2017/09/21

007

キウェインは目を覚ました

窓のない、朝も夜もない部屋だった
ここで行われることを踏まえれば、理に適っていると言えるだろう

「起きてたの?」

ルミも目を覚ましていたようだった
キウェインと目が合うと、その円らな黒目はより大きくなった

「う!?」

キウェインは頭を抱えて蹲った

「どうしたの!?」

「頭が……、痛い……

キウェインの体は小刻みに震えていた


ルミはキウェインを抱きしめた
そのようにするしかなかったのだろう
かける言葉がなかったのは想像に難くない

この状況は、時間が解決するのを待つしかないようだった



治まった?」

「ああ……。たぶん、大丈夫だと思う……

「頭痛持ち?」

「いや。なんかよくわからない。しかも耳鳴りもひどかった

「そうなんだ

キウェインは蹲ったままだったが、小刻みな震えは収まっていたようだ
ルミは、キウェインの背中を撫でていた

「ねぇ、報酬なんだけど」

「いや、いいよ。宿泊代だけ出してくれれば、あとはボランティアで」

「え!?でも

「ルミちゃんはそれなりにカネ稼いでそうだけど、スラムにいるってことは、どんなに頑張っても月30ぐらいだよね?」

「そんなには稼いでないけど。でも、今日はすごくよかったの。だから

「オレは別にルミちゃんに同情してるわけじゃない。まあ、カネはないよりあった方がいいけど、なんか受け取る気になれない。なんでだかわかんないけど

安すぎたの?5クレジットから出来高で10クレジットだと」

「いや、そういわけじゃないんだよな。なんかモヤモヤしててよくわからない

キウェインの言葉は要領を得なかったが、意思は固そうだった

「そう………。じゃあ

ルミはキウェインの肩に手を掛けた

「ん?」

キウェインは顔を上げる
いまひとつ焦点が合っていないような表情だった

「もう1回、あたしを満たして

キウェインをねだるように見つめる、その黒目は潤んでおり、そしてとにかく大きかった

「延長になったら、その分払ってもらうぜ?」

「いいよ

ルミは、そのままキウェインに抱き付いた
2人は対面座位の形になった

子ネコが鳴くような喘ぎ声が部屋中に響き渡った



2人がラブホテルを後にしたのは、14時ごろだった
宿泊代は、延長代も含めて2クレジット程度となった

全額ルミ持ちだったが

日中のホテル街は、派手なネオンがないため殺風景だった
場所も場所だけに人通りも少ない

「ねぇ、また会ってくれる?」

「そうだなぁ

キウェインは満更でもなさそうだった
ルミはニヤニヤしながらキウェインの手を握り締めていた

「キウェインも気持ちよかったんでしょ~?」

「まぁ、30過ぎのオンナより締りがよかったからな」

「もぉ、何それ~。いっぱい出してたくせに~」

「ああ、そうさ。いけませんか?」

「いけないなんて言ってないもん」

キウェインはルミの反応を面白がっているようだった

「あ、そうだ。話変わるけど、ルミちゃんて黒似合わないよね。なんか色に負けてる」

「え?そう?」

「今まで言われたことなかった?」

「うん」

「アクセの色はゴールドだから、似合ってるね。ルミちゃんは、肌の色とか艶とか、質感、目の色。春だね」

「春

「似合う色は、原色以外の濃い色。オレンジ、黄色、ピンク、緑もいけるかな。オレが着れない色だね。どうしても黒を着たい場合は、上じゃなくて下に持って来た方がいいね。覚えといて。今度会うときに色が合ってるかチェックするから」

うん


2人は、傍から見ると、お互いの中に入り合って、より精神的な距離が縮まった恋人にしか見えないだろう

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