2016/09/07

▼35

カナミは森の中にいた
ちょうど例の研究施設から外に出たところだった
エレベーターが止まった先はエレベーターホールとなっており、そのまま外に出ることが出来た
地下で10年以上暮らしていたカナミにとっては極めて久しぶりとなる地上だった

…この森なんか変ね
上手く言えないけど…

よく見ると木々は全て同じだった
高さ、太さ、枝や葉の付き方・大きさ・形など
全てが同じだった

そして何よりも異様だったのが、森自体が静かすぎるということだった
日光は降り注いでいたが、木々は生物活動を全くしていない様子だ
無論、他の生物が棲みついている気配もなかった

この森もあの男によって作り出されたということ?

残念ながら現時点ではこの問いかけに答えてくれる者は誰もいないようだった

▼34

遺伝子工学とは、遺伝子を人工的に操作する技術のことだ
生物の自然な生育過程では起こらない人為的な型式で行うことを意味する
遺伝子導入や遺伝子組換えなどの技術で生物に遺伝子操作を行う事でもある

一部の例を挙げれば、細菌や培養細胞によるホルモン(インスリンやエリスロポエチンなど)の生産、除草剤耐性などの性質を与えた遺伝子組換え作物、遺伝子操作を施した研究用マウス(トランスジェニックマウス)、また人間を対象とした遺伝子治療の試みなどがある

このような遺伝子操作産物を目的とする応用のほかに、生物学・医学研究の一環(実験技術)としての遺伝子操作も盛んに行われている

この遺伝子操作によって生み出された「緑色に光る猫」をご存知だろうか?

猫のエイズを引き起こす猫免疫不全ウイルス(FIV)
これを抑える働きを持つサルの遺伝子を猫の卵母細胞に注入し、その後受精させたのだ
加えて、遺伝子操作を行った部分を容易に判別できるよう、クラゲの遺伝子も組み入れた
これにより遺伝子操作された細胞は緑色を発色するようになる

遺伝子操作された卵母細胞から生まれた猫の細胞を採取したところ、FIVへの耐性を示した
なお、これらの「耐性」を持つたんぱく質は猫の体内で自力で作られていた

また、遺伝子操作した猫同士を交配させたところ、生まれた8匹の子猫にも操作された遺伝子が引き継がれていたのだ

これも実に興味深い…

私は当初、臓器移植のように双方の遺伝子同士が拒絶反応を起こすものと思ったが、そのようなことはないようだ…

この技術は様々なものに応用できそうだ…

遺伝子の世界は可能性の宝庫だということだ…

ククク…

▼33

エレベーターは下に向かっていた
どうやらあの隔離施設は最上階だったようだ

今回は途中にある研究施設に止まることはなかった
行き着く場所はあの冷たいLEDに覆われた空間だろうか?
それとも全く新しい場所となるのだろうか?

エレベーターが停止した
なぜか扉が今までよりもゆっくりと開いていく気がした