2016/09/08

▼39

月が沈んだ
再び辺りは漆黒の闇となった
カナミは目が慣れていたせいか月明かりがなくてもそれほど不自由はしなかった

…やっぱり何かいるわね
いいかげん出てきてよ
今更何が出てきても驚きゃしないから

カナミの呼びかけに反応したかどうかはわからないが、闇に潜んでいた生物がその姿を現した
緑色をした雄ライオンだった
異様だったのは、鬣部分が無数の生きた蛇になっていることだった
元々この色だったのか、この森で効果的に獲物を狩るために体質変化を起こしたのかまではわからないが

ライオンはカナミを発見すると、すぐに襲い掛かることはなく、様子を窺っていた
鬣の蛇たちも同じようにカナミの様子を窺っていた
迂闊に手を出すと、自らに危険が及ぶことを恐れているようにも見えた

…!?

一瞬だが、カナミは自分自身の何かが反応したのを感じた
ミナの言っていた能力だろうか?
それと同時にライオンは後退りをし始め、逃げるように闇へ姿を消した

あの化物が逃げ出すなんて…
わたしの中には一体何がいると言うの?

辺りから生物の気配が消えていた
カナミの内に潜む何かに恐れをなしているのはほぼ確実だった

▼38

程なくして月が出てきたようだ
木漏れ日のように月明かりが差し込んできた

気のせいか生物たちの気配が消えた
明かりがある場所では動かない習性なのだろうか?

無論、木々に阻まれて正確な月の大きさや形までは確認できなかったが、おそらくスーパームーン以上に大きな月だろう
今まで見たことがないほどの月明かりだったからだ

スーパームーンは月が球に最も近づいたときに満月または新月を迎えることだ
最接近時は地球から35万6577kmの距離まで近付いた、と言われている
しかし、この月は明らかにその距離よりも近いはずだ

ミナはセカイは2つに分けられていると言っていたが、ここは地球ではない別の星なのだろうか?
だとしたら、地球と月の間に作られているに違いない

▼37

日が落ちた
突如漆黒の闇とはならなかった
降り注ぐ木漏れ日が次第に少なくなり、という形で現在は漆黒の闇となっていた

森の中に変化が出てきた
木漏れ日が注いでいたときは他の生物の気配が全くなかったが、にわかに生物の気配が出始めてきたのだ

…何かいる?
でも、これじゃどこに何がいるかわからない

おそらくカナミの言っていた、遺伝子組み換えもしくは遺伝子改変を施された得体の知れない生物たちだろう
迂闊に動き回らない方が賢明なのは言うまでもない

幸い、外気温は20~25℃程度だったため、凍えてしまうことはなかった
森の中を探索するとしたら日が昇っている間の方がよさそうだ

▼36

こういった方向感覚が狂う危険性のある場所ではむやみやたらに動かない方がよい
まずは基点となる場所を作ることが先決だ
幸いその基点作りは研究施設の入った建物があるので問題なかった

…開かない

いつの間にか入口は閉ざされていた
自動ドアの要領で扉の前に立っても開くことはなかった
無論押しても、後ろや横に引こうとしても同様だった

日が落ちても外にいるしかないわけね

この建物は10階建てほどの高さで窓がなかった
一瞥するだけでは何の建物かわからない構造だった
内部で行われていたことを考えれば当然といえば当然だが

カナミは空の様子を見ようとした
合わせて太陽の南中高度からおおよその時間帯を推測しようとしていた
森には日光が降り注いでいたが、木漏れ日程度のものだったからだ

…ダメね
この木高すぎる…
それに葉っぱが大きすぎてよく見えない…
しかも密林みたいな感じだし…

日が落ちたときは月明かりでもない限り、漆黒の闇と化すのは容易に想像がついた