2017/07/03

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翌日、行きつけのデニーズ20時にその大城曰くビジネスオーナーで生活をしている普通に生きていたらまず会えないという人物がやってきた

その人物は小松佳孝という男で、歳はなんと俺や大城と同い年の26歳だった

小松は細身の長身で身長は180はあるだろう
髪型は黒髪のオールバックで、縦のホワイトストライプが入った黒いスーツを着ており、そのまま旅行にでも行けそうなルイヴィトンのボストンバックを持っていた

一見するとホストのような格好だったが、オーラが半端ではなく、とても同い年には見えなかった

確かに大城の言っていたことも嘘ではないと思った

「はじめまして。小松です」

ジバンシイの名刺入れから取り出された名刺は透明で、小松のフルネームと住所や連絡先などいわゆる個人情報が書かれていた

そして、左上に英語でTOPAZと書かれていた
あの、宝石トパーズだろうか?

「小松さん。飲み物どうしますか?」

「そうだな。今日はアイスティーで」

飲み物を取りに行く大城
小松はどこでどういったことをやってここまでのオーラを身にまとうようになったのだろうか?それにしても高そうなものばかり身に付けているようだった

「チャンスは誰にでもありますよ。要はそれに気付くか気付かないかですね。僕も4年前までは今着ているようなものには全く縁がないような生活してましたから」

小松は人の心が読めるのだろうか?
今の発言は完全に俺の腹の内を見透かしたかのようだった

「驚いた顔をしてますよ。確かに僕は仲間からも言われますね。小松は読心術が使えるって。大城君にも同じように言われましたね」

「あいつ、いや大城とはいつごろからのお知り合いなんですか?」

「実は小学か中学が同じだったみたいですね。でも、当時はほとんど面識はなかったんですよ。ここ1ヶ月ぐらいからはよく会うようになりましたね」

大城が飲み物を持ってやってきた
アイスティー1つにコーラが2つ

「てことはお前も稼いでんの?」

「まあ、小松さんほどじゃねぇけどな」

「大城君はなかなかのやり手ですよ。これから半年以内にもっと凄くなると思いますね」

俺は耳を疑った
何かにつけてすぐにイチャモンを付けることが特技になっていて、俺に負けず劣らず怠け者で、口先だけで生きているような大城が?

「人は些細なキッカケがあれば変りますよ。僕もそうでしたし、大城君は何よりも吸収が早い。僕の言うことを誰よりも形にするのが早い」

まさか事前に小松と口裏を合わせているのだろうか?

「いや、俺は1ヶ月前のあの日から生まれ変わったんだ。ビジネスオーナーになって20代のうちに引退生活をするさ。現に小松さんがそれに近い生活してるしな。ですよね?」

「まあ、まだ引退とまで行かないですけど。一応妻子持ちな身なんで、家族を養うぐらいの金額は稼いでますね」

どうやら嘘ではなさそうだ
一体どんな凄い話なのかますます聞いてみたくなった

「明神さんは今回の話を大城君からどの辺まで聞いてますか?」

「ビジネスオーナーになれる話があるって聞いてましたね」

「なるほど…。てことは4つのステージも聞いてるってことですね?」

「そうですね」

「わかりました。じゃあ、これを使おうかな」

ルイヴィトンのボストンバックからノートパソコンを取り出す小松
メーカーはNECでモニターのサイズは15インチぐらいだった

おそらく持ち運び用ではなく、デスクトップ的な使い方をしていることは容易に想像が付いた

「パワーポイントの資料があるんですよ。立ち上がるまでちょっと時間がかかりますけど」

おそらく常駐ソフトがたくさん入っているはずだ
完全にデスクトップの画面が出るまで5分ぐらいかかるだろう

「僕あんまりパソコンとか詳しくないんですよ。最近やっとワード・エクセルが少し使えるようになりましたけど」

「小松さん結構アナログ人間ですよね」

「まあな。お、出てきましたね」

アイコンがたくさん並んだデスクトップ画面の中にあるパワーポイント資料をクリックする小松

資料によれば今回のビジネスオーナーになることが出来る手段は通称ネットワークビジネスと呼ばれる手法のようだ

別名マルチレベルマーケティングとも呼ばれるようで、よく比較されるネズミ講や悪徳マルチとの相違点は、商品が存在することと耐久品や粗悪品ではないとのこと

小松や大城はオールモスト社というところでディストリビューターとして活動しているようだ

どうも商品を売ったりする営業や販売ではなく、自分たちが広告塔となってオールモスト社とユーザーを繋ぎ、そのCM料として収入を得るということらしい

取り扱い商品は健康食品や日常消耗品のため、毎月ほぼ確実にリピートするため権利収入になりやすいということのようだ

ちなみに権利収入を得るための条件としては毎月商品の定期購入が必要とのことで、小松や大城も毎月購入しているそうだ

「でも、購入額は毎月2万で済みますよ。普通に商売やるんだったらもっと費用が必要ですよね? コンビニやるんだったら500万は必要だし、飲食だったら1000万ぐらい、美容室だったら1500万ぐらいだし、ショットバーとかだったら3000万とかになりますしね」

確かに小松の言うとおりだった
非常に魅力的な話であることは確かなようだが、現時点で完全に小松のことは信じることは出来なかった

胡散臭いというわけではないが、この手段に果たして自分の人生を賭けても大丈夫だろうか?という不安が少なからずあった

しかし、その反面上手くいったときの自分がどのようになっているかということもイメージし始めていた

「なあ、明神。俺はやっと希望の光を見つけたんだ。今のこのマンネリ化した生活から脱出出来るかもしれないんだぜ。お前も言ってたろ?こんな生活には飽き飽きしてるって」

「まあ、そりゃそうだけど…」

「一緒にやろうぜ。それで、この砂漠のように不毛な世界から脱出しようぜ。チャンスの女神は何度も来ないし、ヤツは前髪しかないから逃がすと次はないしな」

小松は黙って俺たちのやり取りを見守っているようだった
まるでポーカーフェイスという言葉は彼のためにあるかのようだった
一体この男はどんなことをしてきたのだろうか?

「…そうだな。…わかった。やります」

「そう言うと思ってたぜ。小松さんあれをお願いします」

「まあ、そうあせんなって」

何やら契約書のようなものを取り出す小松

名前を書く欄や口座番号を書く欄があった
収入が発生したときの振込先になるのだろう

「じゃあ、明神さん。サクッと書いちゃってくれ」

どうやらそれほど害のあるものでもなさそうだ
あの大城がここまで本気になるものがどんなものか興味もあった
何よりも小松の醸し出すオーラの裏側も見てみたいというのもあった