2017/09/05

■64

「いっぱい出たね…」

真奈美は優しく抱き締めてくれた
ちょうど全てが終わったあとで、脱力感が全身を覆っていた

真奈美もそれを察していたのか、何も言わずにただ抱き締めてくれていた
俺の目の前には白く、柔らかい肌があるだけだった

その場所からはいい匂いがした。香水の匂いとはまた違った匂いだった
遠い昔に嗅いだ気がするような懐かしい香りだった



香織はマンションのエントランスにいた
オートロック解除用のインターホンを押そうとしていたが、思い止まり、そのまま出て行った



意識が遠退いていくのを感じた
自分がどこにいるのかわからなくなってきた
感知出来ていることは、真奈美の体温と汗で湿った肌、そして、愛液と俺の分泌物で濡れた結合部分のみだった

俺はまるで自分が赤ん坊になった気がしていた
真奈美に抱かれていると不思議な安堵感があった
自分の全てを委ねても大丈夫だと感じられる、むしろ委ねたいと思えるものがあった

これが香織との違いだろうか?
香織とは何度も肌を重ね合わせて来たが、そこまでの安心感は感じなかった
真奈美は相手を受け入れようとする気持ちが強いタイプなのかもしれない

香織は、もしかしたら真奈美のような安心感を俺に求めていたかもしれない
だが、残念ながら、俺にはその期待に応えられるほどの愛や包容力はなかった
むしろ、そういったものを相手に求めていたのは俺の方だったかもしれない

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