2017/08/08

■36

午後2時

俺は近くの自販機で買ったホットココアを飲むことにした
ちょうど昼休憩の時間だったが、今日は食欲が湧かない

朝一取った電話がクレーム案件で、ついさっきまで揉めに揉めた挙句に解決しないどころか『またあとで電話する』で終わってしまった

一体何時間話せば気が済むのだろうか?
しかも、言っていることは支離滅裂にも関わらず、俺の言うことに関しては揚げ足を取るように突っ込みを入れてくるのだからタチが悪い

どんな仕事をしても妙な思考の持ち主を相手しなければいけないのはやむを得ないとは思うが、金を稼いでいるとは言え、関わりたくないというのが本音だ

携帯電話が鳴る
大城からだった

いつも思うことだが、大城はメールが苦手なのだろうか?
何かあると通話料がかかるのを承知の上かどうかわからないほど電話を架けてくる

「もしもし」

『おう。俺だ。日曜なんだけどさ。ていうか明日だな。始まんのが11時だから、10時半ぐらいに中野駅の改札に来てくれ』

大城の声に混じって自動車の通る音が聞こえてくる

「ああ。わかった。今日は仕事なのか?」

『そうなんだよ。休日出勤ってやつだぜ。超最悪。つってもついさっきまでゲーセンで遊んでたけどな』

「なるほどな」

『今日はどうせ直帰だろうから。帰って寝るかな』

「いいんじゃないか? たまには」

『おっとキャッチが入ってるな。どうせ会社からだろうけどよ。じゃあ、また明日な』

「ああ。お疲れ」

ちょうどホットココアがぬるくなっていた
買った直後は熱過ぎるぐらいなので、これでやっと飲めそうだ

恥ずかしい話だが、俺は昔から猫舌で熱いものがとにかく苦手なのだ
特に小さいときに舌を火傷して以来トラウマのようになってしまったかもしれない

基本的に過去にはあまり拘らない方だが、なぜかふとしたキッカケで嫌な目に遭ったことや精神的に傷ついたことは思い出したりしてしまう
それほど負のパワーというものは強いもののようだ

実際、楽しかったことや面白かったことよりもつまらなかったことや嫌だったことの方が記憶に残りやすかったりする