2016/10/03

▼66

「やっと会えたね」

カナミのぼやけた視界には、女性と思われる人間の顔が写っていた
水は頭頂部まで来ていた
辛うじて顔だけが出ている状態だった

「あなたは…」

「そう。わたしが今まであなたの意識に直接語りかけてたの」

カナミは焦点が徐々に合ってくるのを感じた
逆さまだったが、今度は女性の顔がハッキリと見えた

27~28歳ぐらいだろう
メガネが似合いそうな、小顔の知的美人だった

「だいぶ目付きもしっかりしてきたね。起きられそう?」

「…やってみる」

体が重かった
精神的な疲れは肉体にも影響する

……

なんとか体育座りをすることが出来た
急に体を動かしたせいだろうか?
立ち眩みに似た症状が襲う

「う…」

カナミは体育座りの体勢のまま蹲った
水は、衣類に覆われていない下半身が隠れるほどの高さまで来ていた

「大丈夫?やっぱりまだムリそう?」

「…頭が、クラクラする」

カナミは顔を上げることが出来なかった
声の聞こえてきた方向から、女性は、カナミの前にしゃがんで話しかけてきているようだった

「そうだよね。もう少ししたら良くなってくるはずだから」

カナミはこの女性に見覚えがなかった
しかし、なぜか他人のような気がしなかった
まるで、以前から知っているかのような、何かがあった