電車はちょうど北野駅から発車しようとしていた
車内は1つの席に1人しか座っていないぐらい人が少なかった
小松と香織が並んで座っていた
「そうなんだ…。じゃあ、もう真奈美は来ないんだね」
香織の顔に笑顔はなかった
「ああ。俺は今まで色んなヤツを見てきたからわかるんだ。真奈美はもういないものとして考えた方がいいね。確かにショックかもしれないけど、誰よりも残念なのは俺だよ。2人とも俺の直紹介だからね」
「そうだよね…」
「救いなのは香織ちゃんが頑張って作ってきたグループが元気だってことだね。今かなりいい感じだしね」
「そうだね…。みんな私を頼りにしてるもんね。これぐらいのことでへこんでる場合じゃないよね」
「そうだね。くれぐれにもさっき話したことはみんなには言わないようにね。グループは生き物だし、こういうことはみんなの士気に影響することだから」
「…うん」
笑顔を見せる香織
終点の京王八王子に着いたことを知らせる車内アナウンスが鳴り響く
「ねえ…。今日は?」
上目遣いで小松を見て、手に触れる香織
「悪いな。今日はかみさんと約束してんだ。ここんとこフォローとかマケとかで忙しかったからね」
小松は香織を見ることはなかった
「…そう」
香織から笑顔が消えた