2017/08/02

■30

大城は顔をしかめながらセブンスターの煙を吸い込んでいた
ベンチの上に投げ出された携帯電話が鳴る
サブディスプレイには『小泉真奈美』と出ている

「んだよ」

『昨日はごめんねぇ。ドタキャンするつもりなかったんだけどぉ』

相変わらず真奈美の声は甘ったるかった
一体どんな声帯をしているのだろうか?

大城としては会社から業務連絡の電話が来るのも煩わしいが、それと同じぐらい真奈美の声を聞くのも煩わしかった

「はいはい。で?何の用だ?」

『昨日話そうと思ってたことなんだけどぉ。とりあえずアイツサイテーだよ』

「あいつって?」

『君を直紹介した人。まあ、私も紹介されたけどね』

「ああ。誰だかわかった。なんだよ、いきなり。手のひら返すみたいに」

『だってさぁ。アイツ、超柔軟性ないじゃん?ネットワークってさぁ、ライフスタイルビジネスって言われたりするじゃん?でも、あのやり方ってさぁ全然違うじゃん?』

「…おまえ何が言いたいんだ?」

『あたし、オールモスト以外にも登録してるんだぁ。君も来る~?いいよ。アイツみたいな融通の利かないヤツもいないしさぁ。みんな1人1人の価値観とか、考え方が違うってことをわかってくれる人たちばっかだよ。ちなみに香織が今度やるセミナーに来るってさ』

「ふ~ん…。いつだ?」

『日曜だよ。場所は中野サンプラザ。すっごく大きい会場で、たぶん当日はいっぱい人来ると思うよ』

「あっそ」

『どうする~?』

「あとで連絡するわ」

『わかった。じゃあねぇ~』

とりあえずもう真奈美の声を聞きたくなかった
そして、すぐさま香織に電話をすることにした

『もしもし』

「おう。今平気か?」

『うん。ちょうど休憩だから。どうしたの?』

「いやさ。今真奈美から聞いたんだけどよ。日曜に他社のセミナー行くんだって?」

『そうだよ』

「真奈美の会社に興味あんの?」

『う~ん…。会社というより真奈美に戻って来て欲しいなって感じかな。後はあの子が何に惹かれてるか見てみたいってのもあるし』

「なるほど」

『大城君も行くの?』

「まだ、返事してないけどそのつもりだ。俺はダウン増やしたいしな」

『そうだよね。明神さんはどうするの?』

「一応あいつにも声かけるぜ。オールモストのプランと比較出来るし、色々勉強にもなると思うしな」

『そっかぁ…。なんか面白くなりそうだね』

「だな。じゃあ、また」

『うん。じゃあね』

気が付いたらセブンスターが残り僅かになっていた

「おっと! 危ねぇ」

胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、火を消した

「さて、と…。リーマンなんてやってる暇ねぇな」

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