小松は苛立ったように電話を切る
「あれぇ~。小松のおじさんじゃん。何してんの?」
小松を見上げるようにする真奈美
小松はチラリと見るだけで、何も言わなかった
「何その態度~。相変わらずカワイクないなぁ~」
「何か用か?」
小松は真奈美と目を合わせようとしなかった
「ん~。別に~」
心なしか真奈美の表情はにやけていた
「用がねぇなら消えろよ」
小松は明らかに虫の居所が悪いようだった
「君に命令される筋合いはないも~ん。どしたの?なんか、彼女に振られちゃったみたいな顔してるけど?」
「…」
「あ、もしかして香織のこと?きっと今頃あのイケメンとエッチしてるんだろうねぇ~。ひょっとして悔しいの?そりゃそうだよね~。自分の方が結果出してるしとか、自分の方が年収も上だしとか思ってんでしょ~?」
「…それが何か?」
「あれぇ~。今の間は何かなぁ~。あまりにも当たりすぎてたから一瞬何も言えなかったんでしょ?」
「だから?」
「ん?それだけ」
真奈美は小松の隣に立ち、腕を掴む
「何だよ?」
「彼氏がね。新宿でほかの女とラブホに入ってくの見ちゃった…。君も今のあたしと同じ気持ちのはずだよ」
「…お前なんかと一緒にすんじゃねぇよ」
小松は真奈美を振り払おうとはしなかった
「相変わらず嘘つくの下手だね。まあ、そこが君らしいんだけどね~」
「うるせえ…」
「浮気って、やっぱ伝わっちゃうんだね~。自分がすると相手もするもんなんだね。それで結局誰もいなくなっちゃう…」
「…」
「まだ奥さんがいるからとか思ってんでしょ~?わかんないよ~。ただ知らないだけってこともあるしね。結局カレカノとか夫婦とか以前に男と女だからさ。わかるでしょ~?」
「…まあ、それに関しては否定出来ないかもな」
「女は金と社会的地位さえあれば手なずけられるってもんじゃないってことだよね~」
「お前だって人のこと言えないだろ?どうせ男はバカだから自分の中の女を使えば落とすのなんて簡単とか思ってんだろ?」
「…否定はしないよ。てか、こうやって君とくっ付いてると、どういうわけか無性にあたしの中の女が疼くんだよね」
「俺の何が目的なんだ?金か?」
「いや、違うみたい…。なんだろう…。なんか、今この場で君に脱がされたいってあたしの中の女が言ってる感じ…」
「…そうか。悪いが、俺はこんな人目につき過ぎるところで女を裸にする趣味はねえ。場所変えるぞ」
「いいよ~」