安心してよ。あたしは君と香織の関係を終わらせようとか、そういうことは全然考えてないからさ」

「ふ~ん…」

「まあ、信じる信じないは勝手だけどね。あたしはこの場所でタバコ吸いたかっただけだし」

真奈美には申し訳ないが、例え言っている内容が真実だったとしても、到底信じられなかった

「ねぇねぇ、ここって君の家~?」

真奈美の目は『ここが君の家だってことは調査済みだけどね』と言っているようだった

「聞くまでもなく知ってるみたいな目をしてるけど?」

「うん、知ってるよ。一応聞いてみただけ」

「香織の後をつけてたのか?」

「ほかの方法ってある?あったら教えてよ」

「さあ、俺はストーカーする趣味はないからわからないな」

真奈美の口元に不敵な笑みが浮かび、目付きは上目遣いになっていた

「君、面白いね」

「それはどうも」

真奈美の狙いは何だろうか?
俺を何かに誘い込んでいるのは明らかだったが、真意まではわからなかった
試しに乗ってみるのもまた一興かもしれない

「何エッチなこと考えてるのかな~?」

「俺は健全な男だからな」

「ふ~ん…」

真奈美はタバコに火を点けようとしたが、思い直したように火を消した

「いいよ。香織には内緒にしとくから…」

真奈美の目に妖しさが漂い始めてきた
どうやら予想通りの展開になりそうだ