2017/07/24

■21

ベローチェは新宿文化センターに向かう途中にあった
奥が禁煙席になっており、入り口近くは喫煙席だった

今はどこでも分煙になっている
俺はタバコは吸わないが、なぜか周りにいる連中はほぼ9割方スモーカーだ

そのため常に喫煙しているのと同じような状態になってしまっている
しかも、一説によると主流煙よりも副流煙の方が毒性が強いと言われている
俺の肺はきっと喫煙者のそれと比べても遜色ないほど汚れていることだろう

俺と小松、大城は入り口近くのテーブルに座った
椅子が高い作りになっており、足を伸ばせたのは好都合だった

パイプイスに1時間半座って色々な情報を頭に詰め込むのはかなりしんどかったからだ
足を伸ばすことで多少なりとも頭がスッキリしてきたような気がした

「最大のコツはセミナーで話した通りなんですけど、細かいことを言うと、伝えるときには自分で全部話さないでください。なぜかというと相手に伝わらないからです」

「…どういうことですか?」

意味がわからなかった

伝える仕事ということは口に出して話さなければならないはずだ
それとも、ボディーランゲージという手段を使うのだろうか?

小松は俺の心を読んだかのように

「話さないと言ってもボディーランゲージを使うわけではないです。大城君からこの話を聞いたときのことを思い出してください。おそらく全ては話していないはずですよ」

確かに大城は小松が言ったように、このビジネスを全ては話していなかった

「イメージで言うと映画の予告編のような感じですね。予告編てこの映画を見たいと思わせるものですよね。よく見てると印象に残るシーンや強烈なシーンばかりで作られてるはずです」

なるほど
小松の言いたかったことがわかった気がした

「ああ、そういうことですか。わかりやすい例えですね」

「初めての人にはいつもこの話をするようにしてます。なるべく身近なものに例えた方がわかってもらえるんですよ」

「なるほど…。自分で話さないってことでしたけど、ということは誰かに代わりに話してもらうってことですか?」

「そうです。それは自分でもいいですし、大城君でもいいです。第3者を通すことによってその分伝わりやすくなります。相手と自分の距離が近ければ近いほど伝わりにくくないですか?」

確かにそうかもしれない
俺も大城の言うことは付き合いが長いせいかあまり真に受けなくなっている

「そうですね」

「あとは話してもらう人をティーアップって言うんですけど、持ち上げるというか相手にとって会ってみたくなるようにイメージさせるというのも重要ですね。実は このティーアップが上手く出来るか出来ないかで結果も変わってきます。大城君はなかなか上手いですよ。もう既に何件か俺にアポ入ってるよね?」

「そうすね。確か明日から心臓破りの5連チャンすね。まあ、小松さんだから大丈夫すよね?」

「ああ。余裕だよ。何たって1日10連チャンマケしたことあるし」

「マケ?」

「第3者に話してもらうことですね。ネットワーク用語でABCって呼ばれることが多いですね。自分はマーケティングケア略してマケって呼んでます。両方とも同じ意味ですけどね」

「はい」

「あとは毎月2~3回のペースでやっているOSに動員するのもいいですね」

「ああ…。セミナーに連れて行くってことですよね?」

「そうですね。動員て普段はそんなに使わないですかね?」

「あんまり使わないですね」

「小松さんガンガン使ってますよね」

「そういやそうだな」

このビジネスがどういうものか大分イメージ出来てきた
これは人脈を増やさないとならないようだ
早速大城がEメールで送ってくれたSNSで探してみた方がよさそうだ

奥の方をチラリと見る小松
大城がそれを察したかのように

「香織ちゃんいますね」

「ああ。ちょっと行ってくるわ」

席を立つ小松

「じゃあ、大城君後頼んだわ。明神さんとりあえずやってみてください。それでわからないことがあったら何でも聞いてください」

小松が向かった場所にはさっき会場にいたと思われる女性陣が約10人ほどいるようだった

「さてと…。まあ、こんな感じだ。帰るか?ていうか俺はこれから八王子でアポ入ってるから行かなきゃなんないけど」

「ああ…。そうだな」

正直思ったより難しくなさそうだ

俺にも出来るかもしれない

いや出来るはずだ

何しろ大城に出来て俺に出来ないわけがない

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