2017/09/16

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メールにあったように、確かにポストの近くに、女性が1人いた

全身黒尽くめで、細身で、小柄だった
おそらく150cm前後だろう

キウェインは定職に就いておらず、「なんでも屋」を生業として生きていた
しかし、それは建前上の話で、収入の大半が「逆援助交際」によるものだった

ネットサーフィンをしていたとき、偶然その手の広告を見つけたのだ
たいていはサクラだろうが、その広告は、何かが違っていた

それは根拠のない直感的なものだったが、キウェインはそれを信じることにした
これまで生きてきた中で、直感の導きに従った方が、色々な意味でよかったのだ

結果的に、その逆援助により50クレジット(※)という破格の報酬を手に入れることができた

キウェインは、電話をかける準備をした
メールの主は、この女性でほぼ間違いないだろうが、敢えて電話をかけることした

(※)1クレジットは日本で言うところの10000円に相当します



スマートフォンから呼び出し音が鳴っていた

キウェインは、この小柄な女性を注視していた
電話に気付いたのか、ハンドバックをゴソゴソとやっているようだった

「はい、ルミです」

舌足らずな話し方だった

「どうも、キウェインです。今改札のところにいます。これから向かいます。自分も全身黒尽くめなので」

「あ、は~い♪」

一般的に女性は声フェチが多い
そして、その手の女性が好む声質は、ある程度決まっているとも言われている

キウェインはその性質を上手く利用し、数々の逆援助をことごとく成功させてきた



「はじめまして♪」

ルミは、キウェインにとって珍しい部類の女性だった

今まで逆援助をしてきた女性は、どんなに若くても30代前半だった
皆、背が高く細身で、きつめな顔立ちの女性ばかりだった
また、彼女たちは年収500クレジット以上1000クレジット未満の夫を持つ既婚者でもあった

スラム街で生活しているキウェインにはよくわからなかったが、この年収帯の連中は、「使うカネはあっても時間がない」ようだった

おそらく彼女たちの夫は、組織から与えられている権限以上の仕事をやらなければならない状況なのだろう
その結果、どうしても就業時間が長くなり、夫婦の関係に使う時間と体力が残っていない

彼女たちがそれに不満だったのは間違いないだろう

ルミが今までの女性たちと明らかに異なるのは、その目付きだった
黒目の割合が白目よりも多いのだ
ハムスターや子犬に近いものがあった

さぞかし多くのオトコどもから言い寄られたことだろう
そして、パーソナルデータに載っていた「20代前半~半ば」というのも、ウソではなさそうだった

「立ち話も難なので、行きましょうか」

「あ、ハイ!」

ルミからは、恋人と初めてのデートに行くかのような、高揚した感情が発せられているようだった



「キウェインさんは、こ~ゆうの何回もやってるんですか?」

「まあ、それなりに」

「みんな、あたしぐらいの年だったんですか?」

「いや、その逆でしたね。若くても30代前半で、しかも既婚者ばかりでしたよ」

「へぇ~、じゃあ~、あたしは珍しい感じですか?」

「そうですね。ルミさんみたいな子は、こういうのよりも、普通に彼氏を作って、その彼氏以外のオトコとはしない。そんな印象ですね」

「あ~、よく言われますね~」

7区は歓楽街だった
駅前には、大小様々な商業施設が立ち並んでいた

キウェインたちはホテル街に向かっていた
ここには100件近いラブホテルがあると言われている

料金は、宿泊で3クレジット程度かかるところもあれば、0.5~0.6クレジット程度のところもあった
質が値段に比例しているのは言うまでもない

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