2017/10/21

036

樹海を抜けた先にあったものは、荒れ果てた街だった
所々に街灯の明かりはあるものの、間隔が長いためか薄暗かった
家屋らしきものはなく、廃屋と化した56階建のビルが立ち並んでいるのみだった

ここが「貧民街」と呼ばれる場所なのだろう
キウェインがいる場所は「21区」だったが、このような景観が「30区」までひたすら続いているのだろうか

辺りに人影はなかったが、気配らしきものはあった
立ち並ぶビルに人が潜んでいるのだろう



「懐かしい場所だな。昔から何も変わっちゃいない」

音もなくトリプルワンが現れた

アンタもここで生まれたんだったよな?」

キウェインは振り返らなかったが、背後にトリプルワンがいることは認識しているようだった

「ああ。だが、正確にはわからん。オレは親の顔を見たことは1度もない。こんな場所だ。きっと、オレを捨ててスラムに逃げようとしたんだろうな」

「さっきは、待ってたのか?オレの記憶が戻るのを」

「ああ。殺ろうと思えばいつでも殺れたさ」

キウェインは嘲るように鼻で笑った

「何がおかしい?」

トリプルワンの声には怒気が篭っていた

「アンタ、気付いてるか?あんときあった圧倒的な殺気が相当落ちてるってことに。オレに手出さなかったのは、返り討ちを恐れたからだろ?」

キウェインが振り返った
その表情は、かつて最前線で数多くの任務をこなしてきた殺戮マシーンそのものだった


しばしの間、両者に沈黙が流れた

「トリプルゼロ。おまえは、あの監視場から出たいと思ったことはあるか?」

「いや、別に」

「オレは、出たいと思わなかった日は1日とてなかった。あそこでは実績が全てだった。憐れな貧民どもをどれだけ殺したかっていう実績がな」

「へぇ

「おまえさえいなければ。あのとき、ただのガキだと思って生かしさえしなければ

トリプルワンの歯軋りが響く

「アンタはさぁ、色々と考えることはできるし、セコさもあるけど、中途半端っていうか、詰めが甘いよな」

キウェインには嘲るような笑みが浮かんでいた

「だから、何がおかしいってんだ!!」

トリプルワンの怒号が響き渡る

「オレは本来なら死んでるはずなんだ。あんときのアンタだったら、オレを殺すのは余裕だっただろ?それが生き残っちまったんだ。おかしくないわけないだろ?」

「ぶっ殺

トリプルワンの胸にキウェインのつま先がめり込んでいた

「ムダが多すぎなんだよ。それと、人間は急所を確実に突けば、結構簡単に死ぬもんだぜ」

トリプルワンは崩れ落ちるように倒れ、微動だにしなかった

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