2017/01/26

River abandoning the dead bodies II

サヤは散歩をするように、川の周りを歩いていた。
時々立ち止まったり、手すりに近づいて眼下の様子を見ていた。

緩やかな流れの中に、時折ロボットに投げ落とされたと思われる亡骸が見えた。

サヤはこの重度に進んだ大気汚染の犠牲者だった。
元々強くなかった呼吸器系と循環器系の機能は著しく低下し、かろうじて歩くことはできたものの、数時間程度が限界だった。

また、声帯は機能不全になってしまった。

気候に合わない服装をしているのは、皮膚呼吸で有害物質が体内に入るのを可能な限り遮断するのが目的だった。

サヤはヨシキと暮らしており、室内は空気清浄機と酸素が絶え間なく送り込まれるようになっていたが、その分家賃が上がってしまった。

元々2人は共働きで、その結果家賃を払うことができていたため、働き手を1つ失ったことで、経済的にも精神的にもヨシキへの負担が増えていた。

立ち止まるサヤ。
ロボットが亡骸になったと思われる人間を担ぎ、そのまま川へ投げ落とす。

「…」

2017/01/19

Submerged in extreme heat

気温は35℃だった。
日によっては40℃を超えることも珍しくなく、ごく稀に30℃を下回ることがあるような状況だった。

世界規模でエネルギー源として燃やされ続けてきた化石燃料から発生する粒子状物質が、太陽の熱を吸収することでもたらす温室効果だった。

時刻はちょうど10時になった。
行き交う人の流れが疎らになり始める頃でもあった。

サヤがやってくる。
防毒マスクをつけ、肌の露出は皆無で、白とピンクが基調の、全身にヒラヒラした装飾がふんだんに使われた装いだった。

その姿を一瞥するリュウスケ。
ほぼ同じタイミングでサヤも視線を向ける。



スマートフォンに視線を移すリュウスケ。
サヤも視線を外し、そのまま通り過ぎていくが、ちょうど2時間ほど前にロボットがいた場所で立ち止まる。

それとなく様子を観察しているリュウスケ。

しばし立ち止まっていたが、そのまま歩き去っていくサヤ。

リュウスケは、その姿が見えなくなってから、スマートフォンに視線を移す。

2017/01/15

River abandoning the dead bodies

川は20〜30mほど下にあった。
手すりは設置されてはいるが、乗り越えようと思えば乗り越えられる高さだった。

巡回するように歩いている人型ロボット。
少子高齢化対策に生み出された人工知能の産物だった。
本来は接客サービスや介護用だったが、用途不要になったため、相当数が配置されるようになった。

スマートフォンを操作しているリュウスケ。
画面にはアプリが起動しており、川の地図のようなものが表示されていた。
赤い点が川の周りに何個も表示されており、ゆっくりと動いている。

リュウスケは、川の周りに配置されているロボットの管理をする仕事をしていた。
交代制で、主に6時から15時までの業務だった。

川は広く、大きいため、全てを1人で見るのは不可能だった。
このため、携わっている人間たちの持ち場は区分けされ、その中で業務にあたっていた。

ゆっくりと動いていた赤い点の1つが静止し、激しく点滅する。
それは10mほど先だった。

一瞥するリュウスケ。
ロボットが、亡骸になったと思われる人間を担いでいた。

スマートフォンに視線を移すリュウスケ。
ロボットは、担いでいた亡骸をそのまま川へ投げ落とす。

重度に大気汚染が進んだこの世界では、防毒マスクを外すことは、呼吸器系が詰まり、そのまま窒息死につながることを意味する。

なお、川に身を投げて自死する割合よりも、なぜかこの界隈で窒息死をする割合の方が高かった。

2017/01/07

Submerged in dark haze

対岸が見えないほどの広さの川。
流れは緩やかだ。

辺りは靄がかかったように黒く霞んでいる。
時折通る車は全てヘッドライトが点灯していた。

防毒マスクにタンクトップ・ハーフパンツ姿のリュウスケ。
手にはスマートフォンが握られており、画面に表示される時刻は8:00となっている。

薄闇に覆われたような空。
太陽は霞んでいたものの、かろうじて見える状態だった。

猫背でうつむき加減なヨシキが足早にやってくる。
防毒マスクに半袖の白ワイシャツ・スラックス姿だった。

「…」

ヨシキを一瞥するリュウスケ。
リュウスケなど眼中にないような素振りでやってくるヨシキ。



スマートフォンに視線を移すリュウスケ。
すれ違う2人。

リュウスケは、ヨシキよりも頭一つ分背が高く、腕や足も1.5〜2倍ほど厚みがあった。