2017/07/29

■26

デニーズは24時間営業ということもあるが、窓際にもチラホラと人がいるのが見える
心なしか店内の照明は暗めだ
その中に大城がいるのが見える。どうやらタバコを吸っているようだった

思わず大城をジッと見る香織だが、大城は香織の存在に全く気付かない様子

大城は顔をしかめながらセブンスターを吸っている
テーブルには大盛りのパスタが入っていたと思われる皿やスープの大と思われる大きさの底が深めの皿もあった
テーブルに投げ出されたままの携帯電話が鳴る
サブディスプレイに『石井香織』と出ている
乱暴に携帯電話を開く大城

「もしもし」

『お疲れ』

「珍しいな。どうかしたん?」

『今下にいるんだ』

「え?」

外を見る大城。確かに香織が見える

「ああ。いたいた。俺のとこからちょうど見えるわ」

『うん。私からも見えるよ。今1人?』

「ああ。そうだけど」

『そっち行っていい? なんか喉乾いちゃってさ』

「おお。いいぜ。俺も1人で退屈してたとこだし」

『うん。わかった。じゃあ』

香織がやってくる
吸っていたセブンスターを灰皿の上で消す大城

テーブルは綺麗に片付けられており、ワイングラスの形に似たグラスにはコーラが入っていた

「お疲れ。何してたの?」

「メシ食ってたよ。ホントはアポ入ってたんだけど、ドタキャンされちまってさ。なんか帰る気にもなれなくてさ」

「そうなんだ。ひどいね。やけ食い?」

「まあ、それほどじゃねえけど、パスタとスープを大盛りで2杯食っちまった」

「随分食べたね」

「俺、基本大食いなんだよ」

「そっかぁ」

香織はセミナー開始持のときと変らない自然な笑みを浮かべていた

「あれだよな。香織ちゃんてさ。いつもナチュラルな感じだよね。今もそうだけど、セミナー前に見たときと同じ雰囲気な気がする」

「そうかな? まあ、確かに人と会うときは表情とかは気をつけてるけどね」

「なるほどね。俺はそのときの気分がすぐ顔に出ちまうんだ。営業やるようになって大分マシにはなったけどさ。さっきみたいにムカつくことがあるとさ。すぐ出ちまう。香織ちゃんはそういうことがあっても切り替えが上手そうだよな」

「ん~。以外とそうでもないよ。ついさっきまではちょっといやなことがあって結構へこんでたし」

「へえ…」

コーラを一気に飲み干す大城

「私もなんか頼もうかな」

「そういや喉乾いてたんじゃねえの?」

「うん。今思い出した。私もコーラにしよっかな」

セブンスターをくわえ、火をつける大城

「明神さんて普段は何やってる人?」

「確かコールセンターでオペレーターやってるっつってたな。結構長いみたいだ」

「そうなんだ。どこで知り合ったの?」

「あいつとはもう10年ぐらいの付き合いなんだ。不思議と気があってね」

「へえ…」

「俺もあいつもそんなに社交的な方じゃないし、親友と呼べるヤツもそんなにいない。まあ、唯一の例外って感じかな」

香織の前にコーラが置かれる

「すいません。コーラお代わりください」

「よく飲むね。何杯目?」

「さあ、数えてないからわかんねえ」

「タバコ吸ってるからじゃない?」

「かもな。香織ちゃんは吸わないんだっけ?」

「うん。1度も吸ったことないよ」

「へえ…。吸ってるようなイメージだったけどな」

「まあ、確かにメンバーは吸ってる子が多いけどね」

「だよな。特にヘビーなのがあいつ、真奈美。なんかフツーに2箱は軽く行くらしいぜ」

「そうなんだ…」

真奈美の名前を聞いた途端に香織の顔が曇る
香織の異変に気付く大城

「どうかしたか?」

「ん? そういえば真奈美最近来ないなぁって思って」

「確かにな…」

「私、真奈美の直紹介なんだけど、この話聞いたときの真奈美はホントすごかったんだよね…。あの子そんなにしゃべるの上手くないけど、なぜか伝わってしまうっていう何かを持ってた」

「まあ、そんな感じだよな」

「今思うと、私にとってのモチベーションだったんだよね」

「へえ…」

灰皿に置かれたセブンスターがあとわずかでフィルターのみになりそうな状態だった

「それなのに…」

香織の目に涙が浮かんでいるように見えた

「まあ、何があったかはなんとなく想像はつくけどよ…。その…あれだ。アイツはアイツだし、香織ちゃんは香織ちゃんだからさ。なんていやぁいいのかな…」

大城は苦笑しながら必死に場を明るくしようとした

「…そうだよね。なんとなく大城君が言おうとしてることわかるよ。うん、その通りだと思う。ありがとう」

再び笑顔を取り戻す香織

「え、あ、そう。そりゃ良かった」

「そういえばコーラ来てたんだね。忘れてた」

「てか氷が完全に溶けちまってるぜ。どんだけ薄くなってんだ?」

コーラを一気に飲み干す大城

「こりゃ完璧水だわ」

ストローでコーラを飲む香織

「ホントだね。私のも水だ」

「だろ?」

「だね」

「でも、あれだよな。香織ちゃんて強いよな」

「え、そうかな?」

「だってよ。こういう状況って精神的にもキツイじゃん?人によってはずっと引きずることもあんじゃん」

「そう言われればそうかもね。私はなったらなったでしょうがないかなって思うタイプなのかもね」

「なるほどね」

「そういえばさ。大城君のフロントの人、明神さんだっけ?」

「ああ。ヤツがどうかしたか?」

「大城君と感じが違うなって思ったの。友達だよね?」

「ああ。確かに不思議なくらい長い付き合いなんだよな。アイツぐらいだぜ。こんだけ長いのは。まあ、似てるとこもあるし、そうじゃないとこもある。だから、飽きないのかもな」

「へえ…」

「ヤツに興味あんの?」

「そういうわけじゃないけど…。どんな人なのかなってちょっと思っただけ」

「ふ~ん…。まあ、話す機会があれば話してみるのもいんじゃね?」

「そうだね」

「ちなみに俺もヤツもフリーだけど」

大城はニヤニヤしながら、セブンスターに火を点けようとしていた。

「タバコ吸う人はイヤだなぁ」

「あっそ。俺も年下に興味ねえし」

笑い出す大城と香織

2 件のコメント:

  1. 営業で気分がすぐに顔に出るというのは、
    なかなか大変ですが、
    マシにはなってきているいいですね。
    お客相手の商売だと表情もちゃんとコントロールしないといけませんしね^^;

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    1. 逆に出なさすぎなのもダメですね
      無駄に無機質な印象を与えちゃうと信用されなくなりますからね

      まぁ、マイナスなというかネガティブな感情を出さなきゃいいのかなって思います

      会社の顔という以前に人間同士っていうのが前提だと思うので

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