待ち合わせ場所のアルタ裏には既に大城がいた
俺は客対応が長引いてしまったため、15分ほど遅れてしまった
営業時間終了1分前に電話があり、しかも完全に他部署の案件で、転送出来ないことに散々ごねられたのだからたまったものではない
大城は近くの自販機で買ったと思われるホットココアを飲んでいた
「おう。お疲れ。大変だったみたいだな」
「まあな。電話するんだったらもっと時間があるときに架けて来いよって感じだったぜ」
「なるほどな。基本客主体だもんな。よくやってられるな。結構長いんじゃね?」
「ああ。気付いたらまる3年だ」
「そりゃ長いわ。俺は営業やり始めてやっと1年経つかどうかだぜ」
「そんなもんだっけか?」
「ああ。俺は飽きっぽい性格だしな」
携帯電話を見る大城
「おっと。そろそろ行こうぜ。新宿文化センターはこっから10分ぐらいかかるんだわ」
「ああ」
「とりあえず靖国通りに出っから」
俺と大城は靖国通りの歌舞伎町沿いを歩いていた
新宿という街はどこに行っても人が多い気がするのは俺だけだろうか?
大城は落ち着きなく携帯電話を出しては見て、しまいを繰り返していた
時間をチェックしているのだろう
よく見ると大城は腕時計をしていなかった
「そういえば、前から時計してなかったっけ?」
「ああ。なんか好きになれねえんだわ。縛られてる気するし」
「でも、いちいちケータイ取り出すの面倒臭くないか?」
「いや、むしろちゃんとあるか確認出来るからいいぜ」
「なるほど」
目の前に丸井インテリア館と書かれたビルが見えてきた
確か昨日会場の場所を調べてみると、このビルの前にある通りを左折して直進すると、右側に日清食品と書かれたビルが見えてくるはずだ
「え~と。左に神社があるな。このまま左だ」
確かに大城の言うとおり神社があった
新宿のゴミゴミした街と不釣合いなイメージがあったが、この神社は不思議と何年も前からこの場所にあったかのような佇まいが感じられた
「右側に日清が見えたらもうすぐだ」
「だよな。確か近くに学校もあったよな」
「そうそう。来たことあったのか?」
「いや、一応場所調べてはいたんだ」
「なるほどな。あの辺は割りと閑静な住宅地的な感じなんだぜ」
右側に日清食品のビルが見えてきた
確かに新宿では珍しい落ち着いた雰囲気がその一角にはあった
この辺に住むのも悪くないかもしれない