2016/10/19

▼85

闇は徐々に消えていった
程なくしてカナミが現れた
今回は、精神的にも肉体的にも、全く消耗していなかった

化物はうつ伏せに倒れていた
八首はいずれも微動だにしなかった
もう2度と動き出すことはないだろう

「これが、わたしの力…」

明らかに、ベヒーモスやディアボロスにメタモルフォーゼしたときとは違った感覚があった

「そうみたいだね」

消えていたミナが現れる

「わたしに力を貸してくれたの?」

「いや。ボクに出来ることは、キミのメタモルフォーゼを手伝うことぐらいさ。今のは、完全にキミ自身の眠れる獅子が目覚めた。そんな感じだと思う」

「…」

「覚えてるだろ?ついさっき起こったことを」

カナミは頷いた

「ゾクゾクしたよ…。キミの力、思ってた以上に強力だったし…」

ミナの感情は、頗る昂っているようだった

「あの化物は、わたしの力を試すための実験台だったの?」

「さぁね。前も言ったと思うけど、ここは遺伝子操作された異形の獣で溢れてるのさ」

ミナは立ち止まった
ちょうどカナミとすれ違う形になった

「もうすぐセカイは1つになる…。後戻りは、できない…」

ミナは含み笑いをしつつ、カナミとの距離を離していった

「…」

後戻りできない…
これはカナミも同じだった

▼84

見えるものは、黒という色のみ…
光は初めから存在していなかった

そんな空間だった

八首たちは様子を窺うしか出来なかった
下手に動くと、自らの首を喰いちぎる恐れがあったのだ

どこからともなく白い人影が現れた
身につけている衣類は、カナミのそれだったが、目から上が包帯のようなもので覆われているため、正体不明状態だった

「フフフ…。怯えてるの?」

声は山彦のように反響した
発していたのはその人影だったが、カナミでもミナでもない声だった

八首は、威嚇するような低い唸り声を発していた

「大丈夫…。すぐには殺さないであげるから…」

捕らえられる距離だと判断したのだろう
八首は一斉に襲い掛かった

喰いついた箇所から闇が噴出した
闇はそのまま八首を拘束した

「あ~あ…。これだからケダモノってヤツは…」

骨を砕かれていく音が響き渡った

▼83

力は目覚めた
カナミに喰いつこうとした八首は、一歩手前で見えない何かに弾かれた

どうやら結界が張られていたようだ
足元から漆黒の闇が発生し、カナミを包み込む

化物は異変に気付き、一旦様子を見ることにした
迂闊に手を出した場合、足元の死骸と同じ運命が自分の身に降りかかる…
本能から出たサインだった

闇は、カナミを完全に覆い隠した
深淵なる闇…
どこからともなく聞こえてくる呻き声…
到底この世のものとは思えなかった

これから何が始まるのだろうか?

八首たちは、隙があれば襲い掛かることが出来るように身構えていた
胴体も脚にバネを溜め込むような動きを見せていた

突如、カナミを覆っていた闇が、噴水のように化物目掛けて吹き出した
闇は瞬く間に、その巨体を覆い尽くした