久しぶりに大城に会うことになった
オールモストの話を聞いてからちょうど3ヶ月経っていた
場所はいつものデニーズだった
聞くところによると、直接紹介した人数が俺含めて6人になったようだった
そして、順調に売上げも伸ばしているということだった
確かにその言葉にウソはないようだ
大城の物腰や醸し出されるオーラがそれを物語っていた
無論俺は動いていなかったが、大城曰く全く問題ないとのことだった
直接紹介の残り5人の動きが尋常でないらしいのだ
もうネットワークビジネスだけで生活できるようになったのだろうか?
「いや、まだだ。でも、今月は10万ぐらい行きそうなんだ。結構デカイぜ」
確かに普段の仕事での収入が20万ほどであれば、併せると30万になる
「俺は欲しいもんいっぱいあるしな。手に入れるためには金が必要だからよ」
「確かにそうだな…」
「そういや、香織ちゃんとはどうよ?順調か?近いうちに出来ちゃった…なんてことがあったりするとか?」
「いや、それはないな」
「まあ、お前だったら絶対避妊ミスったりしなさそうだもんな」
「でも、外されそうになったことは何度もあるぜ。しかも、いつも俺の理性が飛ぶ一歩手前だから、油断出来やしない」
「あれだな。香織ちゃん結構マジだな。こりゃ時間の問題じゃね?」
「そうかもな…。でも、俺はまだ結婚する気はないな」
「今はみんな金ねえもんな。自分1人だけだったらなんとかなるけどよ」
香織と一緒になること自体に抵抗は感じない
その一歩を踏み出せないのは経済的な理由もあるが、よく考えてみるとほかの理由も薄々ある気がしていた
自問自答してみる必要がありそうだ
「あれぇ~。2人で仲良く何やってんの~?」
聞き覚えのある締まりのない声とともに真奈美がやって来た
今回は原色主体の服装ではなく、茶系が主体だった
髪の色合いがより明るくなっており、髪型もアシンメトリーになっていた
前髪は左目が隠れるぐらいの長さで、どことなく大人な色香が漂っていた
「ABCやってるようには見えねえだろ?」
大城の言葉には明らかに棘があった
「まあね~」
真奈美は全く意に介していないようだった
基本的に他人に何と思われても気にすることのないタイプなのだろう
「お?あたし好みのイケメン発見~♪」
俺の座っている左側には多少なりともスペースがあったので、そこに真奈美が割り込むように座ってきた
きつめで甘ったるい香りがした
動物的で官能的な匂いだった
真奈美はデニムのミニスカートに膝が隠れるほどの長さの黒いレザーブーツを履いていた
ミニスカートは超を付けても差し支えないほど短かく、そこからスラリと伸びる両足は、付けている香水の香りと相まって香織とはまた違った妖しさや野生的な美しさがあった
きっと数多くの男たちを手玉に取って来たことだろう
「どこ見てんの~?」
俺の視線に気付いたようだ
真奈美の口元は笑っていたが、目は挑発しているような目だった
「オラ。彼女持ちの男を何誑かそうとしてんだ。チビッ子」
「チビじゃないも~ん。それに誑かすだなんて人聞き悪~い」
真奈美は一体何をしに来たのだろうか?
「てか俺らに近付いても何も出ねえぞ?」
「んなことわかってるし~。ただ見かけたから来ただけだも~ん」
「あっそ」
どうやらウソではなさそうだ
「ねぇねぇ。イケメン君…」
真奈美の目がからかうような目から急に眼光が鋭くなった
大城も真奈美の異変に気付いたようだったが、敢えて何も言わなかった
「香織のこと大事にしてる~?」
「と言うと?」
質問の意図がよくわからなかった
「ん?別に深い意味はないよ。香織と最近どうなのかなって思っただけ」
「まあ、普通にラブラブかな」
「ふ~ん…」
真奈美の目には疑うような雰囲気が漂っていた
俺はウソをついたつもりはなかったが…
「おいおい姉ちゃんよ。何疑ってんだよ。こいつが女を泣かすような男に見えるか?」
「べっつに~」
確かに俺は香織を満たしきれてはいないかもしれなかった
声や表情にそれを感じさせるサインが出てしまっていたのだろうか?
とりあえず真奈美は大城とのやり取りを楽しんでいるようだった
こうしてみると、この2人は意外とお似合いなのかもしれない