2017/08/20

■48

俺の目の前には一糸纏わぬ姿の香織がいた
無論俺も生まれたままの姿だった

今この空間の中で2人を妨げるものは何もない
強いて言うなら羞恥心だろうか?

「…あっためて」

「寒い?」

俺は香織の手を握り、額をくっ付け合った

「…大丈夫」

香織は上目遣い気味に俺を見つめた
完全に性的に興奮している目だった

「…キスして」

甘えるような、ねだるような何とも言えない声だった
そのまま口付けしようかと思ったが

「どんなキスがいい?」

直感的にそのままキスするのは面白くないと思った

「…どんなキスしてくれるの?」

「それはしてからのお楽しみ」

俺は香織の唇を音が出るほど激しく吸い、舌を絡め合った
香織は俺の背中に手を回してきた
心なしか舌の絡め方もより艶かしくなってきた気がした
俺も香織の背中と腰に手を回し、弄った

「くすぐったい…」

香織は俺の唇から離れ、肩で息をしていた
体は熱を帯びていた
俺は香織のポニーテールを解いた

「まだ寒い?」

首を横に振る香織

「…タカシ君は?」

「寒さなんてもうどっかに行ったね」

「そう…。よかった…」

香織は俺の手を握り締めながら、布団の上に体育座りをする
俺も合わせてしゃがみ、掌を合わせるように手を繋ぐ

足を曲げたままゆっくり仰向けになる香織
俺はそのまま香織の中に入った
柔らかく、温かった

「…気持ちいい…」

香織の声はかすれており、消え入りそうだった
目を閉じて、あらゆる感覚を総動員して俺を受け止めようとしているようだった
体も小刻みに震え始めていた

俺はゆっくり腰を上下に動かした
香織の体がそれに呼応する形で小刻みに震え出す
繋いでいた手を俺の腰に回してきた
少しくすぐったかった

俺も手を香織の背中に回し、徐々に動きを早くしていった
香織は曲げていた足を伸ばしたり、元に戻したり、閉じたり、開いたりを繰り返していた
息遣いも徐々に荒くなり、俺の腰に回している手にも力が入ってきた

「……して」

香織が何かを言っているようだったが、よく聞き取れなかった

「え?」

「なんで止めちゃうの? 気持ちいいのに…」

基本的に男は1つのことに集中してしまうと、ほかのことは出来ないようになっているようだ
俺も例外ではない

「何か言ってなかった? よく聞き取れなかったから」

「…もっと、激しくしてほしいな…」

「ああ。痛かったら言ってよ」

「うん…。大丈夫…」

俺はより深く、より早く、香織の中に入ったり出たりを繰り返した
香織は足を曲げたまま、しがみ付くような形で俺の肩甲骨あたりを掴んでいた
足は完全に開脚の状態になっていた

香織の息遣いは相当荒く、言葉にならないかすれ声も発し始めていた
俺の背中に回している手にもより力がこもり、体の密着度も高くなってきた

「……カシ…。は……。い……。あ……。……きそう」

どうやら絶頂が近付いて来ているようだった
香織の声はかすれていたが、艶っぽさは増していく一方だった
とても演技で出せるような声ではなかった

俺も次第に思考能力と体の感覚がなくなっていくのを感じた
やはり、毎日椅子と友達になるような仕事をしているからだろうか?
だとしたら情けない話だ
下手をすると香織が絶頂を迎える前に俺が果ててしまう可能性も高くなってきた

「あ……。い……。い…。……く」

どうやら香織は到達したようだった
小刻みに震える体と脱力していく感触が俺の背中に回している手と密着させている肌、そして下半身から伝わって来た
曲げていた足も伸ばしていた
それとほぼ同時に俺も体の力が抜け、崩れ落ちるような感覚とともに逝ってしまった

香織は状況を察したのか、肩で息をしながらも優しく抱きしめてくれた
おそらく香織も腕に力が入らないはずだ

俺は完全に思考が停止しており、体も動かなくなっていた
もはや感知できるものは香織の柔らかく温かい体と下半身から流れ出ていると思われる冷たい液体だけだった

「…大丈夫?何か…急に力が抜けた…みたいになったけど…」

耳元で、搾り出すような香織の声が聞こえてきた

「ああ…。たぶん…」

「…体、動かない…。こんなの初めて…」

「そうか…」

「でも…。何か…。すごく…」

「いい?」

「うん…。そんな感じ…」

何を言っていいかわからなかった
何も言葉が出て来なかった

「ねぇ…」

「ん?」

「何か喋って…」

「何かって、何を喋ればいい?」

「何でもいいよ…。声が聞きたい…」

「俺の?」

「うん…」

やはり言葉は出て来なかった
香織の温もりが感じられるだけでよかった

「…一休みする?」

「そうだな…」

香織は頬を摺り寄せ、伸ばしていた足を絡ませてきた
柔らかい抱擁だった