2017/09/30

016

辺りは、少女の円らな瞳から流れ落ちる涙や、キウェインが持っている短刀から滴り落ちる鮮血の音が聞こえてきそうなほど、静まり返っていた

キウェインは瞬きもせず、表情も変えずに、短刀を構えるように持ち上げた

「ひ…」

少女は目を瞑った
体は完全に縮こまっていた

「目開けろよ。刃に付いた血を払うだけだ」

キウェインは短刀に付いていた血糊を払った
手首のスナップが利いているせいか、刃が風を切る音が聞こえた

刃風の音がするたびに、少女の体はひきつるように、小刻みに震えた
目を開けることはなかった

「ったくしょうがねぇな…。ほら、短刀はもうしまったから、早く目を開けな」

キウェインは短刀を折り畳み、少女の前にしゃがんだ
少女は恐る恐る目を開けていった

「!?」

その目には、大量の涙と怯えの感情が浮かんでいた
キウェインの顔には表情がなかったが、目には労わりの感情が見え隠れしていた

「オレが怖いか?」

少女は力無く頷いた
目から流れる涙の量が増えたようだった

キウェインはそっと少女の涙を拭い、両肩に手を置いた

「オレが見えるか?」

少女は目を見開いたように、キウェインを凝視していた
そこには、無慈悲な殺戮マシーンとは程遠い雰囲気を持ったキウェインがいた

「……う、うん」

少女の目に浮かんでいた涙と怯えの感情が少しずつ消えていった

「オレはキウェイン。おまえは?」

「?」

「おまえには名前はあるか?オレはキウェイン」

「あたしは……ルミ」

「そうか。なんでだかわかんねぇけど、今日のオレはおまえを殺せないみたいなんだ」

キウェインは立ち上がり、ルミに背を向けた

「おまえのことは見なかったことにしてやるよ。助かりたかったら、夜が明ける前にスラムに行きな。この叢出て道なりに進んでいけば辿り着くはずだ」

「…」

「早く来いよ。歩けんだろ?夜が明けたら、もっとタチのわりぃヤツらが来る。ヤツら、おまえみたいなガキが好物らしいからな」

キウェインはそのまま立ち去ろうとしていた

「…ま、待って」

ルミはおぼつかない足取りでキウェインを追いかけた

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