2017/08/06

■34

9時35分

俺はコールセンターのセキュリティゲートに入館証をかざして通り抜ける
朝礼が45分にあり、それまでに専用PCに自分のIDを打ち込む作業があり、ギリギリになると一時的にシステムダウンすることもあってか、極力早めに出勤するようにしている

こう書くと、『なんだ。結構真面目なんじゃん』と仰る方もいそうだが、ただ単に昔から何をするにも常に余裕を持って行動をしたいだけなのだ
そして、何より遅刻ギリギリの人間が醸し出すあの殺気だった必死さが好きではないというのが1番の理由だ

この時間はオペレーターはまだ誰もいない
スーパーバイザーは奥の方で集まって朝礼をやっているようだ

俺は専用PCに自分のIDを打ち込み、今日は窓際の席に座ることにした

コールセンターはビルの25階にあるため、眺めがいい
電話が鳴らない時などの暇なときは外を眺めるのが1番だ
1日中PCの画面ばかり見ているとドライアイや視力低下の元だし、一説によると緑でなくても、遠くを見ることでも多少なりとも対策出来るようなのだ

現代人は何かと生きるのが難しい時代になっている
自分で出来る範囲で自分の身を守る術を見につけておいても損はないだろう

とは言え、日本はもう世界一安全な国ではないし、科学技術の進歩によって確実に便利な世の中になったのは事実だが、その反面人間の心はより荒んでしまったり、病んでしまったりしているのもまた事実だ

その結果以前では考えにくいような犯罪、とかく犯行に及んだ人間の脳細胞を見てみたくなるような内容のものが増えて来ている
交通事故で死ぬ確率よりも他人に殺される確率の方が高くなっているという説もあるくらいだ

俺は業務用のPCを立ち上げ、指紋認証でログインしようとしていたが、なかなか認識されなかった

スーパーバイザーの朝礼は終わっているようだった
ちょうど亀山スーパーバイザーが俺が出勤していることに気付いたようで、こちらにやってくる
昨日のことだろうか?

「明神君さ。朝礼終わったら俺のとこに来て」

「昨日のことすか?」

「そうそう。察しがいいじゃん」

「まあ、昔から上が何か言ってくるときはこっちがやらかしたときぐらいしかないすからね」

「俺らはそれが仕事でもあるからね。でも、たいしたことないよ。それに悪いことばっかじゃなくて、いい知らせもある」

「そうなんすか?」

「とりあえず朝礼終わったらよろしく」

俺は指紋認証をひたすら試していたが、やっとログイン出来た
特に指が乾燥していたわけではないので、センサー部分を掃除した方がいいかもしれない