小松は八王子の東急スクエア最上階にあるスカイラウンジにいた
窓際の席で顔をしかめながらタバコを吸っていた
テーブルには無記入のオールモスト社の会員登録用紙が置かれていた
携帯電話が鳴る
真奈美からメールが来たようだった
『香織が男に走っちゃったよ~。信じる信じないは勝手だけど』
添付ファイルは香織と明神が並んで歩いている後姿を撮った写真だった
心なしか手を繋いでいるようにも見えた
「…」
『もしもし…』
大城の眠そうな声
「今大丈夫か?」
『ああ…。どうかしたか?』
「今日さ。明神さんと香織ちゃんと一緒にフューチャーズに行ったんだよな?」
『ああ。そうだけど…。それが何か?』
「明神さんと香織ちゃんてどんな感じだった?」
『いや、いつも通りだったけどな。あの二人がどうかしたか?』
「そうか。ならいいんだが…」
『あれか?あの2人がくっ付くことを恐れてんのか?』
「恐れてるってほどじゃないけど、ちょっと気になってな。さっきも妙な垂れ込みがあったしな」
『へえ…。真奈美か?』
「ああ、そうなんだよ。なんか香織ちゃんと明神さんが手繋いでる写真を送って来たんだよ」
『でもよ。男と女なんだし、そういうのは多少はしょうがなくね?別にそれで動かなくなるってわけでもねえだろうし』
「いや、それが動かなくなることが圧倒的に多いんだ。これはほぼ100%と言ってもいいくらいなんだ」
『そうか?考えすぎなんじゃね?むしろ好き同士がくっ付くことで2人3脚で相乗効果が生まれそうだけどな』
「いや。俺も今まで色んなヤツ見てきたけど、それが驚くほど共倒れで終わってるんだ。動かなくなるってことは給料が入って来なくなるわけよ」
『まあ、確かにそうだけどよ…』
「マジかよって感じだぜ。明神さんはまだ日が浅いし、ダウンもいないからそれほどでもないけど、香織ちゃんは痛いって」
『でも、まだくっ付いたかどうかわかんねえだろ?それに真奈美の情報なんて当てになるか怪しいもんだぜ』
「真奈美は意外とこういう情報は当たるんだよな。今日さっきまで香織ちゃんのダウンの子をマケしたんだけど、珍しく決まんなかったし。ヤバイって、マジで」
『てか決めつけすぎるには情報が少なすぎると思うけどな』
「ああ、まあそうだな。とりあえず恋愛はヤバイ、マジで。何かしら手を打たないと」
『でもよ。そういうのって止めようがねえだろ?どうしようもないことだしさ。確かにダウンが減るってことは自分の取り分にモロ影響出るってのはわかるけどよ』
「何とかするよ。とにかくヤバイ…。とりあえずありがとう。じゃあ、また」