2016/11/18

●1

ぎこちなく、うっすらと目を開けていくリオ
流れ続けていた赤い液体は、跡形もなく消えていた

そこには赤い景観はなく、アッシェンの瞳以外の肌も、曇った空も、本来の色だった



リオの胸にアッシェンの手が触れ、微かに撫でるように動いた

「ダメ!」

その手を払いのけ、藍色の瞳でアッシェンを睨んだ

「…」

アッシェンは無表情で、瞬き1つしなかった
リオの右手は胸を、左手は下半身を隠していた



アッシェンは舌を出した
どす黒い赤色をしていた

「…それって、もしかして?」

無表情だったアッシェンに微笑が浮かび、赤い液体が流れていないリオの目の下辺りを軽く撫でて、その指を藍色の瞳に映るように差し出した

「…」

リオの両手は、脱力したように、自然に体の横に置かれた
口元には微笑が浮かび、目は静かに閉じられた

そこには、これまでの赤黒い景観はなかった

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意識を失っているのか、ただ眠っているだけなのか、目を閉じて仰向けに横たわっているリオ
血の涙は、変わらず流れ続けていた

透き通るセルリアンブルーの中にリオが映っていた
その姿が次第に大きくなっていく

リオは、アッシェンの後ろ姿に隠された



空は、淡い灰色に白を混ぜたような雲に覆われていた
かつて森だったのが焼き払われたような、一面黒い煤に覆われた景観が広がっていた

●0

フフフ…
奇跡って、このことを言うんだね
こんな、死んでるも同然の星で生き延びてたなんてさ…

しかも、ボクのように人為的ではなく、自然な営みで生を受けてるしね…

でも、あまりに劣悪な環境だったせいか、キミたちも既に人間じゃなくなってる可能性が高い
昔のボクのように…

あの必然とも言える人災から30年経って、色々とだいぶマシになりつつあるけど、壊れる前のような状態になるのはまだ先だろう

まぁ、全てはいずれ闇に飲み込まれる…
動いているものは止まる…
形あるものはその原形を失う…

これは抗いようのない宿命だ

とは言っても、キミたちにはまだ生きていてもらうよ
破壊の楽しさは、全てを無にすることだけではないからね…

フフフ…