2016/08/09

§25

雲1つない青空
太陽は、冷たくプラチナ色に輝いていた

普段は静かで穏やかな川が、大幅に増水しており、激しい濁流と化していた
また、所々に渦も発生していた

シュウは、橋から身を乗り出し気味に、その流れを眺めていた
焦点の合っていないような眼差し
口元には歪んだ笑みが浮かんでおり、肩は小刻みに震えていた



キウェインが、遠目に、何をするともなく、傍観するように、立っていた
無機質な瞳には、シュウの姿が映っていた

§24

や…
見ちゃ、いや…

シュウの口元に歪んだ笑みが浮かんでいた

潤んだ小動物のような黒目
白く、透明感のある、滑らかな触感をした素肌
細身ながら、出るところは出ている、メリハリのあるボディライン
女性は、蔦が局部を隠している以外は何も身に付けていなかった

や…
来ないで…

ガラス球のように澄んだ黒目に、恍惚の表情を浮かべたシュウが映っていた

だって…
これ以上近付いちゃうと…

シュウの顔は強張っていた
背中から、紅く染まった刃の切先が出ていた
足元は、瞬く間に紅く染まっていった
紅い液体が一定のペースで滴り落ちていた

死んじゃうよ?

女性の瞳は無機質で深遠だった
目の前にいるはずのシュウを全く認識していないようだった
その手には剣が握られており、真っ直ぐ、シュウの胸を貫いていた

§23

降りしきる雨を街灯の淡い明かりが照らしていた
無音だった空間に、激しい雨音が響いていた
雨足は闇夜で見えなかったが、辺りは水煙で霞んでいた

シュウは、ただ突っ立っていた
髪からは、後から後から水滴が滴り落ちていた
どこを見るともなく見ているような目付きだった

足元には大きな水たまりが出来ていた
大中小の波紋が、いくつも出来ては消えを繰り返していた

黒一色だった世界に、ダークグレーが滲んできた
やがて、ぼやけたダークグレー一色となり、所々に水玉が浮かんでいた

§22

池の真ん中にある噴水が、ちょうど作動したところだった
水が放物線を描くように噴出するタイプだった

ちょうど、キウェインが、例の小柄で細身の、黒目の割合が多い女性とともに、シュウの背後を通り過ぎるところだった
ほんの一瞬だったが、キウェインがシュウを一瞥した

!?

シュウの顔が強張った
恐れからか、全身が小刻みに震えていた

足元は、見る見るうちに紅く染まっていった
多少の粘性を伴った紅い液体が、一定のペースで滴り落ちていた
胸の、ちょうど心臓のある辺りから、刃の切先が出ていた

女性はキウェインの様子に気付いたようで、だいぶ離れてから、何を見ていたのか尋ねているようだった
シュウは振り返るどころか、動くこともできなかった

光りや音のない、黒くて暗い世界が見えた
噴水は、白い線で縁取りされているだけだった

2人が完全に見えなくなってから、シュウはようやく、足元に紅い液体が、胸を刃が貫いていないことに気付いた
しかし顔は強張ったままで、震えも止まっていなかった

水面は、微風のためか細波だっていた
白に薄い灰色を混ぜたような雲
日の光りは弱く、雲の切れ目から僅かに漏れてくるだけだった

§21

太陽が、無機質なプラチナ色の冷たい光で、廃墟のような街全体を照らしていた
人為的に造られた建物、道路は風化しているせいか、ダークグレーだった

南中高度から、正午辺りの時刻と思われたが、人気がないのは変わらずだった
人間以外の動植物の気配もなかった

温度が高いのか、街全体から陽炎が立ち上っていた
街自体が蜃気楼のようだった

太陽は、ただ冷たく輝くだけだった
それが自らのタスクであるかのように