2017/12/31

63

通信教育はそれなりに面白かった

テーマが決められていて、それに沿ったショートストーリー的なものを書いていく形式

全部で5~6作ほど書いた

特にスクーリングすることはなく、その都度書いたものを所定の場所に郵送し、その度に講師の方から何かしらコメントをもらった

その際に養成所的なものがあることを知った

無論、「来ないか?」的なことは言われた

おそらく、そのコメントしていた人物もその養成所の人間なのだろう


個人的にはもっとこの分野を極めたいと考えていたので、引き続き養成所に通うことに決めた

2017/12/30

62

基本的にオレは書籍にしても新聞にしても、活字は全くと言ってもいいほど読まない
よほど興味がない限りは読むと眠くなってしまう

あるとき何の気なしに眺めていた新聞に通信教育の案内が入っているのを見つけた

かなり多岐にわたる内容で、その中にある「シナリオライター養成講座」というものに惹かれるものを感じた

早速資料請求をしたのは言うまでもない

もしかしたら、これが本来やりたかったものかもしれない

行きたくもない場所に編入学が決まってから、こういったことに気付くとは


皮肉としか言いようがない

2017/12/29

61

小金井市には都立小金井公園というところがあった

ここは江戸東京たてもの園で有名な場所だったが、個人的にはどうでもよかった

広くて、緑が多くて、静かだった

オレは意外と気に入っていた

そして特筆すべきはバスケットのリングが5個あるということだった

しっかりとネットもついていた

部を退いてからも時間を見つけてはここでシュートを打ちまくっていたのは言うまでもない

周りが静かということもあり、ボールがネットを通過する音がよく響いたのも良かった

これは大学生になってからも続けていた

それだけオレの趣向に合っていたということだろう

そして、こうやってシュートを打っているときが最もオレがオレらしくいられる


そんな感じだった

2017/12/28

60

オレは昔から独り遊びが好きだった

オレの友達は人間ではなく、モノだった

中学生のとき、バスケットボールのシュート時、ボールがネットを通過するときの音と、そのときのネットの形に恍惚に似た感情を覚えた

それを何度も見たいがためにオレは高校に行っていたとき、バスケ部に入った

だが、オレはこの競技が団体競技だということを忘れていた

シュート以外のもの、パスやドリブル、チームプレー、その他走り込みの類はやりたくなかったのでテキトーに流していた

無論、その際は精一杯やってます感やその結果疲れた感は出していたが、いつまでも続くわけはない

結局、人間嫌いで協調性のないオレに長続きするわけもなく、1年半ほどで部を退くことになった


とは言え、この感情は忘れることはできなかったので、バスケットのリングのある場所を探すことにした

2017/12/27

59

規則的に鳴り続ける不協和音

その中に入り交じる重低音やノイズ、美しくも儚い歌声

オレはあなたたちが創り出すセカイが大好きだった

オレもあなたたちみたいになりたかったよ

でも、オレにはあなたたちみたいな才能はないんだ

どんなに懇願したところで、オレには手に入れることの出来ないものなんだ

だから、オレはあなたたちから離れる

これ以上近くにいてもツライだけ

オレはこれ以上苦しみたくないんだ

オレはもっとラクになりたいんだ


だから、さようなら

2017/12/26

58

人間とはその気になれば大抵のことは出来てしまう生き物のようだ

オレは受験勉強が大キライだったが、四年生への編入は見事成功した

人生の中で一番受験勉強を頑張ったと言える時期だ

が、しかし

実際に編入先で学生生活が始まると、言いようのない虚無感が込み上げてきた

ナゼダ??

イママデイキテキタナカデモベスト3にハイルグライドリョクシタジャナイカ

ソレナノニ

モウナニモシタクナイ、シテモイミガナイ、スルキガオキナイ

ココモオレノイバショハナイ

トイウコトナノカ

オレハ、オレハ


イッタイドウスレバイイノダ?

2017/12/25

57

オレは当初四年制大学ではなく、短大へ入学した

繰り返しになるが、行きたくて行ったのではない
そこしか選択肢がなかったのだ

迷わなくていい、というわけではない
自分が望んでもいない選択肢しか残っていない、という状況だった

苦痛以外の何物でもない

しかし、オレはその短大へ行くことにした

行っておいた方が同居している一番身近な他人たちを黙らせられるからだ

しかし、短大合格では彼らの拘る世間体とやらが保てないようだ

そこで彼らは編入学という手段で四年制に入れと言ってきた

彼らは黙ってさえいれば何の害もない


今回はどうすれば黙るのかがわかっているのでラクだ

2017/12/24

56

「そういえばさ、ミョウジン君て仕事は何してるの?」

「食品会社で品質管理やってますね」

「ずいぶん堅いことやってんだねぇ~」

「やっぱりオレ、そういうことやってるように見えないんすね」

「うん。なんかねぇ、チマチマした成功を求めてるように見えないんだよね」

確かにそうですね」

「あれだっけ?出身は東京だったっけ?」

「ですね」

「いずれは向こうで仕事したいでしょ?」

「もちろんです。ハッキリ言って今すぐにでも戻りたいすね」

「なるほどねぇさて、出来たよ。いい感じじゃん」

彼はヨコイという名だった

美容師という職業について16年も経つとのこと

飽きないのだろうか?

辞めようと思ったことはないのだろうか?


自分の適性がこの仕事以外にあるのでは、と感じたことはないのだろうか?

2017/12/23

55

「ミョウジン君てなんであの会社に入ったん?」

「行くとこがあそこしかなかったからかな」

「ああ~、やっぱし」

「そういうのってわかるもの?」

「うん。だって、明らかにほかの子と違う感じがした」

「へぇ

「今、あそこに行くの結構エライんちゃう?」

「え??」

「こ~ゆうのって向こうだとなんて言うの?」

キツイ、かな?」

「ああ~、なるほどねぇ」

もう辞めちゃうの?」

「そうやねぇ。それはミョウジン君も同じなんちゃう?」

確かに。あの会社がっていうよりはこの土地がキライ」

「まぁ、こっちの子やないもんねぇ

「ケイコさんも向こうには興味ないでしょ?」

「そうやねぇでも、ミョウジン君と一緒やったら、今までと違ったもんが見れるかもしれんって思ったことはあるよ」

へぇ」

「でも、たぶんそれはあたしのキャパやと受け入れられん。そんな気がする」

そっか」


これ以上考えてもしょうがなさそうだ

2017/12/22

54

オレの最終学歴は大卒だったが、実際は多くの連中のように、そのまま四年制大学に入ったわけではなかった

受験勉強がキライなオレは大学入試の間際まで勉強しなかった

元々大学に是が非でも行きたいわけではなかったため、余計にやる気がしなかった

予備校と呼ばれる場所に行き始めたのも入試を受ける年の夏頃だった

予備校はキライではなかった

明らかに高校で教師が行う授業とは雲泥の差があった

ハッキリ言って教科書に書いてあるものを板書するだけの連中が大半だ

彼らは公務員だろうから、どれだけ創意工夫をして、生徒がテストでいい点を取ったとしても自らの報酬が増えるわけではないはず

それならば最低限のことしかしないだろう

オレも同じ立場ならそうする

「どうせ予備校行ってんだろ?ならばこっちであくせくやる必要なんてない」

そういった彼らの心の声が聞こえるようだった



予備校はそれなりに楽しかった
来ている生徒たちには全く興味なかったが

基本的に無駄がない
そして内容が実践的且つ実用的だ

普段行かざるを得ない学校は、興味を持てないものや役に立たないと思われるものもやらなければならない

予備校にはそれがない

むしろ、学校が本来の機能を果たしていないから、文字通り予備校というものが存在している

そのような図式が成り立っている気すらする

ハッキリ言って教師と呼ばれる連中は無駄に正義漢ぶっているばかりだ

ほかにもすべきことがあるのでは?

と思わざるを得ないことが多々あった

生徒がどれだけ入試に合格出来たかどうか、という部分しか見ないのであれば、学校を廃止し、予備校の数を増やす方が合理的だ


そうなった場合、どの程度学校が残るか見ものだ

2017/12/21

53

品質管理室には勤続10年ほどの主任職の人間がいた

残念ながら名前は覚えていない

オレは基本的にどうでもいいと判断した物事や人物に関しては忘却する習性が顕著だ

これは程度の差こそあれ、誰にでも当てはまることだろうが

この主任は最初の3年ほどは他部署にいたようだが、それ以降は品質管理室にずっといるようだった

彼以外では部長職の人間もいたが、よほどのことがなければ腰を上げることはなかった

なお、この主任は好き嫌いが激しく、嫌いな人間は全て他部署に飛ばしているという黒い噂があった

以前ケイコも同じことを言っていたが、あながち間違っていないかもしれなかった

「気をつけた方がええよ。あの人、間違いなくミョウジン君をキラっとるから」

ケイコの次はオレが餌食になるのだろうか?

キライならキライで大いに結構

お互い様だ

オレはあなたのご機嫌伺いをするためにこんなところにいるわけではない


勘違いするなよ?

2017/12/20

52

組織への忠誠心?

そんなものクソくらえ

オレは組織への忠誠心など最初から持ち合わせていない

組織に属しているのはあくまで建前

自らの時間を切り売りし、その対価を得るため

その対価がなければ生きていけないという残酷なる現実があるからなのだ

どこにも属さずに生きていけるスキルや才能がない自分という存在を呪いたい

欲しいと懇願していたものが手に入らないという現実が忌まわしい

オレは何かになる価値のない存在


現時点で生きているのは見えない何かに生かされてるだけなのだ

2017/12/19

51

幾何学的な空間

白と黒が基調となった冷たい佇まい

至るところに設置された合わせ鏡

この空間は人間の気配が感じられない

しかし、この鏡によってオレ以外の人間があたかも複数人存在しているかのような錯覚を覚える


むしろこの錯覚として認識している感覚こそが本来のオレ自身の感覚ではないか?

合わせ鏡を改めて覗いてみる

当然ながら、オレ自身の姿が幾重に連なって見える

だが、その中に明らかにそれとは全く異なる異形の影が見えた

この人影の存在が気配の増大に一役買っているのだろうか?

別の合わせ鏡を覗いてみた

そこに映るのはオレ自身のみだった

何度覗き込んでもオレ以外の人影が映ることはなかった

先ほどの合わせ鏡を再び覗き込んでみる


そこに映っていたのは全て異形の影だった

2017/12/18

50

オレは東京の中でも渋谷周辺が好きだった

正確に言うと、原宿・代官山・表参道、特にそれぞれの区画の切り替わる地点の景色や空気感が変化していく様が好きだった

それぞれ全く趣向の異なる街が融合している印象だが、不思議と違和感はなかった

時間と体力が許すのならばいつまでもぶらついていたい

残念ながら季節はオレにとっては最も優しくない極寒の時期

時間以前に体力が底をつく方が間違いなく早い


今回は行く場所を絞って行動した方がよさそうだ

2017/12/17

49

名古屋から東京までは新幹線で約1時間程度

物理的な距離は案外近いものだ
精神的な距離は果てしなく遠いが

ちょうど世間は年末年始の時期

正月休みという名の現実逃避を満喫できる期間

オレは約10日その期間が与えられていた

せっかくなので有効活用しないと罰が当たるというもの

名古屋発ののぞみに乗った


停車駅は新横浜、東京だった

2017/12/16

48

気がつくと、どこかの遺跡か廃墟の中にいた

静謐な空間

ヒンヤリとした空気

生命の息吹を感じさせない装飾性のない世界

日の光も月の明かりも届かない世界

時の流れというものが最初から存在していないような世界

分厚い石の回廊

このまま同化してしまいたい

このままオレ自身の時も止めてしまいたい


このまま目覚めることのない永遠の眠りについてしまいたい

2017/12/15

47

自分がどこに向かうのか今後どうなっていくのか

あまり考えたくない

とりあえず流れに身を任せている感じ

あてのない旅ってのも悪くない

あまり足掻きくない


どうにもならないことの方が多い気がする

2017/12/14

46

就職して、見知らぬ土地で冬を迎えることになった

この土地は夏は日差しが強く、冬は空気が重く、そして冷たい、という全くもって優しくない場所だ

雪も降った

湿気を含んだ重い雪だった

心なしか積雪量もオレの慣れ親しんだ場所よりも多かった気がした

残念ながらオレはこの土地には合わない

来年、この土地で冬を迎えることはないだろう

否、迎えたくない

むしろ迎えることがあってはならない

仮に迎えることがあったとしても、そのときはオレのメンタルが間違いなく崩壊しているはずだ


退職していったケイコのように

2017/12/13

45

人間は

人間に限らず全ての生物に共通だと思うけれど

生まれるとき、そして死ぬときは独り


どんなに限りなく身近な他人がそばにいようとも

2017/12/12

44

「ミョウジン君てこの辺で仕事してんの?」

「いや、四日市の方ですね」

「今日休み?」

「そうすね」

「四日市からここまでどれくらいかかった?結構遠かったんじゃない?」

「そうでもないですね。近鉄使ったので、30~40分ぐらいでしたね」

「へぇ~。そんなもんなんだ

何年ぐらいやってるんですか?」

「16年かな」

長い、ですね」

「うん、よく言われる。まあ、海外で仕事してたこともあるし、案外短かった気もするかな」

「どこで仕事してたんですか?」

「まずイギリスでしょ。それからイタリア、フランス、ポルトガル、あとブルガリアも行ったね」

すごいすね」

「まあ、長くやってると色んなことやるからね。さて、出来たよ」

「早い

「いや、これでもゆっくりな方だよ」


そこには確かな技術に裏打ちされた何かがあった

2017/12/11

43

オレの手は穢れている
おまえは美しい

オレの腕は穢れている
おまえは可憐だ

オレの体は穢れている
おまえはいじらしい

やめてくれ
オレはおまえを抱くには汚れすぎている

やめてくれ
オレの汚れた愛撫でおまえは心身ともに大きな傷跡を残す

やめてくれ
なぜそんな懇願するような目をするんだ?

やめてくれ
オレはおまえのその可憐でいじらしい様が好きなんだ

やめてくれ
オレは既に取り返しがつかないほど汚れきっている

やめてくれ
オレはおまえが穢れていく様を見ることを望んでいない

頼む
オレから離れてくれ

頼む
オレはおまえが汚れていく様を見ることを望んでいない

頼む
頼むよ

オレの手は返り血にまみれている

2017/12/10

42

オレは髪を切るときは「栄」にある美容室に行っていた

その店はシャンプー台がイギリス式とのことで、台に全身を乗せるタイプではなく、首だけ乗せるタイプだった

個人的にはなかなか新鮮だった

あと、初回にオレの相手をしてくれた業界歴16年の美容師が気に入ってしまったというのが、大きかったかもしれない

オレは基本的に同年代とは気が合わないことが多かった

オレが興味を持つものは、ほかの連中が興味を持つものと同じでないことが多いというのが最大の要因だった

無論、だからと言って興味ないものを興味がある、ということはなかった
そこまでして、他人との距離を縮めることに価値はないと感じていた

その結果、オレは年上の人たちと気が合うことが多かった

この美容師もそのような形で気が合った

そして、オレにとっての心の拠り所でもあった

2017/12/09

41

柱時計が無機質に時を刻んでいる

ここはどこかの古めかしい洋館の一室だろうか?

天井は高い

大きなシャンデリア

灯りは点いていない

分厚い書籍が立ち並んだ天井と同じほどの高さの本棚

タイトルの文字は日本語ではなさそうな文字だった

柱時計の音はとにかく規則的だった

時を刻む感覚は常に一定なのだと気付かされる

人間はそのときの精神状態や気分によって、それが一定でないかのように錯覚する

大きな鏡

その周りには明らかにこの時代のものとは思えないデザインの人形が数体飾られていた

中世的な感じとでも言えばいいだろうか

彼女たちはまるで意思があるかのような空気感だった

オレは鏡を覗き込んだが、鏡には何も映っていなかった

強いて言うならそこにあるのは漆黒の闇

柱時計の音はとにかく機械的だった

鏡に人間の後姿が映る

オレの後ろに誰かいるのか?

柱時計はちょうど12時になったことを告げ始めた

鏡に映った人間が振り返る

無残にも刳り貫かれた両目

口は三日月形に引き裂かれていた

柱時計は12回鳴ったところで止まった

辺りは静寂に包まれた

どこからともなく含み笑いが聞こえてくる

その引き裂かれた口から血が滴り落ちている

やがて、含み笑いは狂気じみた高笑いに変わる

その口が一瞬動いたかのように見えた

湧き水のように出る血が滝の流れのようになり、その人物は消えた


高笑いは止まることがなかった

2017/12/08

40

風が吹いていた

強くはないが、弱くはない

もちろん、優しくはなかった

オレは黄緑の草原にいた

草は風に靡いていた

オレの髪も風に靡いていた

飛ばされることはなかったが、立っているのがやっとなほどの強さだった

ギャーギャーと鳴く鳥の鳴き声が聞こえる

鳴き声の数から言って1羽ではないだろう

おそらくオレの頭上でとぐろを巻くように飛んでいるのだろう

風が止んだ

鳥共の鳴き声がいっせいに近付いてくる

オレは自らの意識が途切れるのを感じた


だが、自分が冷たい場所にいる、という感覚だけはあった