2016/10/20

▼89

降りた先は、展望台のような場所だった
ロビーよりも遥かに広かった
ミナと初対面したあの場所と酷似していた

外の様子が見えた
エレベーター内で見えたそれと全く同じだった

「ねえ、ミナ。セカイはもう1つになったの?」

そこはメカニカルで無機質な空間だった
人影らしきものは見当たらなかったが、カナミは感じていた
得体の知れないものの気配を…

「まさか、科学の力でどうにも出来ないことがあるとは…。まあ、いい。これぞ備えあれば憂いなし、というものだ」

その声はどこからともなく聞こえてきた
発信元は特定出来なかった

「おっと、私が誰かということは聞かないでくれたまえ。キミの、いやキミたちの1番身近な他人なのだからな」

声の主は、ほぼ間違いなくあの白衣の男だろう

「…どこにいるの?」

「私はここにいるよ」

「ここって??」

「正確に言おう。ここには建物のシステムを管理しているコンピューターがある。マザーコンピュータとでも言えばいいかな。どこにあるかは、あとでじっくり探してくれたまえ。私は、そのコンピューターに頭脳のコピーをデータとしてインプットしておいた。もちろん、データはここだけではない。セカイのありとあらゆるところにインプットしておいたのだ。重要なものは分散させておく、というのは常識だからな」

ここに来たのは、あの男に呼ばれていたからだろうか?

「さて、そろそろキミたちに来てもらった理由を教えてあげよう。これを見るがいい」

人影が形作られていく…
それは、ミナだった

▼88

エレベーターは直通タイプのものだった
降りる階を選ぶことは、出来ないようだった

エレベーターはガラス張りだったため、外の様子は見ることが出来た
しかし、ダークグレー一色だった

あの雨雲の中を進んでいるのだろうか?
色は、もう1つのセカイで見た、カナミの精神世界と酷似していた



到着音が響く
ドアがゆっくりと開いていった

▼87

ミナは、盆地を上りきった辺りで立ち止まっていた

「後ろを見てみなよ」

カナミはちょうど追い付いたところだった
地面がかすかに揺れているようだった

ミナは振り返る気配がない

「時は満ちた…」

カナミは振り返る
盆地だったその場所は、深い闇に覆われていた
既に、闇は目と鼻の先まで来ていた

!?

カナミの視界は、黒以外のものが何も見えない状態になった
闇に飲み込まれたようだ

▼86

エレベーターには何も乗っていなかった
カナミを促すように、しばし開いたままだった

おそらく上に向かうのだろう

この建物は何階まであるのだろうか?
行き先は展望台のようになっているのだろうか?
それとも、研究施設だろうか?
または、異形の生物が封印された倉庫だろうか?

黒い雨は止む気配が全くなかった
外から概観を確認するのは、自殺行為も同然だった

エレベーターは開いたままだった
行使出来る選択肢は、数が少ないのは言うまでもないだろう