2016/11/12

●2

赤黒い景観は、目を閉じても変わらなかった

当初は、一時的なものだろうということで、拭ってもみたが、流れ続ける血は止まることはなかった
外傷らしきものも確認できなかった

本来なら死んでいてもおかしくないような状態だったが、体温の急低下や意識が朦朧とするなどの症状はなかった
景観が常に赤黒いという以外で、特に不便を感じることはなかった

リオの瞳はアズライトのようだった
血の涙と混ざっても変色することはなかった

日光が出ているとき、角度によっては、青にも藍にも見え、どす黒い赤との対比が際立っていた

●1

リオは血の涙を流し続けていた
10歳ごろ両親に、この森に捨てられて以来だった

両親がリオを生んだのは、世界が1つになった時期とほぼ同じだった
残存していた地下シェルターで、備蓄の食料で10年ほど食いつなぐことはできたが、それだけだった

降り続いていた有害物質の雨は止んでおり、太陽も出ていた
しかしながら、それは状況の好転を意味するものではなかった

リオは森の中で目覚めた
約1年分の食料が託されていたが、これまで一緒だった両親はどこにも見当たらなかった

両親の名を呼んでみたが、虚しく反響するだけで、やがて静寂に吸収されてしまった
力の限り泣き叫びながら呼んでみたが、結果は同じだった

●0

世界が1つになったあとも、遺伝子操作により、高さ、太さ、枝や葉の付き方、大きさ、形など、全てが全く同じ木々で構成された森は、分かれていたときに、悪魔と酷似した異形の影によって焼き払われたもの以外は、存続していた

そこは針葉樹の森だった
常緑樹の森として造られていたためか、気候が変動しても葉の色は変わることがなく、落葉することもなかった

生気がなく、常に静寂に覆われていた
日光が木々の間から差し込んでいるときほど顕著だった

景観は、常にどす黒い赤だった
少なくともリオの瞳に映し出された景観は