2017/08/16

■44

俺はいつの間にか眠ってしまっていたようだ
電車は格好の睡眠場所でもある

香織は俺の肩に顔を乗せて眠っていた
俺も香織に体を預けて眠っていたので、お互い様と言ったところか…

傍から見れば恋人同士に見えただろう
真奈美の言っていたことは嘘ではなかったようだし、俺も薄々感じていたことでもあった

ちょうど高幡不動駅だった
どうやら俺たちが乗っている車両の乗客は2人だけのようだ

香織は完全に熟睡しているようだった
全体重を俺に預けており、寝息も聞こえた
付けている香水は相変わらずいい香りだった

俺は香織の唇にキスをしたくなる衝動を堪えるのが難しくなってきた
おそらくリップグロスの味がするのは明らかだったが、それでも構わなかった

香織の寝顔はかわいくもあり、何より美しかった
今まで何人の男がその唇を吸ってきたのだろうか?
香織にとっては俺もそのうちの一人になるのだろうが、それをキッカケとして、一生を共にすることになるかどうかは正直わからない

香織はうっすらと目を開け始めた
俺はまさに香織に口づけをしようとしていたところだった
香織は驚く素振りを全く見せず、待ってましたと言わんばかりに微笑んだ

俺はそのまま軽く香織の唇に触れた
目を閉じる香織

やはりリップグロスの味がした
乗客がほかにいないとは言え、一応公共の場なので、この続きは八王子に着いてからにしようかと考えていた

俺は香織の唇から離れようとした
それを察したかどうか定かではないが、香織は俺の肩を掴み、さらに唇を重ね合わせてきた
こうなってしまうと、俺も悲しき男の性を抑えるのが極めて難しくなってしまう
ちょうど電車も発車し始めていた

俺も香織の背中に手を回し始めていた
誰かが見ていようと関係なかった
もはや完全に自分たちの世界に入っていた

見えているのは香織の気持ちよさそうな顔だけだった
あとはひたすら内側から湧き上がる感情と唇の感触に身を委ねるだけだった

香織も俺の背中に手を回し始めていた
まるで、そのまま次の段階に進んでしまいそうな勢いだったが、俺は端に座っていたので、その心配は無用だったが…

香織はひたすら俺の唇を吸っていた
おそらく京王八王子駅に着くまでこのままの状態が続くのはほぼ確実だった

2人だけしかいない電車の中でのラブシーンというのも案外悪くないかもしれない