2016/09/04

▼32

ごめんなさい…

まさかあの人がこんなことをするなんて思わなかった…

わたしはあの人の子供が欲しかっただけなのに…

本当は1人だった子供の染色体を操作して2人にして、さらに遺伝子操作と改変までするなんて…

ねぇ、あなたたちはまだ生きているの?

勝手なことかもしれないけど…

お願い…

死なないで…

▼31

カプセルは全て破壊されていた
夥しい数の肉片、おそらくカプセルに潜んでいたと思われる生物の死骸も多数散らばっていた

いずれも遺伝子操作もしくは遺伝子改変をされたのでは?
と思われるような特異且つ奇怪な生物ばかりだった

カナミの瞳孔は開きっ放しだった
しかし、眼差しはどこを見ているのかわからないような虚ろなものだった
顔色は顔面蒼白そのものだった

「フフフ…。キミってボクなんかよりもずっと残虐だよね。何もここまで原形がわからないくらいまでバラバラにすることないじゃん」

ミナの瞳孔も開きっ放しだった
その眼差しはカナミのそれと酷似していた

「まあ、でもしょうがないよね。アイツの作り出したモンスターは思った以上に凶暴だったからね。ここまでしないとボクたちが死ぬ羽目になったわけだから」

「ミナ…。一体わたしに何をしたの?」

カナミの顔色は生気を取り戻しつつあった
瞳孔は開きっ放しだったが、焦点は合いつつあった

「おや、もう戻ってきたんだね。いや、ちょっとキミの力を借りたのさ。正確に言うとキミの体の中にある力を借りたって感じかな」

「これは…わたしがやったっていうの?」

「ああ~、キミだけじゃないよ。ボクとキミでやった。キミはキミの中にある力を使うことができないみたいだけど、ボクはその力を覚醒させることができるみたい」

「わたしはもう人間じゃないってことなのね」

「そうなるね。ボクもキミも遺伝子操作、もしくは遺伝子改変をさせられたアンドロイドなのさ。アイツは既にほかの動物ではありとあらゆる実験をしていたみたいだ。ここにいた哀れな動物たちはその過程の中で凶暴性を増したので隔離したっていうことなんだろうね」

「人体実験は当然わたしたちだけじゃないんだよね?」

「うん。どれくらいの人間が実験台になっていたのかっていうのはわからないけどね。厄介なのはそのアンドロイドたち、そしてこういう動物たちが相当数逃げ出してるってことなんだよね。アイツが死んだことによって」

「…」

「いずれも凶暴性はかなり増してるみたい。まあ、ボクの計画は誰にもジャマさせないけどね。キミもそろそろ自分の力を有効活用できるようになっておかないと、これからは生き延びることが難しくなるよ」

「…」

「あと言い忘れたけど、今回は別にキミを助けたわけじゃないよ。ただ単にキミの力を見たかったっていうだけだから。それじゃ、次会うときはセカイが1つになったときだね」

ミナの気配が消えた
カナミにとってはいずれもどうでもいいようなことばかりだったが、見えない何かに操られているに等しいこの状況は、何とかして解消したいとは考えていた

▼30

遺伝子はDNA二重螺旋構造
それがさらに巻いた構造をとり、染色体を成す

性染色体とは、雌雄異体の生物で性決定に関与する染色体
性染色体として、X,Y,Z,Wと名づけられた4種類の染色体がある
XとYは雌がX染色体を2本持つ性決定方式(雄ヘテロ型:XY型)で観察される性染色体に付けられた名称であり、ZとWは雄がZ染色体を2本持つ性決定方式(雌ヘテロ型:ZW型)で観察される性染色体の名称である

ヒトを含む哺乳類では雄ヘテロXY型が一般的
この性決定様式では正常な雌はXX個体であり、正常な雄はXY個体である

性決定様式を大きく分けると、遺伝によって性別が決まる遺伝性決定と、個体が置かれた環境によって性別が決まる環境性決定などの遺伝によらない性決定に分けられる

遺伝性決定は染色体性決定とも呼び、通常は雌雄で異なる性染色体構成を持つ生物で観察される
しかし、遺伝性決定の生物種の中には、雌雄で性染色体の形状に見分けが付きにくい例も含まれている
また、一口に性染色体が関わる性決定といってもその機構は一様ではない

人間の性別は、根本的には男性化を促す遺伝子の有無に由来し、受精の瞬間にほぼ決定される
人間の23対の染色体のうちの1対は性染色体と呼ばれ他の常染色体とは区別される
この性染色体の型(X染色体とY染色体の組み合わせ)によって、性別発達の機序は大きく左右される

無論、典型例があればそうでない例も存在する
クラインフェルター症候群、ターナー症候群、カルマン症候群など



実に興味深い内容だ

▼29

カナミは緑の液体が満たされたガラス容器の中にいた
容器の下から気泡が送り込まれている
鑑賞魚の水槽のように

カナミのいるガラス容器を白衣を着た女性が覗いているようだった
意識が朦朧としている、且つあまり視界のよくない状態だったため、顔立ちはほとんど見えなかったが、シルエットから細身の長身なのは確認できた
カナミに何かを語りかけているようだったが、気泡を送り込む装置のモーター音しか聞こえなかった

例の白衣を着た学者風の男がやってきた
やはり顔立ちはよく見えないが、背丈はその女性よりも10センチほど高いようだった

男は女性の背後で何かを語りかけているようだった
女性の表情に翳りが見えた気がした

男は女性の腰辺りに手を回しているようだった
程なくして女性が男の方を向き直った

男の手は女性の背中や腰辺りを弄っていた
女性は特に抵抗する様子はなく、男のされるがままだった

カナミは視界がぼやけてくるのを感じた



どうやら目蓋が落ちたようだった
そのまま意識は沈んでいった

▼28

白衣を着た男が倒れている
完全に事切れているようで、今後一切動き出すことはなさそうだった

紅い液体に染まった手
その液体はポタポタと滴り落ちていた

その手は爪が異常に尖っており、質感も硬い鱗に覆われているようだった
人間のものというよりはモンスターという感じだった

虚ろな眼差しのカナミ
次第に生気が失われていく顔
顔色は土気色になっていく

紅い液体は止まることなく、一定のペースでポタポタと落ち続ける

不敵で妖しげな笑みを浮かべるミナ
目深に被ったフードのため、顔は影に覆われていた

フードの下に見え隠れする冷たく眼光の鋭い目は恐ろしく無表情だった

▼27

到着した場所は倉庫のようだった
照明は薄暗く、先ほどのガラス容器に入っていた液体と同じような緑色だった

そして、入ってすぐに目に付くのは、少なく見積もっても数十個はあると思われる卵形のカプセルだった
窓らしきものが付いているが、中身を見ることは出来るだろうか?
もしかしたら見ない方がよいかもしれないが…
室内の照明により、何とも言えない不気味な雰囲気を醸し出していたのは事実だった

エレベーターの扉が音もなく閉まった
ボタンを押しても開くことはなかった
無論、押しても引いても叩いても開くことがなかったのは言うまでもない

…何かいる?!

おそらくカプセルの中だろう
高い確率で人間ではない生き物がいるはずだ

カナミの耳には自分自身の心臓が鳴る音しか聞こえなかった
心臓の音は次第に大きくなっていく
そのテンポは速くなるばかりだった

…来る!?

どのカプセルかまではわからないが、何かが蠢く気配があった

!?

背後から鋭利なもので突かれたような感覚があった

「うん、やっぱり紅いね」

「ミナ?なんで?」

「それ以上しゃべらない方がいいよ。というかそろそろ意識が飛ぶと思うけどね」

カナミは視界がぼやけていくのを感じた
意識が飛ぶ前に見えたのは、カプセルが木端微塵に破壊していく様だった

▼26

また上に向かってる?
このエレベーターは確かここより上には行かない気がしたけど?

次はどこに連れていかれるの?
次はわたしに何を見せるつもりなの?
次はわたしにどんな記憶を呼び戻そうとしているの?

ねぇ、ミナ…
わたし、あなたが他人とは思えない…

なんか上手く言えないけど…

これ何なんだろう?

直接会ったことがないのに前から知ってたみたいな感じ…

ねぇ、ミナ…
セカイを1つにしたいっていうことだったけど、そもそもなぜセカイは分けられたの?
それを1つにするためにわたしの記憶が必要なの?
あなたの本当の目的は何?