2017/07/21

■18

今回のセミナー会場はエレベーターを降りてすぐ左の部屋で、中を見た限りでは少なく見積もっても40人は入れるような広さだった

照明は明るめで、内装は壁や天井、床は全て黄土色だった
机はいかにも大学の教室にありそうな長机とパイプイスだった
まだ誰も来ていないようで、入ってすぐ目の前にある長机にコーチのレディースバックが置かれていた

「なんでぇ。まだ誰も来てねえのか」

「でも、ここにコーチがあるってことはもう誰かしらいるんじゃないか?」

「ああ。このバックは香織ちゃんかな」

「香織ちゃん?」

「メンバーの子だ」

「あ、大城君お疲れ様」

シャネルの財布を片手に持った石井香織が入ってくる

「おう。お疲れ」

「こんばんは」

香織は俺を見ても特に警戒する素振りもなく、かと言って愛想笑いを浮かべるわけでもなく、自然な笑みを浮かべていた

割と目鼻立ちのハッキリした顔立ちでシャープな印象だったが、きつめな感じではなく、どちらかと言えば柔和で親しみやすい感じだった

身長はおそらく165センチぐらいだろう
髪型はセミロング丈の栗色の茶髪でストレートだった
服装は黒と白のチェック柄のコートにデニムのミニスカート、黒のタイツに茶色のロングブーツというものだった

「初めまして」

「もしかして。明神さんですか?」

「そうですが?」

「やっぱり。大城君が新しい人を連れてくるっていう話があったんですよ。そっかぁ」

屈託なく楽しそうに話す香織
その笑顔には人を引き付けるものがあった

「ていうかさ。みんな来るの遅くね?」

「そうだね。そろそろ来ると思うけどね。あ、そうだ。受付受付」

「1000円だっけか?」

「うん。名前も書いといて」

「ほいよ」

「職業のとこ何て書いたの? 英語で書かれたら読めないじゃん」

「別にいいじゃんよ。どうせ今日はメンバー対象だろ?」

「そうだけどさぁ」

「さてとどこ座ろうかね」

最前列の長机にポーターのビジネスバックを置く大城

「名前と職業と紹介者の名前を書いてもらってるんですよ」

大城のものを参考にしながら俺も書き始める

どうやらさっき香織が読めないと言っていた英語はLapis lazuliだった
紹介者の欄には小松と書かれていた
小松さんから直接紹介されたということだろうか

ちなみに俺は紹介者欄は大城で職業欄は形式上ではあるが、社員に扱いになっているため会社員と書いておいた

大城は椅子の背にもたれかかりながら相変わらず携帯電話を何やら操作していた

「ベストポジションゲットしといたぜ」

「最前列か。なんか落ち着かないな」

「まあまあ、慣れるって」

ゾロゾロとメンバーと思われる連中が入って来ていた
不思議と20代ばかりのような印象だった

男女比は4:6ぐらいだろうか?
心なしか女性の方が多い気がした

その列を避けて小松が入って来た
心なしか疲れているような雰囲気だった
いくら小松といえど人間だから調子のいいときもあれば悪いときもあるだろう

小松はそのまま後ろの方に早足で歩いて行った

列が途切れたのを見計らって香織が入り口のドアを閉める
よく見るとホワイトボードはもちろんのこと黒板もセッティングされており、準備は万端といった感じのようだ
そして、ホワイトボードの前に教壇のようなものも置かれている

「そろそろ始まるぜ」

大城は携帯電話をしまい、A4サイズのノートを取り出す

「筆記用具持ってきたろ?」

「ああ。もちろん」

俺も無印良品で買ったトートバックからノートを取り出す

「B5かよ。無印とはらしくねえな」

「まあ、コンパクト好きなんでな」

基本的に大きいものはあまり好きではない
普段も仕事柄手ぶらで出勤することが多い

何しろ自分自身がコールセンターにいるのが第一なのだし、仕事中は全くと言っていいほど紙媒体を使わない
普段も携帯電話のスケジュール機能で十分に管理出来てしまう