2017/08/18

■46

顔をしかめながら電話をしている真奈美
呼び出し音が鳴るばかり

携帯電話の画面には『マコト』の文字が点滅している
溜息をつきながら電話を切る



俺は部屋の鍵を開け、香織を招き入れた
1人暮らしをするようになってちょうど3年目ぐらいだろうか
この部屋に女性を連れてくるのは初めてだった

「男の人の部屋じゃないみたい。あ、もしかして布団敷きっ放し?」

「まさか、こうなることは想定外だったからね」

「ベッドにしなかったんだ?」

「部屋を広く使いたかったしね」

「ふ~ん…」

ベランダまで歩いていく香織

「へえ…。眺めは悪くないね。あ、富士山も見える」

香織は楽しんでいるようだった
基本的に俺は物を持つのがあまり好きではない
そのため、部屋が整然としているように見えるのだろう

「ホント、天気いいね…」

香織の声が甘さを帯び始めて来た
俺はコートを脱ぎ、香織の背後に立った

「…あったかい」

香織は俺を振り返らず、誰に言うともなく言った

「太陽のこと?」

俺はまだ香織の体には触れていなかった

「うん…」

俺は香織を背後から抱きしめた
香織も俺の手を握ってきた
温かった…

「手、冷たいね…。さっき、ずっと手繋いでたのに…」

「小さいときから寒くなると勝手に冷たくなるんだ」

「そうなんだ…。今はどう?」

「大分温まってきたよ」

「良かった…」

俺は香織のコートのボタンを外そうとした

「…カーテン閉めてもいい?」

「恥ずかしい?」

「ちょっとね…」

カーテンと言っても、入居したときに初期装備だった紙素材のものだった
あくまで臨時的なものというものだった

「タカシ君、めんどくさがり?」

「まあ、適当なとこは適当だね」

「部屋を見たとき、そうだと思った」

カーテンを閉め、俺の方に向き直る香織
太陽の光とカーテンの色が合わさって香織の顔色が小麦色になっていた

「キレイだね…」

「ありがと…」

俺は香織のコートを脱がした
香織は黒いハイネックセーターを着ていた
コートに隠れていたボディーラインはやはり美しかった